デジタルテクノロジーを活用し、
顧客体験や購買行動に大きな変革をもたらしたデジタルディスラプターの台頭により、
伝統的な小売・流通業が変革を求められている。
そして、2020年に始まったコロナ禍により、購買行動のオンラインシフトは決定的なものとなった。
このような環境の中、急務となっているDXに流通業はどう取り組むべきなのだろうか。
そのポイントは、データのサイロ化を防ぐことと現場主導での開発にある。

4つの成功シナリオを
プロアクティブなシステムで実現

日本マイクロソフト株式会社
流通業 シニア インダストリー エグゼクティブ
藤井 創一 氏

顧客のDXをサポートするため、マイクロソフトはいち早く自社のDXを推進し、テクノロジーとマーケットに対するアプローチを大きく変えた。テクノロジーでは、オープンなクラウドテクノロジーの活用を進め、Windows だけでなく幅広いプラットフォームを提供。営業スタイルも、製品売りからサービスを提供する企業に変化した。日本マイクロソフト 流通業 シニア インダストリー エグゼクティブ 藤井創一氏は、「お客様のビジネスにフォーカスし、製品中心の話はしないと決めました。そして、お客様のビジネスシナリオで、どのようなソリューションを提供すべきかを徹底的に考えています」と語る。その流通業向けのシナリオは、「顧客を理解しつながりを強化する」「従業員の能力を強化する」「サプライチェーンを高度化する」「流通業ビジネスを再創造する」の4つである。

日本マイクロソフト株式会社
ビジネスアプリケーション事業本部
プロダクト マーケティング マネージャー
野村 圭太 氏

この実現に向けて、マイクロソフトがビジネスアプリケーションの重要なコンセプトとして掲げるのが、「リアクティブなシステムをプロアクティブに」という考え方である。日本マイクロソフト ビジネスアプリケーション事業本部 プロダクト マーケティング マネージャー 野村圭太氏は、「ビジネスアプリケーションでは、従業員が情報を入力し、それがDBに蓄積され、そこからレポートを作り、次のアクションを考えるという流れは、長年変わっていません。マイクロソフトは、このプロセスを大きく変えようと考えています。つまり、データが自動的に集められ、それをAI、BIで分析し、次のアクションを推奨してくれる、必要に応じてあえて人が違うアクションを起こせる柔軟性も持つ、そんなプロセスです。これを実現するための製品開発に努めています」と語る。

流通業の業務を
エンドtoエンドでサポート

マイクロソフトのインダストリー向けクラウドサービスは、セキュアで信頼性があり、スケーラブルな Microsoft Azure が基盤となっている。その上にデータを一元管理し、アプリケーションをローコードで簡単に作成できる Microsoft Power Platform がある。Dynamics 365 は、それらをビルトインする形で利用できるビジネスアプリケーションだ。流通業向けに、Dynamics 365 Commerce と Dynamics 365 Supply Chain Management を用意。店舗、コールセンター、ECなどのフロント機能から、販売管理、在庫、会計などのバックオフィス機能に至るまで、オムニチャネルの取引をエンドtoエンドでサポートする。

2021年1月にはDynamics 365 CommerceにBtoB機能の提供を発表。BtoBの顧客に対しても、BtoC同様のリッチなエクスペリエンスを提供し、両方のビジネスモデルを一元管理できるようになる。Dynamics 365 Supply Chain Management は、回復性を持ったサプライチェーンを構築し、コストを削減しながらビジネスの継続をサポートする。

Dynamics 365 で活用できるソリューションは、マイクロソフト製品だけではない。パートナーのソリューションも利用できる。Dynamics 365 はワールドワイドの幅広いビジネスに適用できるよう設計されているので、特定の業種向けや、個々の企業特有の業務に対応することは難しい。そこで、パートナー製品がそのようなニーズに対応したり、日本企業に特化した機能を提供する。

Dynamics 365 を活用し
4つのシナリオを実現

日本を含むグローバルで、Fortune 500の97%を含む50万社が Dynamics 365 またはPower Platform を利用している。その中からいくつか事例を紹介しよう。

まず、前述の4つのシナリオの「顧客を理解しつながりを強化する」に当たる、米国プレミアムワインのリーディングカンパニー「ミッシェルワイン エステート」の事例だ。同社のワインセラーとECサイトの販売システムは、従来独立していた。それを Dynamics 365 を使うことでシームレスに連携し、オムニチャネルを実現。貴重な考察を得ることができた。野村氏は、「プロアクティブなシステムを実現する上で最大の障壁は、データのサイロ化です。データがバラバラでは、十分な活用はできません。Dynamics 365 ではデータが完全に統合されているので、その課題を解決します」と語る。多くの小売業は、元々多大な投資をした店舗システムを持ち、ECは後付けで作られているので、連携は困難でコストもかかる。Dynamics 365 を活用すれば、この課題を容易に解決できる。

2つ目は、4つのシナリオの「流通業ビジネスを再創造する」に当たる、米国のアウトドア関連製品メーカー「KENT ウォータースポーツ」の事例だ。同社は従来小売店向けのBtoBビジネスを中心に行ってきたが、米国ではコロナ禍によって家の近くでアウトドアスポーツを楽しむ人が増加。一方で、実店舗は閉鎖が相次いだため、同社の個人向けECサイトへの注文が急増した。顧客の購買行動の変化に対応するため Dynamics 365 Commerce とPower BI を採用。BtoCビジネスの拡大に向けた基盤を構築した。一方BtoBビジネスの重要性は変わらない。野村氏は、「Dynamics 365 Commerce は、BtoB機能の提供が予定されており、BtoB、BtoCのデータを統合できます。集まったデータはPower BIで随時分析され、いち早く顧客ニーズの変化を把握できるようになります」と説明する。

3つ目は、スウェーデンのランジェリーブランド「Twilfit」の事例で、4つのシナリオでは「サプライチェーンを高度化する」に当たる。同社は、顧客ニーズの変化に迅速に対応することで売り上げを伸すと同時に、在庫最適化などによるコスト削減を目指し、所要量計画を立てて運用してきた。しかし、1万点以上の品目を扱う同社でプランニング処理を実行するには、従来8~9時間かかっていた。そこで、Dynamics 365 のプランニングオプティマイゼーション機能を活用。ERPからプランニング処理部分のみ切り出すことで、30分以内に注文を処理できるようになった。そして最初の朝の注文後に別の出荷が必要な場合は、午後に実行して在庫に送ることができる。これによって、リードタイムが大幅に短縮され、余分な在庫費用を削減しながら、消費者の需要の変化を迅速に捉えることが出来るようになった。

もう一つ、4つのシナリオの「従業員の能力を強化する」に当たる事例に、300年以上にわたりロンドンの中心部に位置し、ギフト、食品、お茶を世界中のお客様に提供してきた「Fortnum & Mason」がある。Dynamics 365 を導入することで、顧客とのつながりを強化。顧客の来店頻度や購入履歴が即座にわかることで、提供すべき商品やサービスがわかり、店舗スタッフの接客の質を向上。さらに、Dynamics 365 の導入によって、コネクトされたビジネスを構築することができ、チームに力を与え、特別な顧客サービスを提供できるようになった。

企業内外のデータ連携を
より手軽に実現

マイクロソフト製品を利用した流通業の変革事例は海外が先行しているが、日本でも多くの取り組みが始まっている。藤井氏は、「変革に必要な施策を迅速かつ的確に行うには、内製化が一つのポイントです。しかし、プロフェッショナルなIT人材を多数集めることは困難ですし、システムを使う側の人材でも扱いやすく開発しやすい内製化題材の採用がカギになります。その点、マイクロソフトの製品はエンドユーザーに使いやすくできており、代表的な例としてPower Platformのようにローコードで開発可能なソリューションもあります。これを活用して現場主導でDXを加速していただきたい」と語る。

また、DXは迅速かつ継続的に取り組みを進める必要があり、特にデータ活用が極めて重要な論点となる。そして今後は、流通業内は勿論、メーカー、物流業など連携する企業間でもデータを突合して状況を把握することが求められる時代になりつつある。「マイクロソフトは複数の企業と、企業内外、業界横断でデータを活用できるよう標準的なデータモデル“コモンデータモデル”を作ってきました。Dynamics 365はコモンデータモデルを前提に開発しているので、今後求められる、サプライチェーンやカスタマージャーニーを跨ったダイナミックなデータ活用の実現に近づくことができます」(藤井氏)。

また、コロナ禍を経てデジタルチャネルが主流となることが予想されるが、その流れにサプライチェーンが追い付いていないと考える企業は多い。目に見えるフロントの仕組みが優れていても、それに付随してサプライチェーンが上手く回らなければ、ビジネスは成功しない。環境の急激な変化に柔軟に対応できる基盤が必要となる。野村氏は、「そのために Dynamics 365 は、既存システムとつなぐマイクロサービスを提供すると発表しました。これにより、データのサイロ化をなくし、バックエンドを支える仕組みを、より手軽にご利用いただけるようになります。ご期待ください」と語った。