創業100年以上の老舗「ゑびや大食堂」は、わずか6年で経営危機から売上4.8倍の成長企業へと変身を遂げた。急成長の理由は、カリスマ経営者の勘や経験ではなく、AI(人工知能)などを活用したデータ経営にあった。そろばん会計の脱却から始まったデータ経営は、“明日の来店客数を知りたい”など様々な経営課題に応えるかたちで進化した。ゑびや大食堂の経営に携わった小田島春樹氏はシンクタンクEBILABを設立し、ゑびやの仕組みをベースに成功ビジネスモデルをクラウドサービスとして提供。単なるツールの導入だけにとどまらず、「データ経営」へのシフトを支援し、属人的経営からの脱却と、地方小売業における持続的成長の実現に力を注ぐ。

勘や経験に基づくやり方が通用しない時代の到来

株式会社EBILAB/有限会社ゑびや
代表取締役
小田島 春樹 氏

企業が本業で稼いだ利益を表す営業利益(※)。コロナ禍において、モノを仕入れて販売する小売業(飲食業を含む)が営業利益を上げるのは至難の業だ。「コロナ禍で危惧したのは、地方の小売業では売上が10%下がっただけで経営危機に瀕するケースがあるということでした。当社も以前は営業利益が伸びず経営体力も低下し苦闘していたので、コロナ禍の経営危機は他人事とは思えませんでした」と、ゑびや/EBILAB 代表取締役社長 小田島春樹氏は話す。

※売上総利益-販売費及び一般管理費

創業100年以上のゑびやが営む「ゑびや大食堂/ゑびや商店」は、伊勢神宮内宮(皇大神宮)の鳥居前に続く「おはらい町」に食堂として誕生した。2012年に小田島氏がゑびやの経営に携わった当時、飲食後の会計はそろばんと手切り食券だったという。「当初は、飲食事業の縮小とテナント化を検討していました。しかし、テナント化は上手くいかず、店舗運営に取り組むことになりました。様々な店舗改革を行い、売上は上がったのですが、問題は売上拡大が施策による効果か、参拝客数が急増した影響か、判断できなかったことです。お店の真の実力がわからずに次の一手を打つことは、経営リスクを招く要因となります」

店舗改革における施策の効果測定を目的に、Excelを使ってデータ分析を行ったのが、データ経営に向けた第一歩だったと小田島氏は振り返る。「人口減少の進展に伴い、伊勢神宮の参拝者に依存する事業形態であるゑびや大食堂は、今後来店客数が減り続けていくことが想定されました。人口減少時代では、勘や経験のもとで当たり前のようにやっていたことが通用しなくなります。これまでとは違うアプローチで失敗のリスクを最小化し成果を最大化するためには、データに基づく意思決定が必要です」

AIによる来客予測的中率95%、6年間で売上4.8倍に

ゑびやのデータ経営は、2012年にそろばん・食券からExcelに移行しスタートした。2013年にはExcelでデータベースを作成し、2014年にPOSレジを導入。転機となったのは、2015年に機械学習による来客予測に着手したことだ。「Excelに蓄積されたデータを使って、まずやりたかったのは明日の来店客数の予測でした。Excelを使って仮説を立てていたのですが、作業に手間がかかるうえ、マクロを書いていた私に属人化しており、他の人は操作できませんでした。AI(人口知能)で自動的に来客を予測できたら、その仕組みは地方の小売業にも必要とされると考え、クラウドサービス化も視野に入れて取り組みを開始しました」(小田島氏)

小田島氏はAI企業などとパートナーを組み、翌日から最長1年までの来客予測はもとより、IoTツールを使って入店者の性別・年齢などを分析する画像解析、混雑状況の可視化、通行量の測定、マーケティングの効果測定など、データ経営を進化させた。

ゑびやのシステムは、POSやセンサーなどから収集したデータが、データベースにより一元管理されており、人が介在することなく自動的にデータ分析が行える点が特徴だ。可視化された情報は、ホールとキッチンの境目に設置した大型モニターで従業員の誰もが見ることができる。

店内に設置された大型モニターにデータの分析結果が表示され、従業員全員が常にデータを意識して業務にあたることができる。

また、マイクロソフトのコラボレーションハブ Microsoft Teams (以下、Teams)を利用することで、データ活用が現場の隅々に浸透している。「お客様がスマホを使ってアンケートフォームに入力した瞬間に、Teams に入力情報が自動的に飛んできます。関係者間での情報共有はもとより、その場でチャットを使って改善点を話し合ったりしています。また、いつでもどこでも経営情報にアクセスできるため、講演などで外出が多い私にとって、意思決定の迅速化に役立っています」(小田島氏)

Teams の活用で、お客様の声がいつでもどこでも確認可能に。フィードバックを運営に生かしやすくなった。

ゑびやはデータ経営により、従業員数はほぼ変わることなく、2012年から6年後の2018年に売上が4.8倍拡大した。「データによりテーブルごとの回転数を分析し、テーブル数を最適化しました。空いたスペースでおみやげコーナーをつくり、データに基づき客層に合わせた商品を揃えることで売上増大を図りました。また、機械学習による来客数の翌日予測は、2019年で平均95%に達しており、品切れをなくし機会損失の防止に繋がっています。また、来客予測により前日に米の炊飯量がわかることに加え、5日先までの全メニュー出数を予測し廃棄ロスの防止に役立てています。さらに、ディスプレイ設置による入店率のデータと、平均通行量や購買客単価などを組み合わせて分析するなど、設備投資の最適化にも役立てています」(小田島氏)

目に見えない大きな効果として、小田島氏は従業員のモチベーション向上についても言及した。「自分たちの改善の成果がデータに表れることは、やる気に繋がると思います。また、ゑびや大食堂の店長がエンジニアに、販売員がBIシステムの構築担当にと、ロールチェンジも多いです。小売業を軸にしながら、キャリアパスの選択肢を増やすことができたのも、データ経営による企業変革の効果といえるでしょう。さらに、来客予測により来客数の少ない日を上手く調整することで、サービス業でも長期休暇がとれる体制を整えることができました」

コロナ禍は、急成長を続けてきたゑびやの売上にも影響を及ぼした。しかし、データ経営により新たな顧客層を獲得できたと小田島氏は話す。「緊急事態宣言の解除後に営業再開した際、データ分析により顧客属性の変化にいち早く気づきました。地元の若者の来店数が増えていたのです。地元の人にとって、観光地の飲食店のイメージは魅力的とはいえません。そこで、“インスタ映えする若者向けメニューを開発し提供しているお店”としての認知度を高めました。その結果、来客数のうち20歳代が80%を占めるまでになりました。データ経営によりコロナ禍でも売上への影響を抑えることができました」

データ経営の成功ビジネスモデルをクラウドサービスとして提供

ゑびやのデータ経営は、老舗を再生するプロセスの中で実践を通じて磨かれたものだ。同様の課題を抱える地方の小売業に対し、ゑびやの成功ビジネスモデルをクラウドサービス化して提供するべく誕生したのが、シンクタンク「EBILAB」である。EBILABが展開する店舗データ経営クラウドサービス「TOUCH POINT BI」には、ゑびやで実践したメソッドや来客予測はもとより店舗予実管理、施策利益シミュレーション、外部要因分析、客層分析、アンケート分析、入店率測定など、データ経営で必要となる機能がすべて集約されている。

TOUCH POINT BIは、再現性のない勘と経験による属人的経営からデータ経営へのシフトを支援する
株式会社EBILAB
経営企画室 マーケティング&クリエイティブ担当
横尾 健矢 氏

ゑびやの店舗改革における開発環境やTOUCH POINT BIなどクラウドサービスの提供を支えるプラットフォームに採用されているのが Microsoft Azure (以下、Azure)だ。採用の理由について小田島氏は話す。「ゑびやにおけるシステム構築では、インターフェースを含めて使いやすいことに加え、分析ツールや機械学習サービス Azure Machine Learning、データ可視化ツール Microsoft Power BI など豊富なツールが揃っていることもポイントとなりました。Azure Machine Learning は、EBILABで内製化もしています。また、お客様に提供するサービス基盤としては、なによりも安心安全であり信頼できることを重視しました。データ分析だけでなく、Teams、Microsoft 365 を利用することでテレワークなど様々な課題を解決できることも、お客様の大きなメリットとなります」

TOUCH POINT BI の導入において、分析したデータの活用までをサポートしてほしいというニーズが高まっていると、経営企画室 マーケティング&クリエイティブ担当の横尾健矢氏は話す。「データに変化があった場合に、どういうアクションをすべきかについて、ゑびやで行ってきたノウハウを体系化しわかりやすく表現した『売上をあげる10のアイデア』を作成しています。データの変化、アクション、検証といったサイクルを習慣づけるための“最初の一歩”をサポートするものです」

ゑびやの成功ビジネスモデルは、地方の小売業において再現性が高いと小田島氏は強調する。「TOUCH POINT BIは、今もゑびやの店舗運営で使っている仕組みです。“かゆいところに手が届く”部分は多く、同様の悩みを抱える小売業にとって再現性の高い解決策となります。また、SIerが導入するパッケージ製品とは異なり、店舗運営という共通言語のもとで会話ができるため経営者の方も“腹落ち”しやすいと思います」

重要なのは、ツールの導入ではなく、データ経営という考え方を身に付けることにあると小田島氏は付け加える。「データ経営により無駄な投資をなくし、時代の変化に適用することで営業利益を拡大していく。データ経営は、変化に強く、『企業の稼ぐ力』を創り出す新しい小売業のかたちを実現できると思っています」

引き合いが急増!150店舗以上(2021年6月現在)に導入
商業施設での導入も進む「TOUCH POINT BI」
導入企業の「声」

上間沖縄天ぷら店

「施策の精度向上はもとより有効性検証、仮設検証も行えるようになりました」

沖縄県中部を中心に上間沖縄天ぷら店の屋号で7店舗を展開しています。県民のソウルフードとも言える沖縄天ぷらを看板商品に、行事や法事に欠かせない仕出し商品など沖縄の生活に密着したサービスを提供しています。また、沖縄ファミリーマート県内300店舗以上で「UEMAの沖縄天ぷら」の販売も行うなど、「食を通して沖縄の文化を守り、伝え、発展させていく」を理念に、地域社会の発展に貢献しています。

従来の店舗運営において、販売データはあっても、時間帯や日別、天候別など細かいデータ分析ができておらず、施策の精度に対して課題を感じていました。また、店長も問題を主観で判断してしまい、打ち手の有効性などを実証しにくかった点も懸案事項でした。EBILAB代表の小田島氏が沖縄来訪の際にデータを重視する経営という点で意気投合。タブレット型POSレジの内製化を行い、データのBI化の必要性を感じていた当社にとって、TOUCH POINT BIはまさに求めていたソフトウェアでした。

TOUCH POINT BI導入後、会議での店長の施策提案は、データ分析により客観性が高まり、打ち手実行の有効性検証や精度向上を実現できました。また、売れる商品から顧客の要望を読み取り商品開発で展開するなど、仮説検証も行えるようになりました。

株式会社 藤屋

「入店率、購買率を数字で把握し、データに基づく戦略立案を実現できました」

成田山参道において、日本酒の醸造を行い参詣客の皆様や近隣の飲食店様に販売しています。また自社店舗では、自社醸造の日本酒の販売だけでなく、食べ歩きを主体とした成田麹standを併設しています。コロナ前は、成田国際空港に近いことから、インバウンドのお客様の立ち寄りも多くありました。

従来の店舗運営における課題は、レジ通過人数しか把握できず、店前通行客数や入店人数を可視化できていなかったため、肌感覚で在庫の調整や食材準備を行っていたことです。また売上拡大に向けた戦略を立てる上でも基礎データが乏しく、店舗ディスプレイ変更による集客効果なども結果を数字で捉えることができず、有効性の検証も行えませんでした。当社が抱える様々な課題を解決するべく、TOUCH POINT BIの導入検討が行われました。

導入後、店前通行客数、入店人数が把握できるようになり、入店率、購買率を数字で捉えられるようになり、売上金額向上に向けた戦略が立てやすくなりました。また、店内レイアウト変更による結果の検証が可能となったことで、販促的中率の向上も見込めます。さらに、来年の年始には蓄積したデータを活用し、初詣客の皆様にお立ち寄りいただきやすい店舗への改善を目指します。

今後もEBILABは、小売業界へのソリューション提供やサポートを通じ、業界全体のデータ活用の底上げを図っていく。

株式会社EBILAB

https://ebilab.jp/

問い合わせ先情報

Microsoft Azure

ソリューション

今こそ知っておきたい流通・小売業向けソリューション

売上4.8倍の経営メソッドをクラウドサービス化 データ経営で「企業の稼ぐ力」を創り出せ!新しい店舗運営のかたちに挑戦する老舗企業

株式会社EBILAB/有限会社ゑびや

小売

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来店促進

新たな顧客体験の提供を目指す VR(仮想現実)を活用した三越伊勢丹の新たな試み

株式会社三越伊勢丹

小売

経営

来店促進

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ウォルマート、ワークマンなどの成功事例に学ぶ あらゆる顧客接点を総動員し、実効力のあるブランドコミュニケーションを

日本マイクロソフト

小売

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パートナーソリューション

Microsoft Azureが支える次世代配送サービス「EAZY」 デジタルが変えるeコマース物流の未来のカタチ

日本マイクロソフト

流通

EC

経営

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ニトリ、IKEAなどの成功事例を動画で学ぶ! 激変する流通小売業に最新テクノロジーが起こすパラダイムシフト

日本マイクロソフト

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経営

ウォルマート、コカ・コーラの先進事例に学ぶ 小売業・消費財製造業のDXを成功に導く4つのテーマとは?

日本マイクロソフト

小売

流通

経営

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【後編】イオン SM-DX Lab活動から考える流通小売業DXの最適解 カギはデジタルの民主化

イオン株式会社

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経営

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【前編】イオン SM-DX Lab活動から考える流通小売業DXの最適解 カギはデジタルの民主化

イオン株式会社

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EC

経営

業務改革

店舗のリモート化、デジタル化、省人化を支援する多機能、低価格なAIカメラソリューション

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AWL BOX、 AWL Lite

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業務改革

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来店ユーザー分析や来店販促リテールメディア開発による収益化まで実現

株式会社アドインテ
リテールメディア開発 OMOソリューション「AIBeacon/AITag」

小売

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空き時間に事前にモバイル注文・決済、レジに並んで支払いしなくても商品を受け取り

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
CTC ECモバイルオーダー

EC

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決算管理

パートナーソリューション

商品棚の前にいる顧客の属性や行動を把握/分析し、マーケティングの高度化、店舗レイアウトの改善につなげる

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
CTCスマートシェルフ

小売

来店促進

業務改革

決算管理

パートナーソリューション

来店客が手に取った商品をスマホで決済、機会ロスとレジ付近の混雑を解消する新しい決済サービス

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
CTCスマホレジ決済サービス

小売

決算管理

業務改革

パートナーソリューション

従業員が持つ業務用端末をスマホ1台に集約し、クラウドサービスの利用で店舗DX化も低コストに

グローリー株式会社
店舗業務支援アプリShoppers Cloud

小売

コミュニケーション

業務改革

パートナーソリューション

Teams の活用によるECサイトと店舗の次世代のオムニチャネル施策ソリューション

株式会社ecbeing
OMO・オムニチャネル支援[ECソリューション]

小売

EC

コミュニケーション

AI

パートナーソリューション

スマートで安全な「クラウド手のひら認証」の導入による、手ぶらキャッシュレス決済ソリューションでレジの混雑解消を実現

株式会社ノルミー
クラウド手のひら認証サービス

小売

決算管理

業務改革

パートナーソリューション