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三菱自動車の災害時協力協定全国の自治体に、じわり浸透

現在100以上の自治体と締結!

近年、地震や津波、河川の氾濫など自然災害が深刻化しており、国土交通省も有事の被害を最小化するための「国土強靭化計画」を進めている。一方、万一の災害時に求められるライフラインの核となるのは電力の供給だ。いま、有事を見越した多くの自治体が、PHEVを活用した三菱自動車の災害時協力協定に、熱い視線を送っている。

災害時に被災地・避難所などで活躍するPHEV

エクリプス クロスPHEV
アウトランダーPHEV

災害時のEV貸し出しを契機に、
電源供給を模索

三菱自動車の災害協力体制は、2011年の東日本大震災時、深刻なガソリン不足に陥った被災地の支援に端を発する。移動手段を失った被災地に、大容量リチウムイオン二次電池を搭載した量産電気自動車(EV)「i-MiEV」を提供。三菱自動車と現地ディーラー等、合計で90台を超える車両を貸し出した。

国内営業本部本部長補佐兼国内地区統括部長の君島英紀は「その時、現地で『せっかくのEVなのだから、電源供給にも使えないか?』という声が上がったのです」と、当時を回想する。そこで、翌12年に、EVから電気を取り出す装置「MiEV power Box」を開発し、災害時の電源供給源としてのEV活用を可能にしたのだ。

さらにこの成果を引き継ぎ、13年には「アウトランダーPHEV」を発売。ハイブリッド(HV)と電気自動車(EV)の長所を兼ね備えたプラグインハイブリッドで、さらに大容量の車載バッテリーから外部への電力供給を可能にした、クルマの進化形だ。

「アウトランダーPHEVには、外付装置を介さず、車内のコンセントから系統電源と同様の100V・交流電力が、直接供給できる機能を搭載しました」

三菱自動車工業株式会社
国内営業本部本部長補佐
兼国内地区統括部長

君島 英紀

協定をベースに、
迅速な支援サービスを提供

三菱自動車は「アウトランダーPHEV」の発売を機に、全国の販売会社と連携して熊本地震や西日本豪雨など、被災地支援を都度実施してきた。

「しかし、災害の広域化・甚大化は益々深まる一方です。その中で、自動車メーカーとして、災害時により迅速で有効な貢献を加速させたい、と考えました。そこで、各自治体と有事に備えた協定を事前締結。万一の際にも即座に動くことができる体制づくりを目指しました」

19年8月30日。三菱自動車はそんな思想を具現化するものとして、「DENDOコミュニティサポートプログラム」を発表し、災害支援の体系的な取り組みを本格化させた。これは大容量の給電性能に加えて、悪路や凍結道路、山間地などにも強く、被災地にいち早く駆けつけることができる機動性、さらには人の移動や物資の運搬手段としても活躍する走行性能など、同社の4WD・PHEVならではの特長を活かして、タイムリーかつ効果的な支援を図ろうというものだ。

「事前に協定を締結し、プログラムを共有することで、協力要請を受けてから連絡体制を構築したり、必要事項を確認したりする負荷やタイムロスを排除し、求められるサービスを、求められるタイミングで即座に展開することができるシステムを目指しました」

さらにエリア拡大と
サービスの深耕を

20年12月には、本格SUV「アウトランダーPHEV」に加えて、クロスカントリーと街乗り、両方のテイストが楽しめるクロスオーバーSUV「エクリプス クロス」にもPHEVモデルが追加され、被災地支援の選択肢がさらに広がった。また同社は、各自治体への働きかけの一環として、防災訓練等にも実車を持ち込んで積極参加。機会あるごとに、プログラムの普及啓発に努めている。君島は、今後の抱負を以下のように語る。

「より多くの台数が必要な場合には、近隣の販売会社が協力しあって車両を手配する連携体制を敷いています。『三菱のクルマが役に立った。三菱のクルマで良かった』。そんなお言葉が何よりの励みになります。三菱グループ三綱領の一つ、社会への貢献を約束する『所期奉公』の精神にも資する取り組みです。100以上の自治体様と協定を結びましたが、さらに災害時における電動車のポテンシャルを訴え、全国の自治体様との締結を目指し、信頼の輪を広げていきたいです」

災害協定締結以前から
PHEVの活躍は始まっていた

被災地にEVやPHEVを貸与。
電源や人員・物資の輸送手段として活用。

年 月 災 害 貸出車種及び台数
2011年 3月 東日本大震災 i-MiEV 90台以上
2016年 4月 熊本地震 アウトランダーPHEV 30台
2017年 7月 九州北部豪雨 アウトランダーPHEV 15台
2018年 7月 ⻄日本豪雨 アウトランダーPHEV 10台
MINICAB-MiEV 5台
2018年 9月 北海道胆振東部地震 アウトランダーPHEV 16台
2019年 9月 台風第15号の影響による千葉県の停電(南部) アウトランダーPHEV 12台
2020年 7月 令和2年7月豪雨(人吉市、球磨村) アウトランダーPHEV 5台
2021年 1月 秋田市豪雪被害における支援 アウトランダーPHEV 1台
エクリプス クロスPHEV 1台
topic

出動要請から
2時間以内に電源供給開始。
2021年1月、秋田市の大停電対応

秋田市内は、1月7日に発達した低気圧に伴う暴風雪の影響により、当日19時頃には、秋田市で約31,800戸、秋田県全体では6万戸以上が停電。氷点下4~5度という極寒の中、翌8日にも停電が続いたことから、7時に市内38ヵ所の市民サービスセンターやコミュニティーセンターなどに避難所を開設しました。

秋田市総務部
副理事
兼防災安全対策課長

八木橋 久美

本市は、災害時の電力供給手段の確保が重要と考え、20年2月25日に三菱自動車と災害時協力協定を締結しており、今回それに基づいて児童館との複合施設である2ヵ所、秋田駅の西側に位置する「川尻地区コミュニティーセンター」と「旭南地区コミュニティーセンター」に、PHEVの出動を要請しました。9時20分の要請に対して、10時20分には川尻に「エクリプス クロスPHEV」が到着し、10時半に電力供給開始。11時10分旭南にも「アウトランダーPHEV」が到着。11時20分に電力供給がスタートしました。灯りと暖房が確保できたことで、避難した人たちの不安も払拭され、深い安堵の声が聞かれました。秋田市防災安全対策課17名のスタッフは、協定締結時のレクチャーで災害時のPHEV活用法を熟知しており、スムーズに対応できました。電源供給に加え、被災時における4WDの走行性能の高さは、今後自治体の公用車の選択肢としても考えられますね。