日経ビジネス電子版 Special

冨山 和彦 氏 経営共創基盤 IGPIグループ会長 × 村越 晃 氏 三菱商事株式会社 取締役 常務執行役員 コーポレート担当役員(CDO、人事、地域戦略)冨山 和彦 氏 経営共創基盤 IGPIグループ会長 × 村越 晃 氏 三菱商事株式会社 取締役 常務執行役員 コーポレート担当役員(CDO、人事、地域戦略)

冨山 和彦 氏 経営共創基盤 IGPIグループ会長 × 村越 晃 氏 三菱商事株式会社 取締役 常務執行役員 コーポレート担当役員(CDO、人事、地域戦略)

DX時代に対応して
変革を続けた企業が生き残る

コロナ禍で加速する企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)。あらゆる領域で産業構造の変革が起きる現代は、日本企業にとって大きなチャンスになり得るのだろうか―。企業はいかにDXに取り組むべきかについて、経営共創基盤IGPIグループ会長の冨山和彦氏と、三菱商事 取締役常務執行役員の村越晃氏が語り合う。

モデレーター:日経ビジネス発行人 伊藤暢人

すべての産業で事業構造が変化する
変容力こそが生き残りのカギ

―DXが一気に加速しています。この状況をどのように見ていますか?

冨山 DXには2つの側面があります。1つは、日常業務をリモートで行うといったいわゆるIT化。もう1つは、テクノロジーやデータなどを活用した新たなサービスや企業の登場により産業構造がガラッと変わるもの。これは当然ながら後者のほうが重要です。DXの萌芽は1990年代のコンピューター革命の時代に芽吹きましたが、GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)の台頭を目の当たりにしながら、日本は大きく遅れました。コロナ禍により、DXが影響を及ぼす範囲は拡大しており、大企業・中小企業にかかわらず、ほとんどの分野において事業や産業構造の組替えが起こる可能性が強まっています。

 今後は変容する力をもっているかどうかが勝負のカギになります。裏返していえば、変容をエキサイティングに感じる人たちにとっては、大きなチャンスだといえるでしょう。とくに若い人たちにとっては、活躍の機会が広がりますから、面白い時代になりますよ。

冨山 和彦 氏

冨山 和彦 氏
1960年生まれ。東京大学法学部卒。在学中に司法試験合格。スタンフォード大学経営学修士(MBA)。ボストンコンサルティンググループ、コーポレイトディレクション代表取締役を経て、産業再生機構COOに就任。カネボウなどを再建。解散後の2007年、IGPIを設立。数多くの企業の経営改革や成長支援に携わる。パナソニック社外取締役

村越 三菱商事もDXへの対応を非常に大きなテーマとして掲げています。

 まず、当社には「三綱領」という経営理念があります。このなかでは、公明正大に社会に役立つ会社であることを謳っています。日々の企業活動を通じて、世界の産業に広く貢献することが当社の存在意義といえます。

 現在では、当社はほとんどの産業のお客様と接点があります。そのため、大企業や中小企業からスタートアップまで、さまざまな産業の会社が非競争領域で労力を使わずに済むように、物流や受発注などで共通のデジタルプラットフォームを提供することが、三菱商事が目指すDXの究極の姿だと考えています。つまり、DXは社会への奉公という当社の存在価値を実現するための重要なツールの1つと捉えています。そして、この動きはますます加速させていかなければなりません。

人事制度を見直し、
組織の新陳代謝を高める

―いま、日本の社会が抱えている課題についてはどう感じていますか?

冨山 1980年代、「ジャパン・アズ・ナンバー1」という言葉が広まり、日本は世界を席巻しました。日本企業の躍進を支えたのは、勤勉な労働者が改善・改良しながら良いものをつくり、それを海外で販売するというモデルです。新卒一括採用、年功序列型により長い時間をかけて改善・改良でオペレーションを磨いていくスタイルは競争力を引き上げることができました。

 ところが、90年代以降、世界がガラッと変わりました。猛烈なグローバル化、不連続な変化とデジタル革命が一気に起こり、日本のモデルはピークを迎えたのです。事業構造やビジネスモデルが変容する時代になると、新陳代謝のスピードが遅いという日本型モデルの最大の欠点が目立ち始めます。新卒一括採用で40年かけて全員が入れ替わるのでは置いてきぼりです。

 いま起こっている変化をスポーツで考えると、プレーする種目が変わってしまったと例えられるでしょう。これまで一生懸命野球を練習して勝ってきたのに、気が付くと世界ではサッカーが主流になっていたというわけです。これでは、いくらホームランが打てても活躍しようがない。同質的で固定的なメンバーばかりのチームでは、野球の技術やチーム運営はわかるけれど、サッカーは経験したことがない、という状況になってしまいます。

 これからは新陳代謝を高め、組織に多様性をもたせなければ、日本企業は生き残ることはできません。何十年も続いてきた仕組みを切り替えることは簡単ではありませんから、多くの企業が苦しんでいます。逆にいうと、いまはその対応ができた組織とできなかった組織とで、差がつく局面でしょう。

村越 晃 氏

村越 晃 氏
三菱商事(株)入社後、執行役員資材本部長、泰国三菱商事社長兼泰MC商事社長を経て、取締役常務執行役員 コーポレート担当役員(広報、人事)に。現在は取締役常務執行役員コーポレート担当役員(CDO、人事、地域戦略) ※CDO: Chief Digital Officer(最高デジタル責任者)

村越 総合商社にもかつては「冬の時代」と言われた時期がありました。これまで何度も危機的状況に直面しながら、変化してきた歴史があります。今回のコロナ禍も大きな危機と感じていますが、一方で新しい時代がきたのだと捉えています。

 当社は、2019年に約20年ぶりとなる人事制度の大規模な改定を行いました。これまでは担当する分野別の縦割りの色合いが強かったのですが、改定により人材の社内での流動化を図るようにしました。例えば、一定以上の責任あるポストにつく社員はこの縦割りを超えた所属に切り替えるなど異動の柔軟性を高めています。加えて、育成・活用に関しても、入社から5~10年間は資格制度のなかで育成していきますが、その後、一定以上のポストにつく社員は、職務給型、いわゆるジョブ型に近い制度を適用し、実力主義と適材適所の徹底を図ります。そのことで若手の登用も図り、シニア層や女性をさらに活用できるようになり、組織として多様性を高めることができます。

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新領域への挑戦、
「両利き力」が勝敗を分ける

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