日経ビジネス電子版 SPECIAL

ITの内製化でスピード経営に舵を切る エディオンのシステム変革プロジェクト ITの内製化でスピード経営に舵を切る エディオンのシステム変革プロジェクト

業界大手家電量販店のエディオンでは、全国約1200の店舗や商品配送などの大量のデータを処理する基幹システムのオンプレミス運用に課題を感じていた。そうした中、データセンターの閉鎖通告を機に、ITインフラのクラウド化に着手。同社が求める大量データの高速処理を担うことができたのは、Oracle Cloud Infrastructure(OCI)とOracle Exadata Cloud Serviceの組み合わせにあった。

物理・仮想化サーバー100台超、12の基幹システムをオンプレミスからクラウドへ

大阪府に本社を置くエディオンは、業界屈指の売上を誇る家電量販店グループだ。主力事業である家電販売をはじめ、リフォーム・住宅関連事業、通信、モバイルの他、教育事業などを展開している。

コロナ禍においても、家電販売は好調を維持しており、巣ごもり需要の影響も受けて、2021年3月期業績は4期連続増収、過去最高の当期利益を記録。加えて、カーボンニュートラル社会に向けた太陽光発電設備の販売体制の構築や、プログラミング教育事業の拡大など、新たに様々な取り組みを推進している。

新たな取り組みを進める一方で、将来の成長への基盤となるDXへの取り組みも加速させている。大きな方向性は、IT基盤の構築と運営を従来の外部ベンダー依存から脱却し、ITの内製化を図り、ビジネス環境の変化に俊敏に対応する体制を構築することにある。その端緒として同社が取り組んだのが、2019年からスタートした次世代情報システムへの変革プロジェクトだ。

同社のIT部門では、全国約1200の店舗の売上情報を本部とつなぎ、倉庫在庫や物流と連携させる、物理および仮想化100インスタンスを超えるサーバーからなる大規模な基幹システムを運営していた。システムは24時間365日稼働しており、夜間に大規模なバッチ処理を行うことで、翌日の営業に備えていた。

オンプレミス環境のOracle Exadata Database Machine(以下、Oracle Exadata)を中核としたシステムは、大量データの高速処理に優れており、パフォーマンスに問題はなかったものの、ストレージ容量のひっ迫などが課題としてあがっていた。さらに、システム稼働から10年、Oracle Exadataが稼働してから5年が経過しており、ハードウェア、ソフトウェアの更新も順次進めていく必要があったことから、システムのクラウド化を視野に検討を開始した。実際のプロジェクトでは各種ソフトウェアのバージョンアップも実施した。

次世代ITシステムのプロジェクトリーダーを任されていた同社情報システム開発部部長の松藤伸行氏は、当時IT部門が抱えていた課題を次のように語る。

「当社が使用していた従来のオンプレミスのシステムは、古い設計思想であったため、多様化するビジネス環境に迅速に対応できなくなる懸念がありました。経営のスピードが求められる時代に、その基盤である情報システムの課題から目を背け続けることはできません」

スピード経営の実現には、ITインフラの柔軟性は必要不可欠である。抜本的なシステム変革の気運が高まる中、その追い風ともなるきっかけの一つとなったのは、既存のオンプレミス環境を運営するデータセンターの閉鎖通告だった。同じシステムを使い続けるとしても、ノンストップ運用を維持したまま、システムを別のインフラに移す必要に迫られたのである。

この時点で、同社には3つの選択肢が残されていたと松藤氏は話す。1つ目は、既存システムを別のデータセンターへ移転すること。2つ目は、アプリケーションをクラウドネイティブに完全に作り直して、全く新しいアーキテクチャーに刷新してクラウド化すること。そして3つ目が、クラウドネイティブ化を見据え、まずは既存のアーキテクチャーを基本的に維持したままクラウドに移行する、いわゆるクラウドリフトだ。これらの選択肢の中から、同社は3つ目の道を選んだ。

「クラウド化のメリットは理解していたので、システム運用を内製化することを前提として考え、システム自体は変えずにクラウドに移行することを決定しました」(松藤氏)

性能要件を最大限に発揮する「Oracle Exadata Cloud Service」

12の大規模基幹システムをクラウドに移行する大がかりなプロジェクトだったが、当初移行先候補として検討されていた他のパブリッククラウドでは、従来通りの処理ができないことが判明した。クラウド化プロジェクトのプロジェクトマネージャーである同社情報システム企画部システムプロデューサーの小堀陽士氏は、その理由を次のように話す。

「当社に必要な約1200店舗のオンライン処理や大量の夜間バッチ処理は、Oracle Exadataのパワーに頼っていました。クラウド移行に際して、当初は他社のクラウド環境で実現可能だろうと考えていたのですが、詰めていくと到底不可能という結論に達しました」

クラウドでもOracle Exadataのパワーが必要不可欠という条件がわかり、プロジェクトは大きな壁に直面した。しかしちょうどその頃、同社はオラクルから新サービスの提案を受けることになる。Oracle Cloud Infrastructure(OCI)上で稼働するExadataのサービス「Oracle Exadata Cloud Service」だ。「未知数な部分はありましたが、オラクルからの協力も受けられるということで期待が持てました。これでクラウド化の道が拓けたと思いました」(小堀氏)。

こうして2019年3月、基幹システムをOCIへ移行することが決定し、オラクルとの共同作業でOCI移行プロジェクトが始動することとなった。

移行要件として、店舗の営業を止めないことを絶対条件として定め、移行自体は夜間の3時間で完了する計画を立て、準備が進められた。

まず、事前にクラウドに移行できるデータは、クラウドへ初期移行を実施し、その後差分データの同期を移行直前まで、実施しておく。最後にシステム切り替え時に最小限の残りのデータを移行する移行計画を立てた。最大の山場は、Oracle Exadataのクラウドへの切り替えだ。データ移行にはOracle GoldenGateを活用した。移行の実行日の1週間ほど前からクラウド側にデータをアップロードし、そこから移行日まではデータの差分同期を行うようにした。

「過去にオンプレミスのOracle Exadataにデータを移行するプロジェクトを経験していましたが、当時はSIベンダー主導で、自社主導によるプロジェクトを実施するのは初めてでした。オラクルのコンサルティング部門による支援を受けながら、まずはシステムを一から理解していくところから始め、結果的に、外部に依頼していた時と比べてコストは低く抑えられ、期間も短く済んだと思っています。自社システムへの理解が深まったことで、課題解決型で速やかに自社対応できました」(小堀氏)

本番稼働システムの切り替えにおいては、営業や店舗を止めないことを大前提に、夜間に1度、2~3時間で切り替えを完了できることを目指した。当日に店舗側での作業が発生しないよう、本社がDNSサーバーを切り替えることで全てのサーバーがクラウドに同時に切り替わる方式を採用。一部固定IPアドレスを使っていたシステムは、移行日までに全てDNSを使う形に変更し、万全の体制を整えたうえでクラウド移行当日を迎える。

プロジェクト背景と、オラクルへの期待

プロジェクト背景と、オラクルへの期待 プロジェクト背景と、オラクルへの期待

基幹システムのクラウド化は、環境変化にスピーディに対応するためには不可欠。
既存データセンターの閉鎖が決定し、データベースの保守切れなどの期限もあってクラウド移行を決断。

NEXT NEXT
1 2