大塚商会の成長を支えた「仕組みの変革」創業60周年後の「一歩先」の変革を探る


コロナ禍によりデジタルシフトが加速する中、「よりよく生きる=ウェルビーイング(Well-being)」を意識した、新たなワークスタイルへの関心が高まっている。この動きを先取りする形で「ITで日本/オフィスを元気にする」という企業理念の下、中堅・大手企業のDXとワークスタイル変革を強力に支援してきたのが大塚商会だ。今年7月17日、創業60周年を迎えた大塚商会は、日経BP 総合研究所(以下、日経BP 総研)と協業して新たなウェブメディア「一歩先への道しるべ」のオープンを決めた。これに先立ち、本サイトの菊池隆裕編集長が大塚裕司社長にインタビュー。その経営哲学と、新たなウェブメディアへの期待を語ってもらった。

会社を変えるには「仕組みを作る」

菊池今年、創業60周年を迎える大塚商会は、直近の10年間は人員を増やすことなく売上を倍増させるなど、目覚ましい成長を遂げています。この成長を支える経営哲学についてお聞かせください。

大塚当社が、企業としての社会的役割や存在意義を再考したのは、2000年、東証一部に上場したのがきっかけです。

当社はコピー機の領域で、機器の販売やリース、配送やトラブル修理など、お客様のニーズにきめ細かく対応しながら成長してきました。しかし、バブル後は収益性がかなり低下したので、仕組みを作ることで会社を変えてきたわけです。

経営者には、企業としての成長を追求する義務があります。しかし、お客様に喜んでいただける仕事をするためには、社員満足度の向上が重要です。その全体を見ながらバランスを取り、できるかぎり仕組みで置き換えることによって、経営の効率向上を図ってきました。それが、今の大塚商会につながっていると考えています。

株式会社 大塚商会 代表取締役社長 大塚裕司氏 株式会社 大塚商会 代表取締役社長 大塚裕司氏

株式会社 大塚商会

代表取締役社長

大塚裕司

菊池大塚社長は銀行での経験を経て、1992年、大塚商会に入社。事業承継とともに、基幹系の仕組みを整備し、営業武装化と顧客管理を徹底的に行う「大戦略」を打ち出し、会社発展の基礎を築きました。「ビルの中をしらみ潰しに営業をかけていく」という従来の大塚商会のイメージは、この大戦略によって大きく変わりましたね。

大塚私も銀行員時代は、マンションを一戸一戸回って営業しましたが、100戸回ってお話しできるのは1、2戸程度。それよりも、「セミナーに参加したお客様が、どの商材に興味を持たれたか」がわかれば、おのずと打率は上がります。データに基づいて、最も打率が上がる方法を追求することが、いかに大切かを学びました。

例えば、お客様の家族構成が分かれば、お子さんの成長に合わせて学資ローンをお勧めするというように、ストーリー性をもった提案ができるわけです。法人のお客様についても、「このアパレル企業はジャケットが主力商品で、春から夏にかけて需要が伸びる。秋口は資金が潤沢で、春先は逆に資金が不足しがち」というように、顧客情報に基づいてストーリーをイメージすれば、タイムリーに預金や融資を提案できます。銀行のCIF(Customer Information File:顧客情報ファイル)を活用すれば、データを意識して提案の内容を考え、価値を生み出せるわけです。このCIFを大塚商会向けに置き換えたのが、当社の大戦略のコンセプトであり、顧客管理&営業支援システム『SPR(Sales Process Re-engineering)』です。

大戦略Ⅱについて

DX時代を先取りした「大戦略」の意味

菊池大塚商会の大戦略とSPRは、今でいうDXそのものという印象です。その意味では、時代を先取りした取り組みだったわけですね。

大塚大戦略とは基幹系の仕組みを整備したものであり、その次のフェーズとして、基幹系に情報系を組み合わせたのがSPRというイメージです。

菊池データ活用というと情報系に目が行きがちですが、情報系と基幹系の仕組みがしっかりつながっていなければ、本当の意味でのデータ活用はできない、ということですね。

日経BP 総合研究所 イノベーション ICTラボ 上席研究員 菊池隆裕

日経BP

総合研究所

イノベーション

ICTラボ

上席研究員

菊池隆裕

大塚もしSPRの開発だけが先行していたら、データ活用はこれほど進まなかったでしょう。当社の基幹系システムには、お客様の与信や購買履歴、トラブルなど、様々なデータが蓄積されています。これらのデータと情報系のデータを組み合わせると、今まで見えなかったものが見えてくる。基幹系と情報系のデータを受け渡しする共通のデータベースがあり、大戦略とSPRが両輪となってデータを存分に活用できたこと。それが、成長をもたらした理由の1つだと思います。

その次に着手したのが、サポートの効率アップです。大塚商会で最も人数が多いのはサポート系職種なので、サポート部隊の生産性をいかに上げるかが、次なる課題でした。そこで、当社ではサポートのSPR、すなわち『S-SPR』を進めることにより、サポート部隊の構造改革を10年がかりで進めてきました。

お客様が望むサポートを提供するためには、ワンストップサポートの実現と効率アップが必要です。そこで、従来は担当が分かれていたコピー機とシステムのサポートエンジニアを、3年がかりで教育・統合し、300~400人相当の人員削減効果を出すことができました。また、コールセンターでサポート予定の空き状況を見ながら、担当者をアサインする仕組みを導入し、生産性向上を図りました。

もう1つ、私たちが課題として取り組んだのが、お客様との関係強化です。2007~08年頃、コピー用紙が初めて値上げされることになり、当社では社員を総動員してお客様への告知を進めました。しかし、サポートや営業が訪問できるお客様の数は限られている。そこで、人員不足を補完するための仕組みとして、インサイドセールスやコールセンターの強化に乗り出しました。

また、AIがデータ分析やニーズ予測を行い、営業活動をサポートする仕組みの導入や、ウェブサイトにお客様のマイページを開設し、お客様との関係を構築する施策も進めています。全社的な仕組みによってお客様をグリップすることで、お客様との関係を維持していきたいと考えています。

お客様マイページ

「一歩先」の技術をいち早く予見

菊池社内の効率アップや変革だけでなく、新規事業としてもLED照明にいち早く注目し販売するなど、常に新しいものを取り入れてきたように見えます。

大塚LED照明のご提案は2008年から始めました。当初はなぜ大塚商会が扱うのかという声も聞こえましたが、その後の急速な普及を見れば、結果的に近年重視されているサステナビリティに貢献できたように思います。

かつて初めてPCに触れたとき、これは世の中を変えていくに違いないと感じました。その感覚が原点としてあり、似たような印象を受けるものをずっと追いかけています。

LED照明もその1つ。オフィスや家庭の白熱電球を置き換えられたら、世の中をガラッと変えられると感じました。

菊池現在注目している技術にはどのようなものがあるでしょうか。

大塚AI、サービスロボットは面白いですね。ほかにも最近注目しているものの1つはLPガス発電機です。ガソリン発電機だと、燃料が劣化してしまうと有事の際に使えなかったりします。一方、LPガスは劣化の心配はありませんし、発電機も小型で扱いやすい。これと、こちらも面白いと思っている水道施設なしに利用できるシャワーやトイレを組み合わせたら、BCP(事業継続計画)対策として有効なのではないかと考えています。

こうした新しいビジネスモデルの構築を担うのは、私が社長就任時に設立した直轄チームであるTSM(Total Solution Master)です。会社として今後も従業員を増やさずに利益向上を継続していきたいと考えますが、そのためには営業が動かなくても受注できるような仕組みが必要です。これも、TSMとともに検討していきます。

異なる視点の融合が新しい議論や発見を導く

菊池今回、「一歩先への道しるべ」と題して、大塚商会と日経BP 総研が新たなウェブメディアを立ち上げることになりました。この新たなメディアにかける期待をお聞かせください。

大塚当社ではこれまでも、メディアなどを通じて情報発信に注力してきました。「たのめーる」のCMは、大塚商会を広く知ってもらうという意味では効果的ですが、今後は当社の特徴をもっとアピールし、「大塚商会は『たのめーる』だけの会社ではない」ということを発信していかなければならない。そう考えていた矢先に、今回の新たなウェブメディア「一歩先への道しるべ」のお話が立ち上がりました。

私たちは中堅企業のお客様とのビジネスを通じて、市場環境の変化や雰囲気を肌で感じています。一方、日経BP 総研は、同じ対象を、私たちとはちがった視点で見ておられると思います。両者の視点を組み合わせることで、ハイブリッドな議論や発見が生まれ、お客様に対してより充実した発信ができるのではないか。そんなことを期待しています。

菊池大塚商会から見た時代のキーワードと、我々メディアから見たトレンドをぶつけ合い、それぞれの見方を融合させた形で世の中に発信できれば、と思っています。これを機に、ぜひ我々も勉強させていただきたいと思います。本日はありがとうございました。

新メディア「一歩先への道しるべ」とは

「一歩先への道しるべ」とは、大塚商会と日経BP 総研が運営するウェブメディア。「一歩先」にある社会課題や「一歩先」を見据えて活動する人や企業、「一歩先」にヒットしそうな商品を幅広く取り上げ、新しいビジネスへのヒントを提供する。2021年9月27日オープン予定。

日経BP 総研と新たなウェブメディアを9月にオープン
遠い未来よりも「一歩先」を見据えた情報を発信

私が所属するTSM課は、「お客様との関係強化」「社員育成」「ニュービジネス」の3つをミッションとしています。特定の商材や予算を持たないため、トータルソリューションを提案して大きな案件を受注できるのが当部署の強み。時代のキーとなる新しい商材をいち早く採り入れ、メニュー化するのが私たちの仕事です。

私が担当としてかかわる日経BP 総研とのウェブメディアを「一歩先への道しるべ」と命名したのは、ビジネスモデルを考える際の基準として、「5年以内に数百億円規模のビジネスに成長する」ことを想定しているためです。遠い未来ではなく、近い将来である「一歩先」を常に見据えて情報を発信する。そんな新しいメディアを創っていきたいと思います。

株式会社 大塚商会 執行役員 営業本部 トータルソリューション グループ TSM課 渡邊賢司氏

株式会社 大塚商会

執行役員

営業本部

トータルソリューショングループ

TSM課

渡邊賢司氏