―「MMDX」では、どのような変革を進めているのでしょうか。
片倉 事業競争力を高めるため、とくに「事業特性に合った施策によるスピード感、柔軟性のある経営」「競合他社に対する遅れに追いつく」「ものづくり力の強化」に関係が深い変革を進めています。キーワードとしては、「顧客との距離を縮める」「競合に追いつきグローバルで勝っていく」「経営基盤を強くする」などを掲げ、全社横断で21テーマにわたるDXを推進しているところです。
―そうした「MMDX」の取り組みを推進する上で、先ほどお話に上がった、データサイエンティストや各事業部門のデータ活用ができるDX人材は欠かせませんね。人材の社内育成にも力を入れているとのことですが、具体的にどのような取り組みを進められているのでしょうか。
片倉 デジタル人材の社内育成には、私が室長を務めるデータサイエンス室が一翼を担っています。
データサイエンス室は20年度に立ち上がりました。当社はものづくりの会社なので、生産技術については、ものづくり推進部やスマートファクトリー推進センターが、材料開発を高効率化するマテリアルズ・インフォマティクスなどについては、中央研究所がすでに変革の取り組みを行ってきました。
データサイエンス室は、これらの活動をいっそう加速させ、全社の至るところで「実務で生み出されるデータを使いこなす、データでものを言う」という文化を醸成し、「データ駆動型経営」を実現するというミッションを掲げて活動を行っています。
具体的には、クラウドデータ基盤の構築とBI(ビジネスインテリジェンス)の導入・普及活動に加え、データサイエンティストや、各業務部門におけるデータ活用人材(BI人材)の育成、全社に対するデータ分析リテラシーの教育展開の検討を進めています。
すでに10人弱がデータサイエンティストの研修を受講しており、学んだ知識に基づくデータ分析をOJTとして実践中です。この専門教育プログラムは非常に好評で、様々な部署から「自分も受けてみたい」という要望が寄せられています。
こういった取り組みを通して、今後2~3年をめどに、100人以上のデジタル人材を社内で育成したいと考えています。
―さらに三菱マテリアルでは、専門のデータサイエンティストの他に、データサイエンスの知識と各業務部門の知識を兼ね備えた「ビジネストランスレーター」という人材定義を検討しているとうかがいました。
片倉 ビジネストランスレーターは、データ分析リテラシーと業務知識の両方を生かして、データサイエンティストと各業務部門の“橋渡し役”を担うスペシャリストです。こうした人材や、各業務部門でBIを使いこなせる人材を増やさなければ、真の意味での「データ駆動型経営」は実現しません。現場だけでなく、マネジメント層も含めて、全社的にデータ分析スキルやリテラシーを高めていきたいと考えています。
―興味深い取り組みですね。PwCではDX人材の育成で悩まれている企業と触れ合う機会は少なくないと思いますが、三善さんはこうした課題にどのようなアプローチが有効だと思われますか。
三善 事業課題の解決にデータを利活用するためは、事業に関する知識とデータ分析能力の双方を兼ね備えていることが望ましいのは言うまでもありません。
「自社にはそんな能力を持った人材がいない」と話す企業もありますが、実際はそんなことはなく、学ぶ機会や活用する機会が与えられないために能力を発揮できないだけである場合が多いのです。データ分析スキルの研修に加え、人材を適材適所に配置する仕組みを作れば、社内でも十分に育成が可能だと思います。
―最後に、今後DX人材育成に挑む企業へ向けてメッセージをお願いします。
片倉 デジタル人材を社内育成するのは、決して簡単なことではありませんが、今後ますます国際競争が激しさを増す時代においては、危機感を持って取り組まないといけません。競合他社に負けないように、スピード感を持って進めていきます。
三善 PwCでは、データ分析スキルを身に付けた人材に、過去の事例に基づいたワークショップや、実際の業務課題解決のためのデータ利活用プロジェクト企画、伴走者としてのプロジェクト推進支援など、実務でデータを利活用する実践的なプログラムを提供することで企業を支援しています。DX人材育成は企業にとって急務であるということを自覚し、知識と実践の両面から積極的に取り組んでいただければと思います。
