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三井不動産が取り組むM&A戦略 データから価値を見出す発想力でM&Aの投資効果を最大化する

加藤氏/松野氏
徹底したデータ分析は、企業にとって重大な意思決定の一つであるM&Aにおいても、自社や買収先の価値を最大化するために欠かせない。M&A戦略におけるデータ利活用のあり方について、2021年1月に株式会社東京ドーム(以下、東京ドーム社)をTOB(株式公開買い付け)で買収した三井不動産株式会社 ソリューションパートナー本部 東京ドーム事業部長の松野健太郎氏と、M&Aを通じた企業価値創出支援を数多く手がけてきたPwCアドバイザリー合同会社 加藤靖之氏に聞いた。

買収先の精緻な評価にはデータ利活用が不可欠

―経営の意思決定において、データの利活用はもはや不可欠となっています。M&A戦略においても、その重要性は高まっているようですね。

加藤氏
加藤靖之
PwCアドバイザリー合同会社
パートナー
Deals Digital リーダー

加藤  一般的にM&A案件では、1~2カ月という非常に短い期間で、戦略、ファイナンス、税務、人事、IT、ESGなど、あらゆる側面から周到なデューデリジェンス(投資先の成長ポテンシャルやリスクの調査)を行わなければなりません。

 そうした条件の下で、統合的かつ精度の高い意思決定を行うには、データによる徹底した分析が求められます。

 近年は、データ量の激増およびアナリティクス技術の向上によって、デューデリジェンスにおけるビッグデータアナリシスが必要不可欠となってきました。

―コロナ禍においても、M&Aは活発に行われていますが、具体的にどのようにデータの利活用が進んできているのでしょうか。

加藤  この1年半は、事業環境が著しく変化した小売りやエンターテインメント、ホスピタリティー業界など、実店舗や施設を複数保有する事業のM&Aが活発に行われています。

 このような事業を買収する場合、マーケットや顧客行動などの事業環境の変化を精緻に読み取り、コロナ禍による短期的な影響や回復の見立て、不可逆的な変化を見極める必要があります。

 そのために、企業の財務実績データや市場統計データだけでなく、顧客単位の購買データや人の行動データ(人流)、地理情報といった広範囲なデータをリアルタイムで活用する動きが進んでいます。テキスト情報や画像データを分析に組み込むことも増えてきました。

 例えば、小売店舗とECプラットフォームの両方を保有する事業では、コロナ前後で店舗商圏に滞在する顧客属性がどう変化したか、顧客動線がどう変わったのかを定量的に比較したり、ECの顧客の購買パターンが小売りの実店舗にどうつながっているかを多様なビッグデータを用いて分析したりしています。以前では見えなかった投資先の成長ポテンシャルや課題を高い精度で評価できるようになりました。

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