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「経営者はデータに頼るのではなく、使いこなせ」早稲田大ビジネススクール内田教授に聞く、顧客情報の価値

早稲田大学ビジネススクール(大学院経営管理研究科)
内田和成 教授

コロナ禍で社会が急速に変化し、企業業績も大きな影響を受けている。その中で企業が重要性をますます意識しているのが、企業が持つ名刺情報や顧客情報。ビジネス読者の多い日経IDを使った調査によると、顧客情報は「重要な資産という全社共通認識がある」との回答が72%に達した。だが、重要性に対する意識の高まりに比べ、具体的な活用法については模索中の企業が多い。企業の経営において顧客情報はどのような価値を持ち、どう使いこなせばいいのか。早稲田大学ビジネススクール(大学院経営管理研究科)の内田和成教授に話を聞いた。

アンテナ張り巡らせ、一次情報収集を
データは「肌感覚」の検証に活用

写真:内田和成 氏

早稲田大学ビジネススクール(大学院経営管理研究科)
内田和成 教授

――急速に市場環境が変わる中、経営戦略立案や意思決定に顧客データを活用する動きも広がっています。

内田和成氏 勘違いしてはならないのですが、データを見てから経営判断を下すのは順番が逆です。経営においては情報をインプットし、それを分析したうえで、そのアウトプットを営業などに生かしていきますが、ライバル企業も似たようなデータを分析しているとしたらデータ分析だけをしていても他社と差はつきにくいのです。他社と同じことをしていてはだめで、むしろ経営にとって大事なのはどんな情報をインプットするかです。一次情報を集め、自分が何かおかしいと感じた部分、今までと違ってきていると思う部分について感度を磨くことが第1です。データベースはその肌感覚を検証する目的に使うべきでしょう。

――肌感覚はどうやって磨くのでしょうか。

内田 何が一次情報になるかは人によって異なります。営業現場なら顧客の発言や自社のサービスに対する不満などが一次情報だが、経営者にとってはこれらは簡単に触れることのない遠い情報ですね。むしろ部下の部長や課長が何を考え、どのように世の中を見ているのかについて、自分自身の考えと照らし合わせるのが一次情報になります。加えて自分なりのニュースソースも常に探す必要があります。アンテナを張り巡らせ、自らが直接見聞きした情報を元に、問題意識を持って変化を追うべきです。

 例えば新型コロナウイルス禍で、一時的だがコンビニの売れ行きが落ち込みました。働き方が変わり、少ない外出の機会にまとめていろいろな買い物を済ませたい場合は、むしろスーパーの方が便利になります。他にも街中で世相の変化を観察するなど、データとして上がってくる前から予兆を把握できるよう努力しなければなりません。

情報の「見える化」は大切
オペレーション効率化にデータ活用

――一次情報を使って経営判断をした後で、どうデータを活用すればいいのでしょう。

内田 自分の決めた方向性が正しいかどうかの検証にデータを活用したり、あるいはそれが通用するかシミュレーションしたりするのに使う手があります。またデータを見る際には異常値に注目するという方法もあります。重要なのは漫然とデータを集めるだけでなく、問題意識を持ってデータを見ること。そのためにも情報の見える化は大切で、経営ダッシュボードなどいろいろな方法があるでしょう。ただ、情報の見える化を進めるだけでは、そこからは何の答えも出てこないか、あるいは他社と同じ結論しか導かれません。

――経営戦略以外でのデータ活用法は。

内田 経営判断ではなくオペレーションの部分では、むしろデータに基づく方が効率的に改善できます。わかりやすい例がトヨタ自動車のカンバン方式。コンピューター化される前の取り組みですが、これによって無駄な在庫をなくしリードタイムを短くするのに成功しました。会社をどちらに持っていくかという戦略的判断ではなく、今のビジネスを効率化し、システムに置き換えるといった目的のためにデータを生かす可能性はいくらでもあるのです。

 例えば自社の担当者はよく交代するが、取引先の担当はほとんど変わらないケース。銀行の営業と顧客の関係などが典型ですが、こちらの担当がめまぐるしく変わる場合、そこには無駄も生じるでしょう。それを補ううえで顧客データが役立つ可能性はあります。顧客情報の共有化を徹底することで、誰が担当者になっても先方に同じサービスを提供できるような仕組みを作るといった方法です。

写真:内田和成 氏

――顧客情報をはじめとした各種データをいかに使いこなすか、
経営者の腕が問われる時代になりそうです。

内田 昔ながらの成功体験が通用しない時代になっています。自分の方法がもしかしたらずれているかもしれないという認識や仮説を持ち、自分とは違う考え方や判断をする人に任せるといった意思決定も必要になるでしょう。でも意思決定自体は経営者の仕事であり、他人に任せてはいけません。簡単な仕事ではないのです。情報を集めるだけで決断しなければ、その市場は他社に取られてしまいます。かといって狭い肌感覚で判断すると勘違いする可能性もある。その意味では若いうちに失敗することが大切かもしれません。日本企業も、本当は社員が30代のうちから子会社でも孫会社でもいいから社長をさせた方がいいです。中堅企業の専務をやるよりも、小さな企業の社長をした方が勉強になるものです。

 データをそろえないのはダメですが、そろえればいいというものでもありません。データはあくまで手段であり、経営者こそが主役。自分の問題意識に基づき、いかにデータを使いこなすかが問われていると思います。

顧客情報の重要性、7割超で全社共通認識に
データの収集管理や共有に課題

コロナ禍で企業を巡る環境が変わる中、名刺情報や顧客情報の位置づけや活用法が課題としてクローズアップされています。ビジネスパーソンが多い日経ID会員を対象に実施した調査によると、顧客情報の重要性については多くの企業が認識している一方、それをどう使いこなすかがテーマとして浮かび上がっています。

【ビジネス課題に関するアンケート】
調査方法:インターネット調査/調査対象:日経ID会員 お勤めの方 434人(内訳:経営層318人 現場層116人)/調査期間:2021年3月23日(火)~2021年3月26日(金)/調査主体:日本経済新聞社

顧客情報を意思決定に活用する企業ほど、売り上げ強化の施策に前向き

顧客情報の活用法として経営戦略立案と意思決定に使うと答えた企業ほど、次年度以降の売り上げ維持/拡大に向けた施策強化に前向きです。特に「オンライン商談に最適化した営業」(44.7%)や「デジタルマーケティングの強化」(47.4%)といった施策では、顧客情報を意思決定に使うと回答しなかった企業より強化すると回答する比率が高くなっています。 ※ここでの「顧客情報の集計による経営戦略立案と意思決定」の定義は回答者によるものであり、「意思決定の裏付け、意思決定の補助的な役割」を含みます。

イラスト:グラフイメージ
グラフ1:顧客情報の活用法

「顧客情報は重要」7割超、経営・現場問わず全社で共通認識

顧客情報に対する認識について、経営層・現場層それぞれに質問したところ、重要な資産という全社共通認識があるとの回答が経営層で71.4%、現場層で75.0%に達しました。経営と現場での認識に差があるとの回答はどちらも20%弱にとどまっており、役職を問わずその重要性は企業内に浸透しています。

グラフ2:顧客情報に対する認識 グラフ2:顧客情報に対する認識

全社的なデータ化、名刺情報は25.6%、商談情報は41.7%にとどまる

重要性は認識していても情報の全社的なデータ化は名刺情報で25.6%、商談情報で41.7%と、どちらも半数以下にとどまっています。いまだに情報をデータ化していないという回答は名刺情報で32.5%、顧客情報で21.4%あり、情報活用に向けた体制整備は道半ばです。次年度取り組みで「顧客情報蓄積・活用の継続・強化」をあげた方の課題(自由回答)でも「ITを活用した顧客情報の蓄積」「情報の一元管理ができていない」といった、情報の収集や蓄積・管理に関する課題が多く出ていました。

イラスト:名刺情報、商談情報
グラフ3:名刺情報、商談情報のデータ化 グラフ3:名刺情報、商談情報のデータ化

※2021年4月~2021年5月に日経電子版広告特集にて掲載。 掲載の記事 ・ 写真 ・ イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・ 転載 ・ 公衆送信等を禁じます。