日経ビジネス電子版 Special

Now at Work 2021 Digital Experience Special Review 「事業拡大」と「ガバナンス強化」を成功させるための最善策【vol.2】事業拡大/ガバナンス強化 ─Business Expansion/Governance─

「Now at Work 2021 Digital Experience」の注目セッションを紹介する連載の第2回。今回のテーマは「事業拡大」と「ガバナンス強化」の両立だ。デジタルの力を活用して事業を拡大させるには、プラットフォームの最適化やセキュリティ強化といったガバナンス面でも課題が付きまとう。ここではその成功例を紹介する。

攻めと守りのDXを推進する
プラットフォームを構築

 DXで事業を継続的に拡大させるには、新たな仕組みや機能を柔軟に取り込んで拡張できるプラットフォームが不可欠である。

 ServiceNowの「Now Platform」は、社内のあらゆる業務のシステムやデータベースを統合し、業務プロセスをエンド・トゥ・エンドで連携できる点で、理想的なプラットフォームだと言える。また、「攻めのDX」を推進する上では、セキュリティ対策やガバナンス強化などの「守りのDX」が欠かせないが、ServiceNowはそのためのソリューションも充実している。

 以下では、ServiceNowを活用して「事業拡大」と「ガバナンス強化」を両立させた3つの企業の取り組みの一端を紹介していこう。

第一三共

リージョナルの違いをグローバルの力に。
ITサービス管理からエンタープライズサービス管理へ、
そしてDXのEnablerへ

 第一三共は、「サステナブルな社会の発展に貢献する先進的グローバルヘルスケアカンパニー」を目指すという「2030年ビジョン」を掲げている。現在進行している2021~25年度の「第5期中期経営計画」では、「がんに強みを持つ先進的グローバル創薬企業」になることを目標としている。

 この目標の達成を実現するため、第一三共は20年4月にDX推進ユニットを発足させた。同社のセッションに登場したDX企画部 主幹の山光由佳氏は、「第一三共のDX」として、「創薬基盤とデジタル技術により、一人ひとりに最適なヘルスケアソリューションを提供する『Total Care Platform』の実現を目指しています」と説明する。

 この「Total Care Platform」を実現するプラットフォームとして、同社が導入したのがServiceNowだ。

 そもそも同社がServiceNowを採用したのは、ビジネスのグローバル化に伴い、日本、米国、欧州(ドイツ)の3地域がばらばらに行っていたITサービス管理のプロセスとツールを標準化することが目的であった。そのため、最初はServiceNowのIT Service Managementを導入したが、同じプラットフォーム上で様々なアプリケーションを利用できるメリットを生かし、人事ソリューションのHR Service Deliveryをグローバルで活用するなど、ITサービス管理の枠を超え、エンタープライズ管理のプラットフォームとして展開する取り組みを進めている。

 山光氏は、「今後は社内変革のためだけでなく、患者さんへの提供価値のさらなる向上のためにServiceNowのプラットフォームを活用していきたい」と語る。ただし、「そのためには、地域ごとの変革への取り組みは奨励しつつ、グローバル全体としてのガバナンスは効かせる体制づくりが不可欠です」(山光氏)と課題も挙げている。

山光氏
山光 由佳
第一三共株式会社
DX企画部 主幹
Now at Work 2021 Digital Experience
東急不動産ホールディングス

ServiceNowを中心とした
グループのITに関わる業務の再構築

 東急不動産ホールディングスのセッションには、グループIT戦略部の本保亮祐氏が登場。「ServiceNowを中心としたグループのITに関わる業務の再構築」と題して、ITインフラ業務の集約などに取り組んだ事例を紹介している。

 東急不動産ホールディングスは、もともとグループ会社であった東急不動産、東急コミュニティー、東急リバブルの3社が連携強化を図るため、共同株式移転を行い2013年10月に設立した。

 グループとはいえ、それぞれ独立していた企業が集合したため、当初はITインフラ業務も事業部門ごとにばらばらであった。そこで、グループ全体のITガバナンス強化や、ITに関わる費用と体制の最適化を実現すべく、グループIT戦略部を設置した。

 グループIT戦略部は、「ITインフラ業務の集約」「重複機能の最小化」「業務の効率化」を実現させるためのプラットフォームとしてServiceNowを導入。その機能を活用して、従来、電話による問い合わせを主としていたITヘルプデスクを改革。さらに、グループ会社間のIT業務のやり取りを個人単位から部門単位に変えることで、業務プロセスの可視化を進めている。

 本保氏は、「IT資産管理台帳の集約はまだ道半ばですが、完了すれば不要資産の棚卸などに役立つはずです」と語っている。IT資産の集約によって投資余力が生まれれば、東急不動産ホールディングスのDXはますます加速するはずだ。

本保氏
本保 亮祐
東急不動産ホールディングス株式会社
グループIT戦略部
Now at Work 2021 Digital Experience
横河電機

ServiceNow ITOM/SecOpsと
SOC(Security Operation Center)の連携

 計測・制御機器メーカーとしてグローバルに事業展開する横河電機は、世界中の拠点のITセキュリティ監視を一元的に行う「Yokogawa Security Operation Center」(以下、Y-SOC)を開設。さらに、各拠点が使用するパソコンやサーバーなど、約3万件のIT資産からイベントやセキュリティログを収集し、疑わしい通信やイベントを自動的に検知・分析してアラートを出す独自のシステムを構築した。

 同社のセッションに登場したデジタル戦略本部 副本部長の塩﨑哲夫氏は、「セキュリティをさらに強化するためには、IT資産情報の統合的な管理、そして不正アクセスを自動で検知した後に、インシデント対応を効率よく対処するワークフローが必要でした」と話す。

 そこで、横河電機はServiceNowのIT Operations Management(以下、ITOM)とSecurity Operations(以下、SecOps)を採用した。ITOMで約3万件に上るIT資産状況が可視化された結果、インシデント対応の優先順位付けがしやすくなった。

 さらにSecOpsには、既知の脅威が検知されると自動的に防御を行う機能が備わっており、これとイベントの自動検知・分析システムを連携させることで、アラームが出るとSecOpsが自動防御する仕組みを作り上げた。

 以上のようなセキュリティガバナンスの強化によって、横河電機はグローバルビジネスをさらに発展させるための礎を築いている。

 第一三共、東急不動産ホールディングス、横河電機による3つのセッションは、「事業拡大」と「ガバナンス強化」の両立を考えている企業に、貴重なヒントを与えてくれそうだ。

塩﨑氏
塩﨑 哲夫
横河電機株式会社
デジタル戦略本部 副本部長