デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進担当者とそれ以外の社員の間には、しばしば意識の乖離が見られる。トップの描くビジョンが、個々の社員にしっかり理解されていないことがその主な要因だ。この状況を打破するには、インターナル(組織内)のコミュニケーションを今一度精査し、部門横断的に情報が共有できる環境を構築することが不可欠。ソフィアはそのための方法を提案している。
DXの目的は、デジタル技術やデータを駆使して「新たな企業価値」を創出することにある。それには、単に業務プロセスにテクノロジーを適用するだけではなく、ビジネスモデルや企業文化そのものを変革する視点が重要だ。ゆえに、DXの推進には、全社員が自社の将来の事業の方向性や戦略ビジョンをしっかり理解した上でコミットする必要がある。
ところが、多くの会社ではこれが実現できていない。経営トップやDXの推進担当者とその他の社員の間に温度差があり、そのことで変革が阻害されているという。
「温度差を生む主な要因となっているのが、企業の価値観、ビジョン、戦略などの浸透を組織内に促す『インターナルコミュニケーション』の不足です。DXによってどんな企業を目指すのかが、個々の社員に理解されていなければ、全社的な取り組みを進めることは困難です。リーダーばかりが熱量を持っており、一般の社員は冷めているという現在の状況を一刻も早く脱却しなければ、世界に取り残されてしまうでしょう」とソフィアの築地 健氏は警鐘を鳴らす。
必要なのは、社員の心理・行動の変容には複数の段階があることをまず把握し、それぞれに合ったインターナルコミュニケーションを実践することだ(図)。社員の理解や共感の度合いは随時、アンケートやヒアリングで明らかにする。そして、全社員が十分な熱意を持つまでPDCAを回すことが、DXを成功に導くポイントになるという。
5つの段階それぞれに合ったコミュニケーションを行い、DXの目的や意義を浸透していく。ヒアリングで効果を図ることも大切だ
ポイントは次のようなものだ。まず、インターナルコミュニケーションは、経営理念やビジョンを理解させる「浸透的コミュニケーション(Penetration)」、組織横断的な情報共有・連携を図る「協創的コミュニケーション(Cooperation)」、現場の声を拾い上げる「提言的コミュニケーション(Feedback)」に大別される。中でも重視すべきはFeedbackだ。組織変革の過程では、社員から不平不満が上がるのは当然のこと。それを上から抑え込むのではなく、拾い上げて解消することが非常に大切だという。
コミュニケーション手法は対面のほか、社内ポータル、社内報、社内SNSなども活用する。効果を計測しながら、内容・目的ごとに伝わりやすい手法を使い分けることが肝要だ。加えて築地氏は、「イントラネット上の特設サイトなど、『そこへ行けば最新情報が得られる』という分かりやすい場所を用意することが大切」と述べる。ソフィアでは、企業ごとに適したインターナルコミュニケーションの戦略を提案するほか、それに基づく施策の実行までをワンストップで支援し、研修・イベントの実施や、Webサイトの構築、特集やインタビューなどの記事、動画、eラーニングなどのコンテンツ制作も請け負っている。インターナルコミュニケーションでDXを加速させたいという企業は、相談してみるとよいだろう。
「DXは経営者1人の力では実現できません。経営ビジョンを共有し、誰もが積極的に“チェンジメーカー”役を担っていくことが重要です。その上で、部門が互いに協力して進めていく。そうすることで、他社に先駆けた変革を具現化し、ビジネスに新たな価値をもたらすことが可能になるのです」と築地氏は語った。