日経ビジネス電子版 Special

「予測の達人」新家義貴氏に聞く
統計調査の重要性

経済センサス活動調査で
日本経済が見えてくる

6月1日より総務省・経済産業省・都道府県・市区町村による「令和3年経済センサス-活動調査」が実施される。5年ごとに行われるこの調査は、国勢調査と同じく国の「基幹統計調査」と位置づけられている。しかし、調査データがどのように活用されているかは、あまり知られていないのが現状だ。そこで今回は、経済予測の第一線で活躍されている第一生命経済研究所の新家義貴氏にご登場いただき、経済センサスが日本の経済や社会に果たす役割や経済統計がもつ意義、データ分析のコツ、活用の方法など、お話を伺った。

統計調査は、経済の分析・予測
を支える基礎

― 新家さんは経済予測の分野で長年ご活躍されています。経済予測にはどのような経緯で携わられたのですか。

新家 1998年に就職して、すぐに研究部門(第一生命経済研究所)へ出向し、以後は継続して日本経済の分析・予測に関わってきました。この間、内閣府に出向して経済白書や月例経済報告の作成に関わったり、需要と供給の両面から消費の動向を捉える消費総合指数の開発といった仕事にも従事しました。

― これまでも景気予測や経済予測で数々の的確な判断をされ、「予測の達人」とも称されていますが、もともと予測が得意だったのでしょうか。

新家 出身が広島ということもあり、プロ野球の広島カープのファンでして、小学生の頃からシーズン中は各選手の打率計算やチームの勝率予測をしていました。本格的に経済と向き合ったのは社会人になってからですが、子供の頃から勝率予測を紙に書いてたくらいなので、もともと分析や予測には興味をもっていました。ただ、当時はこういう仕事をするとは思っていませんでしたが(笑)。

― そうなると、現在の分析や予測というのは天職なのかもしれませんね。ところで、分析や予測を得意とする新家さんにとって「統計データ」とはどのようなものとお考えですか。

新家 統計データは経済の現状を正確に把握するために欠かせません。それが正確な予測にもつながります。たとえば政府が発表する月例経済報告では、個人消費や輸出入などのデータを多角的に分析し、前月と比較して経済状況がどのように変化しているかを示しています。未来を正しく予測するには、まず現状をしっかりと把握し、冷静に分析することが求められます。統計はその裏付けになりますので、私の業務にとって正確な統計データは、必要不可欠な存在だといえます。

新家義貴 氏
新家義貴 氏
第一生命経済研究所
経済調査部長・主席エコノミスト
1998年4月第一生命保険入社。同年7月第一生命経済研究所出向。2002年9月内閣府出向。消費総合指数の開発などを行う。2004年9月第一生命経済研究所に復帰。2020年4月より現職。日本経済研究センターが実施する「ESPフォーキャスト調査」に参加する民間エコノミストのなかから選ばれる「優秀フォーキャスター(予測者)」に2008年から2018年度まで連続で選出されるなど、経済予測の第一人者として知られる。

「経済センサス-活動調査」で
日本企業の“今”が明らかに

― 6月に「令和3年経済センサス-活動調査」が実施されます。これはどのような調査なのでしょうか。

新家 5年に一度行われている経済センサスは、国が行う各種統計のなかで最重要ともいえる調査です。経済予測を行う際、さまざまな統計データを用いますが、すべての産業について、全国津々浦々の状態を一度に把握することができるのは、経済センサスをおいてほかにありません。5年に一度行われるこの調査で、日本経済の現状を正しく理解することが可能になります。また、経済センサスのデータは、他の経済統計を実施する際の基礎としても用いられており、正確な経済統計を作成するうえで必要不可欠です。そうした意味でも、経済センサスはとても大切な調査であるといえます。

― 5年に1度しか行われない調査なら回答自体も重要になってきますね。あと、他の統計調査と比べてどういった点が違いますか。

新家 経済センサスと他の調査との一番の違いは、調査の対象となる事業所・企業の数が圧倒的に大きいことが挙げられます。母集団から一部の標本を抽出して調査する「標本調査」と比べ、国内のほぼすべての事業所・企業を対象とする経済センサスは誤差が小さく、わが国の経済実態をより正確に表すことが可能だと思います。

― 経済センサスでは調査するのは企業のどのような点でしょうか、詳しく教えてください。

新家 経済センサスには「基礎調査」「活動調査」の2種類があります。基礎調査は事業所・企業の属性など、基本的な事項の把握に重点を置いたもので、今回実施の活動調査では経営組織、事業所の開設時期、従業者数、事業所の主な事業の内容、売上及び費用の金額、事業別売上金額など、企業の経済活動の詳細について調査します。

  • 経済センサス-基礎調査 事業所・企業の基本的構造を明らかにする
  • 経済センサス-活動調査 事業所・企業の経済活動の状況を明らかにする

図1 経済センサスは、基礎調査と活動調査でその役割が異なる

一般的な統計調査に比べると項目は多岐にわたりますが、全国・全産業規模で経済活動の実態を把握する機会は他にないことから、活動調査の結果は日本経済の現状を確認し、将来を予測するうえで、非常に重要な基礎データになります。

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経済センサスの調査データは
ビジネスにも活用できる
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