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東京工業大学 国際オープンイノベーションシンポジウム2021レポート 価値創造と課題解決に向けイノベーション創出を加速する「大学城下町」

社会環境の劇的な変化により、産業界のあらゆる業種で価値あるビジネスの創出が求められている。東京工業大学 オープンイノベーション機構は、“知の探索”を原動力とし、企業と大学が共にイノベーションの創出へと挑む「大学城下町」を作り出す。2021年2月8日には「第2回 東京工業大学 国際オープンイノベーションシンポジウム2021」を開催。コロナ禍に適応し、さらなる進化を遂げたOI機構の取り組みを報告した。

二ューノーマル時代のオープンイノベーション

  • 益 氏 東京工業大学
    学長
    益 一哉
  • 渡辺 氏 東京工業大学 理事・副学長、
    オープンイノベーション機構
    機構長
    渡辺 治

 地球温暖化や少子高齢化など、社会全体で取り組むべき課題が次々と顕在化している中で、企業は新たな時代への適応が求められている。日本の産業界が、競争力を維持・強化し続けていくためには、従来ビジネスとの連続性に拘泥しない、技術・製品・サービス・ビジネスモデルでの不連続な価値創出が必要不可欠だ。

 こうした時代の要請に応えるため、企業と大学の研究者が共に価値創出に取り組む場の提供を目指して設立されたのが、東京工業大学 オープンイノベーション機構(以下、OI機構)である。

 これまでの産学連携では、企業の研究者・技術者と大学の研究者との個人対個人のつながりを基に進められるケースが多かった。こうした産学連携では、既存ビジネスの中で直面する課題に対して取り組むことはできる。しかし、経験のない未知の課題や専門外の問題の解決には無力だった。そこでOI機構では、包括的な課題を抱える企業と多様な専門性を有する大学で産学連携を進める、組織対組織の仕組みを用意。専門性を深めることにより課題解決する“知の深化”だけにとどまらず、多様な領域のアイデアを取り込み融合させる“知の探索”を原動力としたイノベーション創出に挑む場、「大学城下町」を作り出している。

  • 大嶋 氏 東京工業大学
    オープンイノベーション機構
    副機構長・統括
    クリエイティブマネージャー
    教授
    大嶋 洋一
  • 松浦 氏 東京工業大学
    学術国際情報センター
    准教授
    松浦 知史

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって社会活動が停滞する中、OI機構は産学連携の積極的なデジタルトランスフォーメーション(DX)を実践。これにより、企業と大学が連携する環境は、コロナ禍以前よりも大きく進化した。OI機構 機構長の渡辺治氏は、「2021年は、昨年の経験を基に、ICT(情報通信技術)を創造的活動と効率化に役立てる『DX元年』と位置付けています」と話す。コロナ禍以降も見据えた、DXの導入と運用の仕組み作りに取り組んだ東京工業大学 准教授の松浦知史氏は、「研究活動の透明性、無駄な仕事を排除する構成員の幸せ、さらには企業の利益を守るセキュアの3つの担保を重視したDXの導入を進めました」と語っている。不測の出来事にも耐える強靱さを持ち、これまで以上に効果的かつ効率的な仕組みが整った。

 このような整備された研究環境下で、東京工業大学の学長である益一哉氏は、「組織対組織の連携をさらに拡大し、よりオープンな業界対大学群・学界の連携へと発展させていきます」と語っている。また、OI機構 副機構長・統括クリエイティブマネージャーの大嶋洋一氏は「2020年には、協働研究拠点を置く企業が前年の3拠点から、6拠点へと倍増。拠点間を連携させることにより、さらなる研究の広がりが期待できるようになりました」と言う。OI機構が提供する新たな産学連携の基盤「大学城下町」は、これからさらに創造的な研究活動を展開できる場へ発展していきそうだ。

上記、大学城下町の絵の中に、今回講演を行った東京工業大学のメンバーが描かれています。ぜひ探してみてください。
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