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コミュニケーション、立地の魅力ー 会社に行きたくなる動機が重要に アフターコロナに求められるオフィスとは

コミュニケーション、立地の魅力ー 会社に行きたくなる動機が重要に アフターコロナに求められるオフィスとは

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、オフィスを縮小・解約する動きがうかがえる。テレワークの普及で「オフィス不要論」が出てくる一方で、リアルなオフィスの価値を問い直す動きも出ている──。オフィス仲介大手、三幸エステート チーフアナリストの今関豊和氏にアフターコロナにおけるオフィス需要の動向を日経BP総合研究所 社会インフララボ所長 德永太郎が聞いた。

峠を越した渋谷の空室拡大 実態は「転出」ではなく「縮小」

德永新型コロナウイルスの感染拡大が、賃貸オフィス市場にも大きな影響を与えています。

今関足元のオフィス需要が急激に縮小しているのは事実であり、これからテナントが退去予定のオフィス床も含めた「潜在空室率」は、昨年の5月ころから急上昇しています(図)。オフィス需要が右肩上がりだったこれまでの市況に比べると、局面は大きく変わったと感じています。

 ただ、今回のケースを2008年に起きたリーマンショックのときと比較すると、ホワイトカラーのオフィスワーカーへの影響が比較的少なく、ダメージが大きかったのは、サービス業や飲食店舗、ホテルといった現場に近いワーカーが多い業種です。その点を考慮すると、リーマンショックのレベルまで、オフィスの空室が拡大しないと考えています。

德永東京では当初、渋谷区の空室率が上昇しました。「渋谷からのテナント流出が激しい」という声も聞かれましたが、実際はどうなのでしょうか。

図

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で空室率が上昇傾向であったが、渋谷駅周辺エリアでは、落ち着きを取り戻したことがわかる

今関渋谷にはIT系企業が多く立地しています。ITリテラシーが高く、テレワークに移行するまでの意思決定が早かったため、余剰オフィスの解約も早期に実行されたと考えます。また、渋谷は大規模ビルより中小ビルの割合が比較的高いことも挙げられるでしょう。大規模ビルは、定期借家契約で入居するテナントが中心なので、景気などの経営環境が変わってもすぐにフロアを解約できません。一方で、中小ビルは普通借家契約が多く、解約のタイミングに制約が少ないため、意思決定がしやすいのです。

 以上の2つの要因から、渋谷ではオフィスの解約・縮小の動きが早い段階で顕在化し、そのことが見た目の空室率の高さにつながったと考えています。

 空室率だけ見ると、「渋谷からのテナント流出が激しい」と感じるかもしれませんが、実態は「流出」ではなく、解約を含む「縮小」でしょう。オフィスを縮小するための部分解約はあっても、渋谷から別エリアへの移転が顕著だとは思いません。

 直近の空室率もほぼ横ばいに移行し、潜在空室率に至っては低下に転じています。これらのデータを見る限り、渋谷におけるオフィス縮小の動きは一段落したといえるでしょう。

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