日経ビジネス電子版 SPECIAL
“働く場”だけにとどまらないオフィスの価値

“働く場”だけにとどまらないオフィスの価値

コロナ禍でオフィスの縮小傾向が続く一方、オフィスを単なる働く場所と考えず、より積極的に活用していこうとする動きもみられる。渋谷のオフィス市況を取材する企画の第2弾。今回は独自の視点でオフィス戦略を展開する2社に、日経BP総合研究所 社会インフララボ所長 德永太郎がその狙いを聞く。

外食産業のイメージを変える洗練されたオフィス設計

粟田 貴也

株式会社トリドールホールディングス
代表取締役社長 兼 CEO
粟田 貴也

丸亀製麺をはじめとする複数の外食チェーンを国内外で展開するトリドールホールディングス。本社オフィスは渋谷ソラスタの19~20階に位置し、海外のインテリア家具や季節感ある植裁で居心地の良い空間が広がっている。

「外食産業には働く場としてブラックなイメージがいまだに残っています。そのイメージを払拭したかったのです」と代表取締役社長の粟田貴也氏はその意図を説明する。

1985年に起業し、業績拡大にあわせて2007年に本社を神戸市へと移転。そして2019年、さらなる発展を目指し渋谷区へと本社機能を移した。

「外部の協力企業に東京の会社が多く、神戸ではスピード感のあるコミュニケーションが難しいと感じました。実力があれば、神戸でも十分に成長できたのでしょうが、そこまでの力が我々にはまだなかった。良い場所を探す中で浮かんだのが渋谷でした」

同社がまだ小さかった2000年頃、渋谷ではIT系のベンチャー企業が次々と上場を果たし、急成長を遂げていた。オフィスや店舗、文化施設などが混在し、若い人たちが行き交う。渋谷という街にカオスの中から出てくるエネルギーを感じて、ここにオフィスを構えることで、社員の感性を磨きつつ、社内外のコミュニケーションを活発化させようと考えた。会社の勢いを表現するのに、ふさわしい場所だとも感じたという。

コミュニケーションを生み出すさまざまな細かい仕掛け

画像

執務エリアにソファスペースが点在し、社員同士のコミュニケーションが活発に

会社を成長させていくために、粟田氏が何よりも重視しているのが“人材”だ。新本社では、社員が生き生きと働き、そのポテンシャルを十分に発揮できるように、時間や空間に縛られない「ABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)」を採り入れた。

外の景色を見ながら仕事ができる席、靴を脱いで作業ができるスペースなど、多彩な空間を用意し、仕事内容やその日の気分で使い分けることができる。さらにライブラリーやギャラリー、疲れたら休める仮眠室も設けた。ちょっとした雑談や打ち合わせができる空間をフロアの至るところに設け、自然と社員間のコミュニケーションが生まれるように工夫している。

内階段でつながる上階には、カフェテラス(社員食堂)やセミナールームも設けた。コロナ禍では制限しているものの、普段は社員間だけでなく、外部の企業と交流する場としても、これらの施設が活用されている。1月にはLGBT求人サイトの運営会社にセミナールームで講演してもらい、幹部社員にリモート配信するなど、多様性への意識や理解も重視する。

社員の成長の場がオフィスであると捉える粟田氏。「仕事はテレワークでも事足りる。でも、他人から刺激を受けることって大事じゃないですか。このオフィスは社内外の人が交流する場として大いに活用して欲しい。多くの人々が交わる渋谷駅前のスクランブル交差点のような場所であって欲しいと思っています」。

1 2