職員同士の感謝の共有が
離職率の大幅な改善に繋がる

株式会社ハイフライヤーズ 
保育運営本部 本部長

キートス統括園長
日向 美奈子

一般的に離職率が高いといわれる保育業界。千葉県内で認可保育園「キートス」を運営するハイフライヤーズも同様の悩みを抱えていた。様々な待遇改善案を実施したが、効果が出ない中で、同社は保育士同士の「承認欲求」を満たすことが必要だと考えた。そのために始めた取り組みとは?

「改善レポートページ」で
保護者の声に真摯に向き合う

「また明日も来たい保育園」をコンセプトに、認可保育園「キートス」を千葉市に9園、成田市に4園展開するハイフライヤーズ。園児、そして保護者へのサービス向上を最優先に、安心して子どもを預けられる環境を提供している。


ハイフライヤーズはコロナ禍のテレワークに対応した子どもの「一時預かり」や、園児用の布団を、保護者負担なしで園側が用意する仕組みなど、斬新な取り組みを進める先駆者でもある。


そんな、新興保育園として注目される一方で、一部からの風当たりも強かった。2020年初頭には、インターネットの匿名掲示板に根拠のない悪評が書き込まれる事態が起きた。投稿者は匿名で、対応のしようもない。実際に園に通う保護者から不安の声も上がったことから、対応を迫られた。


同社本部で統括園長を務める日向美奈子氏は、当時を振り返ってこう語る。


「匿名の書き込みに振り回されていては、良いサービスは提供できません。『本当に当園にお子様を預けている保護者の声には、100%応える』という方針の下、当社のホームページ内に、保護者の声を直接掲載する『改善レポートページ』を立ち上げました。 同時に、保護者からの要望を受け止める窓口として、専任のカスタマーサポートセンターも開設し、電話やメール、LINEなどで要望を受けることにしました」


同社の職員は本部職員を含めほとんどが保育士の国家資格を持つ。カスタマーサポートセンター長も園長経験者で、保育の現場や保護者の思いには理解が深い。1件ごとの保護者の声に真摯に耳を傾け、対応策を現場に伝えた。


当初、改善レポートページには「改善します」「検討します」「できました」「ごめんなさい」という4つの項目が設けられ、保護者からの要望に一つひとつ丁寧に対応し、結果を書き込んでいる。どうしても改善できない要望も、隠すことなく掲載した。要望と改善結果がまとめられたことで、保護者への安心にも繋げていった。

今までとは異なる
若い職員の価値観

保護者への対応を進める中で、同社は職員のマネジメントにも問題を抱えていた。職員の離職率が高かったのだ。


多忙で待遇が良くないイメージのある保育業界だが、ハイフライヤーズは完全週休2日制、家賃全額補助の借り上げ社宅や賃金の透明性確保、有給休暇の100%消化施策といった待遇に加え、ITツールの導入による業務効率化、職員のエンゲージメント向上にも取り組んでいた。


積極的な対応をしてきたにもかかわらず、離職率は34%に達していた。業界全体でも、入社5年以内におよそ半分が辞めるという状況のため、突出しているわけではないが、離職の多さは問題だった。保育園が預かれる園児の数は、保育士の数で決まるため、保育士が減ってしまえば応募に応えることができない。同社の業績にも悪影響が出ていた。


なぜ、処遇を良くしても辞めてしまうのか。日向氏を中心として社内で検討した結果、若い職員の価値観が変わってきていると気づく。金銭や処遇でなく、自分が保護者や他の職員から「認められること」に価値を感じるのではないかと考えるようになった。


そこで、職員の「認められたい」という願望に応えるために、社内のコミュニケーションツールにUniposを導入。職員同士が日ごろの業務に対する創意工夫から感じた感謝・称賛のメッセージをやり取りできる場を作った。


ちょうどそのころ、前述した改善レポートページに、1件の書き込みがあった。「保育者へのありがとう」を伝えるコーナーがあったら、ぜひ投稿したい、というものだった。そこで早速、第5の項目である「ありがとう」を設置。するとそれを待っていたかのように、保護者からの感謝メッセージが寄せられた。この声をUniposにも転載し、その取り組みを共有すると、メッセージのやり取りはさらに活発化した。


「若い職員は給与面や処遇、上司からの評価を求めていると思っていましたが、それは違いました。欲しかったのは、同じ職場で働く仲間からの共感、そして保護者の方からの感謝の言葉で得られるやりがいだったのです」(日向氏)

ハイフライヤーズでは、職員同士が自発的に感謝・称賛のメッセージを送ることで、現場のモチベーションを高めることに成功した。このメッセージからは、リモートで保育園見学に対応した職員への「ありがとう」の気持ちはもちろん、職場の雰囲気の良さも伝わってくる。

顧客満⾜向上を
従業員満⾜に繋げる

感謝・称賛のメッセージを通じて毎日の貢献を可視化する取り組みは、大きな成果が出ている。19年9月期の離職率は34%だったが、直近の21年6月時点で、約10%まで下がった。その結果、多くの園児を受け入れることができ、業績も改善に向かっている。


Uniposには、保護者の声を起点にしたものをはじめ、職員同士による感謝・称賛のメッセージが書き込まれている。現在は1日に100通以上の「ありがとう」が飛び交う。「自然発生的に生まれた『ありがとう』は、他のどんな福利厚生よりも価値があり、強いエンゲージメントを生みます」と日向氏は語る。Uniposを通じた取り組みで現場のモチベーションを高めたハイフライヤーズからは、今後も過去の慣習にとらわれない、新たな取り組みが生まれるだろう。そのサービスは保護者だけではなく、現場で働く保育士も「また明日も来たい」と思わせるはずだ。

profile

幼稚園・保育園勤務を経て2010年にハイフライヤーズの設立に参画。13年に認可保育園キートスを開園後、千葉県内で13園を展開。現在は児童学博士号を取得するために、学生と経営者の2つを両立しながら日々邁進している。