プロ意識が求められる環境で
何でも話せる組織をつくる

サントリーパブリシティサービス株式会社
PRコミュニケーション第2事業

取締役
大角 晴美

社内のコミュニケーション不足は、組織の不安定化や、疎外感による離職の増加を招く。サントリーパブリシティサービスは、“縦割り”だった組織内での会話の相手を縦横ナナメに広げ、雑談による関係性の土台を構築。安定した組織づくりを成功させた。同社が取り組む、プロフェッショナルの仕事の裏側に迫る。

「失敗は許されない」
プロ意識が離職の原因に

サントリーパブリシティサービス(以下、SPS)は、企業が工場見学などのPRを目的に運営する企業施設の他、国・自治体や民間企業が運営する音楽ホール・劇場・美術館などの文化施設や商業施設で、受付や案内などの顧客接点を担う企業だ。


「1963年にサントリー武蔵野ビール工場で案内業務を開始したのが、そもそもの始まりです。86年のサントリーホールの開業とともに文化施設向けのサービスノウハウを蓄積し、現在では施設運営やイベント・研修企画などのお手伝いもしています」と、同社でコミュニケーション事業を統括する大角晴美氏は説明する。


約2700人に上る従業員が所属し、全国約80カ所の施設で活躍している。受付や案内のプロフェッショナルとしての意識が非常に高く、真面目で優秀なスタッフばかりだ。


だが、その半面、離職してしまう優秀な人材が少なからずいることに同社は頭を悩ませていた。大きな理由の一つは、勤務先でたった1人、または少人数で頑張らざるを得ないことの孤独感だったようだ。


「“施設の顔”としてお客様と接する仕事なので、『失敗は許されない』という緊張感がとても強いのです。コミュニケーションを交わすのは本部にいる上司と限られたスタッフのみ。仕事柄、勤務中は先輩や同僚に気軽に相談することもできない。でもプロとしての意識が高いので『甘えるわけにはいかない』とつい頑張ってしまい、自分を追い込んでしまうケースが目立っていたのです」と大角氏は振り返る。

何でも話せる
環境づくりを目指す

スタッフ同士の横のつながりが少なく、報告・相談や命令系統はすべて縦割り。こうしたコミュニケーションの制約が、組織の安定化や活性化を阻害していると感じる企業は少なくないはずだ。


SPSはこの問題を解決するため、「真の安定した組織」を目指すプロジェクトを2019年に始動した。


まずは、スタッフが勤務する各拠点を安定運営させるための要素として、①要員が充足している、②マネジメントの状態が良好である、③コミュニケーション機会が充実している、④働く環境(事務所・休憩場所などが良い)の4つを挙げた。


この「安定運営4要素」のうち、とくに重要な「コミュニケーションの充実」を実現するため、「縦横ナナメの関係づくり」と、「“雑談”をベースとするコミュニケーション」を推進することに決めた。


「従来のような“縦割り”だけのコミュニケーションでは、相談相手が限定されるだけでなく、別の施設がどんな取り組みや創意工夫をしているのか、同じように日々悩んだり、苦しんだりしているのかといったことも分かりません。そこで、直属の上司だけでなく、別の施設で働く仲間や、その上司ともコミュニケーションが取れる仕組みと環境を整えました」(大角氏)


その仕組みの上で、相談や議論といったフォーマルな会話よりも、むしろ雑談などのインフォーマルなコミュニケーションを交わせるようにした。


大角氏は、「フォーマルな会話ばかりしていると、つい『こんな話をしていいの?』という遠慮が出てしまいます。日ごろから雑談を通じて互いの関係を良好にしておけば、何でも話せるようになり、面談や相談などのコミュニケーションの機会も充実すると考えたのです」と明かす。

モチベーションの高まりが
サービスの改善につながる

SPSは、この縦横ナナメの“雑談”を促すためのツールとしてUniposを導入。直属の上司だけでなく、別の施設で働くスタッフやその上司にも、スマートフォンを使っていつでも感謝・称賛のメッセージを送れるようにした。


「別の施設から応援に来てくれたスタッフに『あのときは本当に助かりました』とお礼をしたり、会ったことはないけど、素晴らしい取り組みをしているスタッフを『応援しています』と励ましたり。思わぬ人からメッセージが届くことで、孤独感が薄らぎ、もっと頑張ろうというモチベーションも高まりますよね」と、大角氏はその効果について語る。


実際に、コミュニケーション不足を原因とする離職も減っているという手応えを感じており、プロジェクトの目標である「真の安定した組織」は着実に形成されつつあるようだ。


スタッフがモチベーション高く働くことは、サービスの改善やCS(顧客満足)の向上にも直結する。実際、新宿パークタワー(東京・新宿区)では、インフォメーションで働くスタッフへの「ハッピーレスポンス(対応したお客様からのお礼)」の割合が増え、東京ミッドタウン(東京・港区)ではインフォメーションのスタッフが「ホスピタリティ大賞」を受賞するなどの成果が表れている。


大角氏は今後の展開として、「今回の取り組みで得た知見を、新たなビジネスへとつなげていきたい」と語る。


SPSが提供するサービスの価値は、社内だけにとどまらず、縦横ナナメへと広がっていきそうだ。

SPSではUnipos上で「#部署を超えて」というハッシュタグの付いた投稿が、頻繁にやり取りされている。また、他の施設への応援や、全体研修の前後などに、施設ごとの枠を超えてコミュニケーションが交わされる機会も増えているという。

profile

顧客接点をより望ましいものにするための組織開発、人材育成に携わる傍ら、2014年に人材育成事業を立ち上げ、社内外のキャリア開発を支援。現在は「働くみんなを晴れにするオンラインスクール“ミンナハレ”」を提供中。