コロナ禍の
売り上げ成長の裏側に
顧客満足のための
組織改革あり

株式会社三越伊勢丹 伊勢丹新宿店付

スタッフマネージャー
中井 達也

※掲載写真は撮影のためマスクを一時的に外しています。

顧客への対応に専念するあまり、「個人商店」と化していた百貨店の外商営業。伊勢丹新宿店は、いかにしてそこから脱却し、チームで顧客満足度を高める体制へと変わったのか。そして、コロナ禍で苦境に立たされた現場を奮い立たせ、休業期間があったにもかかわらず前年比売り上げ106%という驚異的な成果を達成した原動力は何か。名実共に組織を変えて、前に進み続けたその舞台裏に迫る。

外商部と店舗の顧客を
つなぐことはできないか

三越伊勢丹の旗艦店である新宿店は、首都圏在住の多くの富裕層顧客が利用する店舗だ。外商部の役割は極めて重要であり、日々顧客のニーズに応えている。外商部では、基本的に顧客1人につき1人が「お客様の担当者」として配置され、顧客が来店すれば店内を案内するほか、自宅などに出向き、商品を届けるなどのサービスを提供する。


一方で、同店の店舗には、商品ジャンルごとの専門性を持った「ストアアテンダント」という担当者が70人ほど存在する。高額商品も多い百貨店を訪れる顧客に付き添って、商品の説明を行うスペシャリストだ。


外商部とストアアテンダントは、それぞれの立場で商品を営業していたが、これまで、両者が連携することはなかった。伊勢丹新宿店付スタッフマネージャーの中井達也氏は、次のように語る。


「外商部の担当者は、自分が担当するお客様への対応が中心で、店内で情報を共有することはあまりありませんでした。一方のストアアテンダントは、商品をご購入いただいたお客様とは、“点”のお付き合いになり、広がりを作ることができませんでした。店頭にいらっしゃる高いポテンシャルを持つお客様が、外商のお客様になっていただくために、両部門の連携を図ることができないかと模索していました」


「バディ制度」の導入で
顧客満足度を高める

そこで伊勢丹新宿店が考案したのが、「バディ制度」だ。これは、外商の顧客が店舗を訪れた際に、商品知識が豊富なストアアテンダントが顧客対応を引き継ぎ、連携して接客する方式だ。


連携のためのインフラも整備した。当初、店内の連絡は分散していたが、2019年に社内チャットなどのコミュニケーションツールが導入され、情報共有が一気に盛んに行われるようになった。外商部の顧客が来店するときは事前に要望を聞き出し、関連する商品の知識を持つストアアテンダントが出迎える体制を取ることができるようになった。


「お客様のことをよく知る外商部と、商品に精通したストアアテンダントがタッグを組み、お客様のニーズに応えることで、伊勢丹新宿店としてできる最大限のおもてなしを、お客様に提供しようと考えました」


社内の情報共有環境とバディ制度によって、営業部門の活動が活発化してきた伊勢丹新宿店に、さらに新たなツールが加わる。社内の取り組みを共有し、感謝し合うツールとして導入したUniposだ。


20年2月から、外商部とストアアテンダントの一部でUnipos を2カ月間テスト導入した。「実験的に使ってみたところ、想定を超える約9割のログインがありました。テストで良い結果が出たため、拡大導入を検討しました」。

ストアアテンダントから外商担当者に宛てたメッセージの例。感謝の言葉を具体的に書くことで、互いのモチベーションを高めることができる。他のメンバーからも多数の拍手が送られており、心理的安全性確保にも寄与している。

感謝の共有が組織内の
信頼醸成につながる

その矢先、世界は新型コロナウイルス感染症の脅威にさらされた。百貨店は前例のない長期休業となり、外商部も顧客との接触が難しい異例の事態となった。時短営業と休業を断続的に繰り返す中、影響は長期に及んだ。


ちょうど新年度開始となる20年4月から、外商部とストアアテンダントの部門は統合し、対面でのコミュニケーションが難しい中でも、外商とストアのチームは親密な連携を重ねていた。


「コロナ禍でも当店の営業は踏ん張りを見せました。外商部は、店舗に来ることが難しいお客様に商品をお届けしたり、商品部が企画した自宅時間を楽しんでいただく商品を提案して、ほとんど即時完売になるなど、新たなニーズを掘り起こしています」


前年度末にテストし、効果が見えたUniposを20年7月に本格導入した。その役割は、社員同士の仕事に感謝を伝え、共有することに徹した。


バディ制度によって、ストアアテンダントの働き方にも変化が起きている。従来は店舗を離れることがなかったが、外商営業に同行して許諾をいただいた顧客宅を訪ねることで、良い刺激を受けている。


「直接、富裕層のお客様と話すことで、新たな気づきを得ているようです。互いの信頼感が増してきていると思います。また、百貨店には営業だけでなく、サービスや配送など、バックオフィスで働いている人もいます。そうした人たちの仕事も含めて、Uniposに感謝を投稿し、共有することで、組織全体の信頼関係が深まっていると感じています」


こうした取り組みの結果、伊勢丹新宿店の外商部は20年度、前年度比106%の売り上げを記録した。コロナ禍による相次ぐ休業など、百貨店として前例のない厳しい環境下で、前年超えの業績を達成するという、まさに「すごい仕事」を成し遂げたのだ。


中井氏は「私たちが取り組んできた改革と、その裏にある仕組みが、お客様から評価された結果だと思っています」と振り返る。


逆境でも、チームメンバーが得意分野を持ち寄り、知恵を絞ることで乗り越えられることを、伊勢丹新宿店は教えてくれた。そして、これからも互いの仕事をたたえ合うことで、自信と信頼を深め、さらに前進していく。


profile

1997年三越入社。以来長年にわたり紳士部門を担当。2018年より、新宿店を支えるスタッフ部門へ異動。現在はCS・ES推進部門の担当として、Unipos導入をはじめとした各種業務改革を主導している。