──日本国内のDX(デジタルトランスフォーメーション)はあまり進んでいないとよく言われますが、この現状をどのように見ていますか。
竹内│確かに3、4年ほど前から、IT業界全体がDXを声高に唱えるようになりました。しかし私は、DXは必ずしも“すべての日本企業が対応しなければならない喫緊の課題である”とは思っていません。DXに対応しなければならない企業──それは成長を強く求めるがゆえ、縮小していく国内市場にとどまらず世界のマーケットに目を向けている企業のみです。
彼らにとって、IT活用やDXはグローバル化に向けた“通行手形”のようなもの。一定のITスキルが備わっていない、またDXを推進していないと、グローバルの企業を相手にしたとき、競争の土俵にすら上がれません。いわばIT活用やDXは、日本企業がグローバルで競争していく前提条件、あるいはスタートラインに立てるかどうかの一つの条件に相当するのではないかと考えます。
しかし、グローバル化に必要な通行手形を持っていても、世界市場での成功を約束されたわけではありません。同様にDXを実現すれば会社のビジネスが大きく成長するとか、あるいは自社の製品・サービスが他社に比べて差別化ができるというわけではありません。グローバル化と一言で言っても、人材のグローバル化や製品・サービスのグローバル化、グローバルのサプライチェーン確立など多岐にわたりますが、DXはこれらを推進するための一つの道具にすぎません。ただし、グローバル水準のITを導入していかなければ、グローバル化を推し進めることはできません。
──貴社が本社を構えるインドはどのような状況にあるのでしょう。
竹内│決して国全体の経済がグローバル化されているわけではありませんが、インドのIT業界は別です。インド経済のけん引者であり、日本の自動車業界の位置付けにあります。毎年膨大な数の意欲的かつ能力の高い若者たちがIT業界に集まってきますが、彼らは最初からグローバルを目指しています。もはやITは世界共通の言語になっていて、基本的に技術をしっかり取得していけば、世界中のどこにでも仕事があります。ITの世界は、いわば世界に向けて開かれたドアのようなもの。ITスキルを身に付けることが、グローバルに打って出る第一歩になる。ここが日本との大きな違いです。