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グローバルで勝ち抜く条件は「世界標準のDX」 - グローバルでのDXの知見を基に日本企業が世界で勝ち抜く道筋をつくる

グローバルでのDXの知見を基に
日本企業が世界で勝ち抜く道筋をつくる

国内大手医療機器メーカーのグローバル化を支えた
ウィプロの強み

岡橋氏
“ITの先進国”であるインド内において大手IT企業の一つと数えられているウィプロ・リミテッドはインドのシリコンバレー、ベンガル―ルに本社を構えている

──ウィプロ・ジャパン株式会社の概要と事業内容を教えてください。

竹内ウィプロ・ジャパン株式会社の本社であるウィプロ・リミテッドは、インドの5つの大手IT企業の一社に数えられます。20年ほど前は、単なるローカルなIT企業の一つにすぎませんでしたが、「2000年問題」により状況が一変しました。当時、全世界で一時的にエンジニアが不足しましたが、そこでインドには英語を使えるエンジニアが大勢いることが分かり、たくさんの欧米やアジアの企業で活躍したことがグローバル化のきっかけになりました。

 あれから20年が経過しましたが、その間に米国の主要IT企業の総称である「GAFA(ガーファ)」が世界を席巻しています。彼らの製品・サービスは、万人受けする標準的なものであり、法人が使いこなすには、それぞれの法人ごとに異なった要件に合わせたカスタマイズが必要になります。ウィプロは、この20年の間にGAFAをはじめとするグローバルITリーディング企業と親密な関係を築いてきました。そうした関係を最大限に活用して、GAFAなどの製品・サービスを個々の企業が十二分に使いこなすための支援を行ってきました。

 世界市場には当然、強力な競争相手が待ち構えています。彼らと勝負するためには、まず世界標準のITやDXを押さえる必要があります。スクラッチで構築する時代はとっくに終わっていて、それぞれの領域における標準的な技術やプロダクトをうまく組み合わせるのが、現在のグローバルのスタンダードになっています。

 例えば、SAPというグローバル企業の多くが基盤システムとして採用するERPシステムがあります。このSAPが、2027年までに現行バージョンのサービスをストップし、以降は「SAP S/4 HANA」という新しいバージョンに切り替えると発表しました。まず第一に、SAP社が提供する最新テクノロジーに対する深い理解がなければ、SAPの新しい環境や機能を使いこなすことができません。

 日本においても、約1000社の大手企業がSAPを基幹システムとして採用しています。現有バージョンのサポート終了期限まで5年しかありませんが、対応できる技術者が国内には圧倒的に不足しています。しかし何の心配もありません。私たちはSAPの技術に特化した組織「Center of Excellence(以下、CoE)」集団を擁しています。日本全体で1万人と言われているSAPの専門技術者が、インドを本社に置くウィプロ・リミテッド一社で約1万3000人も所属しています。これも私たちがSAP社のようなグローバルITリーディング企業と密接な関係を構築してきた結果と言えます。

──海外展開で成功している大企業とパートナーシップを結ばれています。具体的な事例を教えてください。

竹内数年前に、カメラから医療機器へと大きく事業転換し、さらにグローバル化を進めた国内の大手医療機器メーカーの事例をご紹介します。グローバル化を進める過程で、海外に製造・販売拠点を拡充し積極的に海外企業を買収されました。それらを有機的につないでいくサプライチェーンを構築する必要がありました。効果的にIT活用できなければ事業のグローバル化は推進できないと考え、ITのグローバル化に精通した人材を他社から招聘し、世界中の拠点をつなぐITインフラの最適化を推進しようとされました。もちろん一から作るという考えはなく、最適なプロダクト、技術、テクノロジーを検討し、Ciscoの技術を採用して、グローバルでSD-WAN(最適化されたインフラ)を構築することを決定されました。Ciscoの技術に明るく、世界中の主要な地域にサービスが提供可能ということで、私たちがインフラ導入・運用パートナーとして選出されました。

ウィプロ・ジャパンの強み

ウィプロの強み

世界のITを知る企業と
パートナーシップを組む意義

──今後の展望をお聞かせください。

竹内冒頭で申し上げた通り、グローバルで事業を拡大していく上では、IT活用やDXの導入は不可欠です。しかしITをうまく活用したり、DXが成功したからといって、そのまま競争に勝てるわけではありません。グローバルで競争していく上でスタートラインに立てるかどうかだけの問題なのですから、そこに余計なコストや時間をかけるのは意味がないことだと私は考えます。そこで、知見や経験を持った私どものような企業をうまく活用していただくのが近道ではないでしょうか。

 多くの日本企業と同じように、必要に迫られてDXを推進した欧米企業もたくさんあります。それを私たちは見てきましたし、実際にサポートを実施してきました。こうした経験から、数多くのノウハウや知見が私たちの中に蓄積されていますし、実際にそういった業務に従事した人材を多数抱えています。

 ITのグローバルの水準を知る企業とパートナーシップを組み、そして多様で優秀な海外の人材を活用する。まさしくそれが時間とお金をかけずに、世界で競争できるIT環境を自分たちで設定できる効率の良い手段と言えるのではないでしょうか。

 とはいえ、日本企業が欧米企業のようにインドに本社のある私たちのような会社をそのままうまく使いこなすためには、もう少し時間がかかると思います。そこに日本法人である私たち「ウィプロ・ジャパン株式会社」の役割があります。例えば、日本語でコミュニケーションをしたい、同じタイムゾーンで交渉したり、業務を実行したりしたいなどの要望が出てくるかと思います。

 私たちは、ウィプロ・リミテッドというグローバルで知見を蓄積してきたインドに本社を置く会社を、日本のお客様が使いこなしやすい形にする窓口としての役割を担っています。そういう意味では、これから日本法人の体制を今以上に強化をして、より日本のお客様が私たちのサービスを使いこなせるようなお手伝いをしていきたいと思います。