日経ビジネス電子版Special

オンラインセミナーレビュー

激変!!
「働き方・働く場所」
セミナー

ニューノーマル時代のワークプレイスを考える

  • 日時2021年7月30日(金)13:30~16:30
  • 主催日経ビジネス
  • 協力日経BP 総合研究所
  • 協賛ACALL、クボタ計装(50音順)

7月30日、「激変!!『働き方・働く場所』セミナー ニューノーマル時代のワークプレイスを考える」と題したオンラインセミナーが開催された。2020年春以降、コロナ禍という大きな環境変化を受けて、人びとの働き方は大きく変わった。このような変化を、企業はどのようにとらえるべきだろうか。オフィスを再定義し、多様な働き方をイノベーションや競争力に変えようとする企業もある。ニューノーマル時代に求められるワークプレイスの形を、様々な角度から考えてみたい。

基調講演

新しい働き方:変わる価値観・変える意識
~これからの経営のカギ Wellbeing~

島田 由香 氏
ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社
取締役
人事総務本部長
島田 由香

 基調講演を行ったのは、ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス取締役人事総務本部長の島田由香氏である。島田氏は「この1年半ほど、当社も完全在宅勤務を続けています」と、コロナ禍で起きた働き方の変化に触れつつこう話す。

 「働き方は変わります。コロナ禍があってもなくても、このような変化は起きたでしょう。ただ、コロナ禍によって変化のスピードは速まったと思います」

 働き方の変化を示すキーワードは個々人の幸せであり、Wellbeingである。これまでの企業では、個人の視点が忘れられがちだった。しかし、激しい環境変化の中、イノベーションが求められる時代に、従来型の考え方では対応できなくなってきた。

 「仕事に幸せを感じる人は、そうでない人に比べてイノベーションが3倍、生産性が21%高いという報告もあります。幸せに働くかどうかは個人にとって重要ですが、ビジネスにも大きな影響を与えているのです」(島田氏)

 幸せには3つの“レバー”があるという。成長、自立・自律、つながりである。自身の成長を感じること、自分で仕事をコントロールしている感覚、仲間や他者との関係性。これらを実感できれば幸せに働くことができ、それはビジネスにもポジティブな影響を与える。

 「社内で『生産性を上げろ』といっているとしたら、それはナンセンスです。幸せに働いていれば、生産性は上がってしまうものなのです」と島田氏。経営者が注力すべきは3つのレバーだ。また、Wellbeingへの科学的なアプローチも進化している。

 「Wellbeingの高い人には、いくつかの傾向が見られるといわれています。健康で長寿、素晴らしい人間関係、仕事のパフォーマンスと創造性の向上、社会への参加・社会性のある行動、レジリエンスの向上です」

 米ペンシルバニア大学のマーティン・セリグマン博士によると、5つの要素がWellbeingを高めるという。ポジティブな感情、主体的に関わる、よい人間関係、仕事や人生に意味や意義を感じる、達成・熟練だ。これらはすべて主観的なもの。自分がそのように感じることが重要なのである。

 以上のような考え方に基づき、ユニリーバは働き方や働く場の柔軟性を高めてきた。

 「仕事の場から、新たな出会いや知の融合などの場へ。オフィスはイノベーションの場であり、企業のカルチャーを感じる場でもあります。工場では時間と場所の制約がありますが、オフィス業務については基本的に、時間や場所を自由に選べるようにしました」

 ユニリーバ・ジャパン・グループで進む働き方、働く場の変革。個々人の幸せやWellbeingに着目した先駆的な取り組みは、多くの企業に示唆を与えている。

特別対談

多様な働き方に応える
ワークプレイスを考える

松岡 利昌 氏
日本オフィス学会
会長
松岡 利昌

 働き方や働く人の意識とともに、働く場所にも大きな変化が起きている。日本オフィス学会会長の松岡利昌氏はこう説明する。

 「やむをえずテレワークに移行した企業も多いと思いますが、やってみると意外にできてしまった。とはいえ、在宅勤務の不具合も見えてきました。それを補うサードプレイスとして、サテライトオフィスや1人用の作業ブースのような施設が増えました。いわば、都市のオフィス化です。オフィスと自宅、サードプレイスを行き来するハイブリッドワークが広がりつつあります」

 一方で、「大型オフィスビルの都市化が進むのではないか」とも松岡氏はいう。在宅勤務が増えたことで、ライフの場にワークが入ってきた。こうした動きと対をなすように、ワークプレイスにライフを取り入れる動きが進むのではないかとの見方だ。

 「従来のオフィスは仕事の場で、そのためには3密の環境が効率的と考えられてきました。これからは働く人がエンジョイでき、同時に高い生産性を実現できるワークプレイスが求められるでしょう」と松岡氏。それは新しい出会いを期待できる場所、自然に行きたくなるような場所である。イノベーションを生み出すための環境といってもいい。

徳永 太郎
日経BP 総合研究所
社会インフララボ所長
徳永 太郎

 テレワークが一般化したことで、その課題も浮き彫りになってきた。最も大きなものは、マネジメントの課題だろう。日経BP総合研究所社会インフララボ所長の徳永太郎はこう語る。

 「多様な働き方に対応するハイブリッドワークが広がる中で、マネージャーの考え方にも変化が求められています。従来、視界の中で部下が仕事をしていれば、上司は何となく安心できました。これからは、成果に焦点を当てたマネジメントが求められるでしょう」

 とはいえ、オフィス以外の場所で働く部下が仕事をしているのかどうか、マネージャーは気になるものだ。

 「以前はコーヒーマシンの前の立ち話で確認できたことが、テレワークではできません。そこで、短いビデオ会議やチャットなどによる確認が非常に増えました。これは日本だけでなく、欧米企業でもよく見られることです。結果として、以前よりも労働時間が増えたケースもあります。従来の人事制度や管理のルールをいかに見直すか――。それはハイブリッドワークを機能させる上で、非常に重要なポイントです」(松岡氏)

 ハイブリッドワークをいかにビジネス成果、そして企業競争力につなげるか。働く場の形とともに、マネジメントの仕組みにまで踏み込んだ変革が求められている。

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