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生産性約4倍、EC売り上げは毎年50%増 「物流投資なくして、流通の成長はなし」アルペンのEC事業を支える物流ソリューションと“自動棚搬送ロボット”とは

スポーツ小売の大手、アルペンのEC事業が急成長している。そのEC事業の中核を担うインフラが、2018年にオープンした東日本フルフィルメントセンター。倉庫内を自動棚搬送ロボットが動き回る先端のロジスティクス拠点だ。このアルペンの取り組みをオペレーション、システムなどでトータルにサポートしているのが、アッカ・インターナショナルである。

EC事業の飛躍を目指し物流拠点を移転

 「スポーツをもっと身近に」とのパーパスを掲げ、スポーツ用品販売分野で存在感を高めてきたアルペン。グループ内には「アルペン」「スポーツデポ」「ゴルフ5」などの業態があり、スポーツ関連商品を幅広く扱っている。

 各業態を合わせた店舗数は約400。実店舗の多さも強みの一つである。その一方で、近年はEC事業にも注力している。2018年にはEC物流拠点を新設の「東日本フルフィルメントセンター」(千葉県印西市)に移転した。

アルペン
専務執行役員COO
戦略企画本部長
マーケティング本部長
店舗開発本部長
二十軒 翔

 その移転意図について話すのは、アルペン専務執行役員COOで戦略企画本部長、マーケティング本部長、店舗開発本部長を兼務する二十軒 翔氏である。

 「以前は愛知県の倉庫をECの拠点にしていましたが、将来的にEC事業の成長性が高いと考え、新たな拠点を検討しました。その当時のECの売り上げは数十億円でしたが、掲げた目標は100億円以上。ただ、事業を単に大きくするだけでは、コストが膨らみ利益は圧迫されます。できるだけ人手を介さない、生産性の高い物流センターを目指しました」(二十軒氏)

 この取り組みを進める上で、アルペンが選んだパートナーがアッカ・インターナショナル(以下、アッカ)である。

 アッカは東日本フルフィルメントセンターのオペレーション業務を受託しているほか、関連システムなども提供している。約7000坪の同センター内では、自動棚搬送ロボットが出荷商品の入った“棚”をピッキングのエリアまで運び、スタッフがモニターに映し出された指示通りに、棚から出荷商品を必要個数取り出す。この棚の移動に人手は全く介在していない。同センター内では最先端の物流オペレーションが展開しているのである。

段階的投資でEC事業は年々伸長
自動棚搬送ロボットは216台に

 東日本フルフィルメントセンターの稼働以降、「毎年平均約50%増」(二十軒氏)というペースでアルペンのEC事業は拡大している。当初56台だった自動棚搬送ロボットは、事業の成長により216台(22年3月現在)まで増えた。100億円という目標も突破した。

 「最初から100億円規模のキャパシティーを用意できないので、徐々に投資を積み増してきました。アッカからは、こうした段階的アプローチに対応した拡張性の高いソリューション提案がありました。それがアッカを選んだ決め手の一つでした。また、スピード感のある対応力、オペレーション面やシステム面でのサポートを含めてワンストップでサービスを受けられる点なども重要なポイントでした」と二十軒氏は振り返る。

 また、自動棚搬送ロボットについても複数を比較検討し、ギークプラス社のロボットを選定した。二十軒氏はこう続ける。

 「導入事例の倉庫を担当者が訪問し、ギークプラスの自動棚搬送ロボットを見学しました。その処理能力の高さを実感するとともに、ギークプラスの今後の成長も期待できるため採用に至りました」

 アッカのソリューションによる効果には、生産性とサービスレベルの両面があったと二十軒氏は話す。

 「以前の人手に頼ったやり方に比べて、ピッキングの生産性は約4倍に向上。1人が1時間にピッキングする商品数が、40~50点から約200点の約4倍に増加しました。また、当社は自社ECサイトの他にも、アマゾンなど複数のECチャネルを展開しているのですが、カスタマーレビューの評価も改善されました。過去には配達の遅さや梱包の問題を指摘されることが時々ありましたが、今では物流に起因する低評価のレビューはほとんどなくなりました」

 EC事業では平常時とピーク時の売上・出荷数の差が大きい。アルペンの場合、「店舗における平日・土日の差は2~3倍だが、ECではイベントがあるときなどは平常時との差が10倍以上にもなる」(二十軒氏)という。このような“波動”にいかに対応するかがEC事業の競争力を左右する。アルペンのように自動棚搬送ロボットで生産性約4倍を実現すれば、イベント時においてもわずかな人手を増員することで対応できるのである。

「物流の変革は極めて重要。
物流センターをより先進的にしたい」

  •  とはいえ、18年の東日本フルフィルメントセンター立ち上げ当初は苦労もあったようだ。

     「アルペンの取扱商品はピンポン玉のような小さなものから、大型のテントまで非常に幅広い。多種多様な商品をいかに効率的にハンドリングするかが課題でした」と語るのは、アッカ代表取締役社長の加藤大和氏である。

     例えば、棚に載せる商品を分類する基準である。最初は棚に載せられるもの/載せられないもので分けたが、ピッキング工程が渋滞して効率が上がらなかったという。そこで、素早くピッキングできるかどうかを基準に商品カテゴリーを分類し直し、商品を棚に入れる形に改めた。こうした改善を積み重ねることで、生産性を高めていったという。

     「お客様のビジネスに合わせて、当社の持つサービス群を組み合わせ、テーラーメイドで最適なソリューションを構築する。それが私たちのスタイルです。こうして、二人三脚でお客様のビジネス成長を目指しています」(加藤氏)

     アッカのサービス群の中の一つが、複数のECチャネルを統合管理する「ALIS(アリス)」というクラウドサービスである。

     「大きな在庫プールをすべてのECサイトが共有するので、『Aサイトでは売り切れ、Bサイトには多くの在庫がある』といった状態をなくし、全体の在庫水準を最適化することができます」と二十軒氏は話す。

     この22年春、アルペンは東京・新宿にアルペングループ史上最大の旗艦店舗「Alpen TOKYO」をオープンする。3700坪を超える国内最大規模の総合スポーツ専門店だ。同店舗では実店舗ならではの体験を提供するとともに、オンラインとオフラインを融合する様々なアイデアも検討されている。例えば、店舗で買い物をした顧客が自宅配送を希望すれば物流センターから配達されるといった施策である。この施策も足元の物流が強化されたからこそ実施可能となっている。

     「小売業にとって物流の変革は極めて重要です。物流投資なくして、流通の成長はなし。アッカをはじめとするパートナーと共に、その中核である物流センターを今以上に先進的なものにしていきたいと考えています」と二十軒氏は力強く語った。

     アッカの加藤氏は、22年4月から、ギークプラスの代表取締役に就任する(アッカ顧問を兼務)。アッカとギークプラスは共に、アルペンの最先端物流への挑戦を強くサポートしていく考えだ。

    今春開業する旗艦店舗「Alpen TOKYO」。全10フロアに各種スポーツ用品を展開し、イベントなどを通じて新鮮な体験を提供する
  • アッカ・インターナショナル
    代表取締役社長
    加藤 大和
    アルペンの自社サイト。また、アマゾン、楽天市場、PayPayモールなどにも出店し、すべてのECチャネルを統合管理している

ECのさらなる省人化を実現。ギークプラスの自動棚搬送ロボット
EVEシリーズ/P800R

  • アルペンの東日本フルフィルメントセンターには、ギークプラスの最新モデルとなる自動棚搬送ロボット「EVEシリーズ/P800R」が導入されている。同社の自動棚搬送ロボットの稼働台数は世界で約2万台、300以上の倉庫で活用されている。国内においても、ギークプラスの棚搬送型ロボット(AGV)は市場占有率76.9%、2018~20年の3年連続で国内シェアNo.1を獲得している(※1)。

    ギークプラスの自動棚搬送ロボットは導入が容易で、事業の成長に伴い柔軟に台数を増やして処理能力を拡張することができる。また、同社は24時間365日の遠隔サポートとシステムメンテナンスも提供している。アルペンの物流センターを含めて、EC分野では24時間365日で稼働する倉庫は少なくないだけに、こうしたアフターサービスも好評だ。とくに近年は物流現場での人手不足が深刻なだけに、省人化を実現するギークプラスの自動棚搬送ロボットへの期待度はますます高まっていると言えよう。

  • アルペンの東日本フルフィルメントセンターで稼働する自動棚搬送ロボット「EVEシリーズ/P800R」
    自動棚搬送ロボットがピッキングのエリアに出荷商品の入った棚を運ぶ。棚までの移動時間がまるまるなくなり、ピッキング数=作業効率は大幅に向上した
※1 出典:富士経済「2022年版 次世代物流ビジネス・システムの実態と将来展望」(2021年11月5日発刊):<倉庫ロボットシステム>調査

アルペン東日本フルフィルメントセンターで稼働する自動棚搬送ロボットの様子はこちら▼

二十軒氏/加藤氏