日経ビジネス電子版 SPECIAL
The essence 顧客体験の真髄
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DX JAPAN 植野大輔氏 アドビ 神谷知信氏 特別対談

真のDXに向けたマインド変革で顧客体験の臨場感を高める 真のDXに向けたマインド変革で顧客体験の臨場感を高める

デジタルが生活の中に定着したことで、顧客体験の重要性が高まっている。
この時代に、経営者はどこを目指し、どう自己変革すればいいのか。
DX JAPAN 代表の植野大輔氏とアドビ株式会社 代表取締役社長の神谷知信氏の対談から探る。

chapter1 顧客体験の革新に向け 自らを変革することが重要

―――日本企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)の現状や課題についてどう感じていますか。

DXは、ビジョンを持ち、ビジョンを戦略化し、そしてその戦略をプロジェクトとして推進するというステップがあります。しかし、今の日本企業からは、経営者には危機感があるものの、プロジェクトがなかなか進まない印象を受けます。日本企業はもともと、平時の改善やPDCAを得意としていますが、戦時の変革プロジェクトを一気呵成にやり切るのは、不得手かもしれませんね。

ビジネスモデルの変革で、短期に完璧を目指すのは確かにハードルが高いと思います。アドビも10年ほど前、ソフトウェア業界では先駆けてサブスクリプションに移行しましたが、短期に全部を変革するのではなく、やりながら変えていきました。小さくても、一歩前に進むことが重要です。

DX JAPAN 代表 植野大輔氏 DX JAPAN 代表 植野大輔氏

DX JAPAN 代表
植野 大輔

三菱商事(情報産業グループ)、BCGを経て、ファミリーマートにてマーケティング本部長、デジタル戦略部長を歴任後、2020年DX JAPANを設立し、複数の大手企業のDX推進を支援中。名古屋商科大学ビジネススクール(NUCB)客員教授。近著に『トランスフォーメーション思考 未来に没入して個人と組織を変革する』(翔泳社)。

もう一つ、DXについての本質的な考え方を見直す必要もあると思います。DXは、エリック・ストルターマンという学者が2004年に提唱した概念ですが、本来の定義は「技術によって社会のあり方を変革する」というもの、つまり外向きの変革です。ところが、企業でDXというと、業務効率化やコストカットのような内向きの変革の話に終始してしまう。DXの正しい意味合いは、デジタルで社会を変えるために、自ら自分達を企業変革するということです。

おっしゃる通りで、現代の消費者は高品質な顧客体験を求めているので、日本の企業もそれに合わせて自ら変革することが求められていると思います。

chapter2 顧客体験の重要ポイントは パーソナライズと臨場感

―――高品質な体験を提供するため、企業はどのように変わるべきでしょうか。

我々の日常生活にデジタルが当たり前に浸透し、デジタルを通じて企業とユーザーが常につながるようになりました。私も小売りのDXをやってきましたが、かつては店舗だけで完結していた購買体験が、スマートフォンを通じてコミュニケーションを取れるようになり、店舗外でどんな体験を提供できるかが重要になってきています。

個々の顧客と、いかに良好なコミュニケーションを築きロイヤルティのある顧客になっていただくかという視点が求められてきています。アドビのお客さまからも、顧客接点をデジタル化でどう解決するかというお問い合わせが非常に多いです。

売って終わりではなくて、むしろそこからがスタートということですね。最近ではユーザーコミュニティがあったり、フィードバックをサービス向上に生かしたり、様々な形がありますが、インタラクティブ性は重要だと思っています。企業と顧客というより、同志のような関係性ですね。

アドビ株式会社 代表取締役社長 神谷 知信氏 アドビ株式会社 代表取締役社長 神谷 知信氏

アドビ株式会社 代表取締役社長
神谷 知信

複数の大手外資系企業にて国内外のマーケティング統括や事業経営を経て、2014年アドビ入社。デジタルメディア事業統括本部バイスプレジデントとして、Adobe Creative CloudおよびAdobe Document Cloud製品の事業全体を統括。同社自身のパッケージ販売ビジネスモデルからクラウド、サブスクリプション化へのDXをリードした。21年4月に代表取締役社長就任。

―――そうした状況を踏まえ、押さえておくべきポイントはどのあたりですか。

顧客体験でポイントになるのはパーソナライズです。コンテンツもスキルも顧客ごとに異なりますので、個々にマッチした形でサービスを届けなければ満足していただけません。

DXというと、ふわっとしたビジョンを立てがちですが、顧客がどんな体験を求めていて、どんなことにワクワクするのか、ここを細部まで具体的に描けていると、目指す方向が明確になります。パーソナライズされた顧客体験の臨場感を持ちたいですね。

今後、仮想空間(メタバース)が当たり前になってくると、コンテンツの臨場感も重要になります。企業がコンテンツをパーソナライズし、適切に届けられるかどうかが問われていくと思います。

chapter3 経営者のマインド変革は 海外事例と若手登用が重要

―――真のトランスフォーメーションを遂行するため、経営者はどのようなビジネスマインドを持つべきでしょうか。

海外では最近は「デジタル」という言葉は用いず「AI」や「データ」といったより細かい要素に分解して具体論が議論されています。経営層のテクノロジーへの解像度が高いことに尽きると思います。

海外の先進事例を知ることは必須だと思います。アドビでも海外事例を多く提供してはいますが、現地に行って、臨場感を感じることも大変重要だと思います。

それから、経営者のマインド変革という点では、顧客体験をしっかりイメージすることが重要だと考えます。例えばメタバースは、若いデジタル世代の利用者が多く見込まれるため、彼らの視点や創造性を経営に生かすのは必須です。実は、アドビのビジョン「心、おどる、デジタル」も、20〜30代の若手を集めた広報プロジェクトから出てきたものです。

そういう風土があるのは素晴らしいですね。私は、企業変革は恐怖、危機感でやるものではなく、組織全体が“変わる歓び”を信じてこそ、力強い変革ができると考えています。若手を積極登用して、デジタルネイティブである彼らに見えている明るい未来を企業戦略に反映させていく取り組みは、現代の経営者にとって大きなヒントになるのではないでしょうか。

DXのあるべき姿は、デジタルで社会を変革することを通して、企業の収益が上がることです。アドビでは、Adobe Experience Cloudをはじめとする製品で、ビジネスをend-to-endで支える体制が整っています。この点はアドビの強みだと思っているので、ぜひご活用いただければと思います。

デジタル投資が、企業の未来を決定づけます。顧客体験を革新する取り組みを、アドビさんにリードしていただけると、日本のDXも明るくなるはずです。

DX JAPAN 代表 植野大輔氏、アドビ株式会社 代表取締役社長 神谷 知信氏 DX JAPAN 代表 植野大輔氏、アドビ株式会社 代表取締役社長 神谷 知信氏

アドビ株式会社https://business.adobe.com/jp/