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技術的難易度が高まるほど当社の優位性は増していく

携帯基地局の性能を評価するシステムの開発・販売などを手掛けるアルチザネット ワークス(証券コード:6778)。近年は5Gの商用サービス開始など通信インフラの 変革を追い風に業績を伸ばし続けている。同社の強みと今後の成長戦略とは。

合メーカーは世界で3社のみ

床次 隆志
床次 隆志とこなみたかし
代表取締役会長兼CEO

 「技術の難易度が上がり、もはや新規参入は考えにくい。業界における当社への期待はますます高まっていくはずだ」

 こう語るのは、東京証券取引所市場第二部に上場するアルチザネットワークス(証券コード:6778)の創業者で代表取締役会長の床次隆志氏だ。携帯基地局の性能を評価するシステムの開発・販売などを手掛け、NTTドコモ・NEC・富士通・Nokia・Huawei・ZTEといった移動体通信事業者や基地局メーカーを顧客とする。1990年の創業来、一貫して自社開発にこだわり、技術を磨き続けてきたことが今日の優位性をもたらしている。

 「創業当時はISDN の普及が始まった時期であり、通信インフラ事業への参入が相次いだ。しかし、3Gから4G/LTE、そして5Gへと移動通信システムが進化していくにつれて必要とされる技術力が高まり、多くのプレーヤーが撤退していった。創業から31 年を経た今、当社と同様のシステムを開発している企業は国内に存在しない。基地局試験機(テスター)において競合するメーカーは、アルチザを含めて世界で3社のみだ」

G製品の開発に成功し過去最高売上を更新中

 2020年3月より5Gのサービスがスタートし、その後も5G evolution(5G の高度化)を実現する技術の検討や標準仕様の策定が着々と進められている。

 現在4G/LTEと5Gの連携により実現されているノンスタンドアロンモードによるサービスは、今後5G単独での運用を可能とするスタンドアロンモードに置き換わり、さらにその先にはURLLC(超高信頼低遅延)による自動運転への応用なども期待されるところだ。

 通信インフラの進化はアルチザにとってのビジネスチャンスと同義であり、それは同社の業績にも表れている。2018年7月期は5G製品の開発投資がかさみ赤字決算となったが、開発に成功した19年7月期には黒字に転換。V字回復を果たし、21年7月期は創業以来最高売上を記録している(下図)。22年7月期も最高売上を更新する予定だ。「中期経営計画に掲げる『VISION2025』では、21年7月期比約2倍の売上高80億円を見据えている。数年以内に100億円も視野に入ってくるだろう」

株価と売上の推移
主要製品
etherExtractor NEO

ービス事業を強化し収益機会を拡大

滝沢テレコムテストセンター(2021年3月稼動開始)機器開発・販売に引き続き注力しつつ、同センターでのテストサービス拡大を目指していく

 さらなる成長に向けた布石はすでに打ち始めている。新規事業として、アルチザのコアコンピタンスである開発ノウハウをテスター以外の製品に応用するプロジェクトが進行中であり、22年7月期より通年で業績貢献する予定だ。加えて、サービス事業の強化にも取り組んでいる。

 「5Gもそうだが、6Gではさらに技術的難易度が上がり、当社が開発する製品もより高価になるだろう。販売だけでなく、サブスクリプションのような選択肢も加えることで収益の安定化を図っていく。
 また、基地局の性能評価を行う業務請負も差別化ポイントとなる。その一環として、2021年3月に『滝沢テレコムテストセンター』を立ち上げ、テストサービスの拡大を目指している。サービス事業に関しては、海外の競合メーカーよりも一歩早く進んでいる手ごたえがある」

外システムハウスのM&Aに挑戦したい

 海外の競合メーカーを意識するのは、グローバルビジネスの拡大も見据えているからだ。現在は国内の売上が大半を占めているが、将来的には海外売上を50%程度にまで高めたいという。
 「これまで多くの国を見てきたが、インフラの質の高さは日本がダントツだと思っている。水は美味しく、電力供給の安定性も群を抜いている。通信インフラも同様であり、地下鉄やビルの中で携帯電話がつながるのは当たり 前のことではない。

 当社はそうしたクオリティの一翼を担っている自負があり、高性能の製品・高品質なサービスが何よりも強みだ。 この点を差別化ポイントとし、海外の市場獲得に挑んでいきたい」
 喫緊の課題は、キャパシティの不足だ。通信インフラの進化に伴う需要拡大により多くの引き合いがあるが、そのすべてに対応しきれていないのが現状だ。受注を制限せざるを得ないボトルネックを解消するため、ハードウェア・ソフトウェアの技術者を積極的に採用しており、全社教育の強化を徹底している。
 「受注したくてもできないという状況は早急に改善しなければならない。好調な業績を背景に、当社には現在約60億円のキャッシュがある。この資金を生かしM&Aに挑戦したいとも考えている。
 グローバルビジネスを強化する狙いもあり、できれば海外のシステムハウスを買収したい。今後の事業展開を見据えれば100名規模の技術者確保が理想だ」

 現状のアルチザの従業員が155名(2021年7月31日現在:連結)であることを踏まえると大幅なリソース拡大であり、まさに攻めの経営に打って出る局面であることがうかがえる。 アルチザが技術者採用を強化する背景には、今後も自社開発にこだわりたいという思いもある。
 「日本国内の製造業の弱体化が言われて久しい。米中貿易戦争なるものが勃発しているが、『ものづくり』の安全保障は日本にとってたいへん重要な課題だ。情報通信インフラ機器は品質が重要であり、安いものを選べば良いというものではないだろう。
 『品質・技術力・創造性でお客様の満足を獲得する』ことが当社の事業目標だ。今後も、日本の通信インフラの発展に責任をもって貢献していきたい」

床次 隆志

株主・投資家へのメッセージ

 最先端の研究開発は日本のお家芸です。当社は今後も自社開発にこだわり、世界に誇れる通信インフラの構築に貢献してまいります。業績は好調で、過去最高売上を更新しているにもかかわらず、株式市場からの評価は期待ほどではありません。 当社の取り組みに共感をいただける投資家の皆さまに、ぜひご支援を賜りたいと考えています。

  • 株式会社アルチザネットワークス
  • 株式会社アルチザネットワークス
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