ESG債市場で圧倒的なシェアを誇るシティグループの実力

ESG債市場で圧倒的なシェアを誇るシティグループの実力

世界銀行 財務局 駐日代表 有馬 良行 氏 × シティグループ証券株式会社 金利商品本部 金利為替ストラクチャリング ESG業務共同責任者 ディレクター 安達 薫 氏

新型コロナウィルスの影響もあり、今後の世界経済の未来を左右する要素にもなると言われ、関心が高まっているESG投資。
グローバル金融機関として存在感を放つシティグループは、この分野においてもトップランナーだ。
そこで、シティグループ証券におけるESG業務のキーマンのひとりである安達薫氏と
世界銀行財務局の駐日代表・有馬良行氏にESG投資の現状を語ってもらった。

生保5社による共同方式で、
気候変動対策支援を投資のテーマ
とするESG債を組成

安達2022年4月に、世界銀行のサステナブル・ディベロップメント・ボンド(途上国の開発プロジェクト支援を使途とする債券)をシティグループが主幹事として、組成しました。生命保険会社5社(※朝日生命・住友生命・第一生命・富国生命・明治安田生命)の「共同方式」で購入をしていただき、気候変動対策を目的とするこのボンドは総額500億円ほどの規模になりました。

有馬開発途上国への気候変動対策支援を投資のテーマとした世銀債(サステナブル・ディベロップメント・ボンド)への共同投資は初めて、かつ大規模のファイナンスで、日本のみならず海外市場においてもインパクトが大きかったと思います。2021年11月に開催されたCOP26では、2025年までに年間1,000億ドルを共同で動員するという先進国の目標が達成されていないことが憂慮されました。以来、実施目標を早急に達成することが求められていたので、そんな動きを受けて安達さんにも何度か相談させていただきましたね。2021年9月に生保4社による共同方式で、世界銀行のグリーンボンドをシティグループに組成してもらいましたが、あの時が初の共同方式によるファイナンスで、それも注目されました。

安達前回のグリーンボンドは総額400億円ほどでしたが、今回はさらに1社増えて生保5社による共同方式で、総額も100億円ほど増えました。苦労はありましたが、前回の経験もあったので、各社の意向をまとめながら組成することができました。

安達 薫 氏

シティグループ証券株式会社
金利商品本部 金利為替ストラクチャリング
ESG業務共同責任者 ディレクター

安達 薫 氏

2016年にシティグループ証券入社。現在は本邦機関投資家向け債券の組成等を担当し、近年はESG債の案件を数多く手がけている。シティグループ証券への入社前は、三井住友銀行にて法人営業、SMBC日興証券及びSMBC Nikko Capital Markets Limitedにてサムライ債、ユーロ円債などの引受業務を担当。

有馬ESGに強いシティグループの存在は、我々世界銀行にとっては、非常に心強い。世界銀行は、これまで貧困の削減と持続的成長の実現に向けて活動してきました。我々の発行する債券は、すべて途上国に対する社会貢献のための資金として使われています。2008年のリーマンショックを経て、金銭的収益だけを追求せずに社会貢献のために投資すべきだという考えが世の中に広まり、我々の活動を後押ししてくれました。同年には「グリーンボンド」を発行し、新たなコンセプトを世界で初めて導入しました。気候変動対策に関連する債券はそれ以前にも散発的に発行されていましたが、「グリーンボンド」は新たな大きな流れを作りました。さらに2015年には、「ミレニアム開発目標2015」を引き継ぐ「SDGs2030」が、より分かりやすい形で発表されたことで、グローバルな社会貢献への関心が高くなり、一段とESG市場が注目されるようになりましたね。

安達本邦におけるESGの私募債市場は2019年頃では数百億円規模でしたが、2020年に急激に拡大し現在の市場規模は約3,500億円相当になり、弊社は過去3年で約35%のシェアを獲得するに至っています。2020年は新型コロナウィルスの影響で、新規の機関投資家が多く参入したことが市場拡大の大きな要因だったと思います。ESG私募債市場の活性化に伴い、我々としても市場規模の拡大に貢献し、よりシェアを拡げていきたいと考えています。

有馬 良行 氏

世界銀行 財務局 駐日代表

有馬 良行 氏

2000年に世界銀行入行。本邦資本市場における投資家へのIR活動全般を管轄、個別起債案件や新型世銀債の発行に関する各種サービス提供を行っている。世銀入行前は、東京銀行(現:三菱UFJ銀行)にて、米国債トレード・本邦企業の欧州市場での起債支援・社債管理会社業務・米国私募債引受業務等を手がけた。

安達先ほどお話しした2022年4月のサステナブル・ディベロップメント・ボンドや、前年のグリーンボンドにおいて共同方式による投資を実現し、日本の投資家のグローバル市場での存在感が高まってきました。これまで海外には日本の投資家もESGに尽力していることが伝わりにくかったので、日本のESG市場拡大に加えて、投資家のプレゼンスの向上を高めていきたいという思いが我々にはありました。今回も生保5社の共同方式でしたが、複数の投資家との共同方式にはこだわりがあったのです。グローバルで金利が大きく動き、生保各社様それぞれの事情もある中で、タイミングを調整する点では苦労もありましたが、共同方式を採ることにより大規模なファイナンスができました。

有馬本件は、海外における評判が非常に高かった。前世紀には、生命保険会社や信託銀行によるシンジケートローン等の形式で特定の業界から一括して資金をお借りすることもありましたが、その後日本での金融の自由化が進んでライバル同士である生保会社が同一目的のもとに同一の世銀債に共同投資いただくことは、市場慣行的にも難しかったと思います。大義のためには、競合相手という枠を超えて協力するという日本的文化の良さが示された事例であり、海外の投資家たちにも注目を集めたのだと思います。2021年にシティグループが組成されたグリーンボンドは「Environmental Finance」誌のグリーンボンド・オブ・ザ・イヤーを受賞しました。同形式の債券が日本の潮流になる可能性もあるし、海外の投資家が追従してくるかもしれません。金融業界にはリスクと金融収益のバランスを取りつつ、グローバルな社会貢献を追求していくことが、今後は一層求められると思うので、シティグループには大いに期待しています。

安達今回参加してくれた生命保険会社の皆様には、世界銀行を通じたファイナンスで開発途上国の気候変動対策に寄与したいとの思いが共通していました。それでも、取りまとめる過程には困難も多かった。投資家と密に連携しつつ、世界銀行とタイムリーに対話することが必要でしたが、双方の理解が得られたことで実現できました。苦労した甲斐もあり、充実感はありましたね。

開発途上国への気候変動対策は
待ったなし

有馬COP26でも確認された通り、気候変動問題への対策は全地球的に取り組んでいかねばなりません。1997年の京都議定書の発効以降、取組は継続してきていますが、近年ではより緊急性を増しています。特に開発途上国では海面水位上昇や津波被害を防ぐための堤防建設といった、人命にかかわるプロジェクトなどが多く求められています。

安達やはり、気候変動の影響をより大きく受けるのは開発途上国です。日本政府も本腰を入れて取り組んでいますが、地球規模ではまだまだ資金が足りないのが現実です。そういう意味でも、開発途上国の気候変動対策を支援する動きはまったなしで率先して進めていかなくてはならないと認識しています。

有馬その通りですね。実は、当初のグリーンボンド市場においてオピニオンリーダー的な役割を果たしてくれたのは地方銀行を中心とした日本の機関投資家なのです。10年前は、世界市場でのグリーンボンド発行は世銀グループがその大半を占めていましたが、その大半を購入していたのは日本の機関投資家と個人投資家です。日本市場は、その後のグリーンボンド市場の拡大のために極めて重要な役割を果たしてくれたのです。
 現在我々は、グリーンも重要ですがグリーンだけではなく「ビヨンドグリーン」を掲げてテーマを広げ、海洋環境問題・食品ロス問題・栄養不良問題等への対処を投資のテーマとする世銀債にも多くの日本の投資家の皆様にご投資いただいています。

シティグループが扱うESG債

有馬シティグループはESG債市場で存在感を発揮していますが、市場への参入は2018年頃からですよね。

安達はい。そこから比較的高いシェアを維持しています。2020年4月に新型コロナウィルスの猛威が本格化したタイミングで、コロナ対策を投資のテーマとしたいとのご要望を受けて、世銀債をスピーディーに組成したり、2021年3月には資金使途の一部がユニセフへの直接支援という特別な世銀債を組成しました。この時も有馬さんと一緒にやりましたね。

有馬ユニセフのスキームは世界初でしたね。一言でいうとユニセフを支援するファイナンスで、発行総額は1億ドルで、第一生命が大部分を投資してくれて実現したのですが、世銀債には極めて異例の「無格付け債券」でした。為替リスクと共に構造上の元本棄損リスクも小さくはなかったのですが、即決でご英断いただいた第一生命に敬意を表します。開発途上国の子供たちを支援するという世界規模の社会的貢献が投資の意思決定に極めて重要な役割を果たすようになったことを示すESG投資の成功例といえるでしょう。

シティグループ証券がアレンジした
ESG私募債 一覧

発行日発行体テーマ年限発行額クーポン 投資家アレンジャー
2018/03/13欧州復興開発銀行ヘルス・ボンド
中東欧、中央アジア、東南地中海諸国の医療サービスの向上
10年PLN317mil3.01%第一生命シティグループ証券
2018/05/15アフリカ開発銀行インテグレート・アフリカ・ボンド10年AUD60mil3.21%富国生命シティグループ証券
2018/05/30アフリカ開発銀行フィード・アフリカ・ボンド10年CAD60mil2.89%かんぽ生命シティグループ証券
2019/05/23欧州投資銀行クライメイト・アウェアネス・ボンド10年PLN1bn2.875%かんぽ生命シティグループ証券(Coordinating Dealer)JPモルガン証券(Joint Book-Runner)
2019/06/26国際復興開発銀行グリーンボンド
気候変動問題の解決に向けたESG投資の推進
10年MXN1.92bn7.07%第一生命シティグループ証券
2020/01/22国際復興開発銀行サステナブル・ディベロップメント・ボンド
障がい者支援への取組み
10NC3USD70mil2.059%富国生命シティグループ証券
2020/05/11国際復興開発銀行サステナブル・ディベロップメント・ボンド
新型コロナウイルス対策を含む保健医療プロジェクト等の取組みを支援
15年AUD150mil1.46%第一生命シティグループ証券
2020/05/15国際復興開発銀行サステナブル・ディベロップメント・ボンド
新型コロナウイルス感染症対策を含む保健医療分野への支援
15年AUD100mil1.40%住友生命シティグループ証券
2020/05/26欧州投資銀行サステナビリティ・アウェアネス・ボンド
新型コロナウイルス感染症対策を支援
10年AUD350mil1.40%かんぽ生命シティグループ証券
2020/09/09国際復興開発銀行サステナブル・ディベロップメント・ボンド
世界銀行の開発途上国の防災の取り組みに賛同
10年USD100mil0.78%信金中金シティグループ証券
2020/10/20国際復興開発銀行サステナブル・ディベロップメント・ボンド
グローバルな健康社会の実現に向けた栄養問題への取り組み支援
15年AUD150mil1.30%日本生命シティグループ証券
2020/11/30国際復興開発銀行サステナブル・ディベロップメント・ボンド
開発途上国におけるデジタルトランスフォーメーションの取組み支援
15年AUD70mil1.29%明治安田生命シティグループ証券
2021/01/28国際復興開発銀行グリーンボンド
グリーン・リカバリーを支援
10年AUD130mil1.16%かんぽ生命シティグループ証券
2021/02/01アジア開発銀行ヘルス・ボンド
アジア・太平洋地域の途上国における新型コロナウイルスワクチンの確保・供給等を支援
15年AUD125mil1.59%第一生命シティグループ証券
2021/02/05国際復興開発銀行サステナブル・ディベロップメント・ボンド
開発途上国の子どもの未来のための支援
15年AUD130mil1.58%明治安田生命シティグループ証券
2021/03/04国際復興開発銀行(Capital At Risk Program)チルドレン・ボンド
世界初のユニセフ支援債への投資を通じてコロナ禍での子供たちの命と健康を守る活動を支援
5年USD100mil1.291%第一生命(一部海外で販売)シティグループ証券
2021/03/05米州開発銀行サステナブル・ディベロップメント・ボンド
中南米・カリブ海諸国における自然資源の持続可能な利用に取り組む産業への支援
10年AUD130mil1.505%明治安田生命シティグループ証券
2021/05/18SNCFグリーンボンド
グリーン・リカバリーを支援
10年USD100mil1.85%かんぽ生命シティグループ証券
2021/06/11米州投資公社トランジション・ボンド
中南米・カリブ海諸国における脱炭素社会への移行を支援
10年USD100mil1.69%明治安田生命シティグループ証券
2021/09/10アジア開発銀行ブルーボンド
アジア・太平洋地域における海洋環境の改善に向けた資金供給
15年AUD208mil1.80%第一生命シティグループ証券
2021/09/30国際復興開発銀行グリーンボンド
開発途上国の気候変動対策を支援
15年AUD274mil1.78%住友生命
第一生命
シティグループ証券
15年NZD241mil2.41%日本生命
富国生命
2022/02/04米州開発銀行サステナブル・ディベロップメント・ボンド
人権、ジェンダー平等推進に向けた取組支援
10年AUD180mil2.31%明治安田生命シティグループ証券
2022/02/10米州開発銀行サステナブル・ディベロップメント・ボンド
ジェンダー平等と多様性に関する取組み支援
15年AUD16mil2.56%大樹生命シティグループ証券
2022/04/26国際復興開発銀行サステナブル・ディベロップメント・ボンド
世界銀行の気候変動対策のための包括的な取組みを支援
8年AUD516mil3.28%朝日生命
住友生命
第一生命
富国生命
明治安田生命
シティグループ証券
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シティ調べ
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ブルームバーグ等ベンダー、発行体/投資家のウェブサイトで確認できる案件を掲載

有馬ESG投資においては、その資金使途が最も重要なポイントの一つですが、資金使途を限定すればするほど、投資家が負うリスクが高くなってしまいます。世銀に限らず、銀行の重要な社会的機能は融資するプロジェクトのリスクと資金の出し手(預金者や銀行債券投資家)を切り離すことです。この「投資家保護機能」があるがゆえに、特定の定期預金や特定の債券の資金を特定のプロジェクトや国の融資資金として割り当てることは財務構造上できません。特定のプロジェクトが破綻してしまった場合、その融資元利金棄損のリスクは銀行が取るもので、投資家が取るものではないからです。世銀は気候変動対処を含めた様々な分野に十分な融資残高を有しており、これらの分野への支援を投資のテーマとすることを世銀債が実現します。これにより、投資家が負うリスクを抑えつつ、ESG投資を拡大することが可能と考えています。

安達今回のボンドでは、投資家のご要望を聞いて調整し、金利水準にはご満足をいただけたと考えています。いつ出てくるかわからない公募債とは異なり、時期が読めることで私募債には安心感もありますしね。ESGにしか投資してはいけないとなりつつある欧州と比べると日本やアメリカではまだまだESG投資に拡大の余地があると考えています。そういう意味では今回の案件によって、債券によるESG投資が本邦市場に更に浸透することを期待しています。

徹底したESG教育を全社的に進め、
他社をリードするシティグループ

安達弊社は2018年からESG私募債市場に参入しましたが、投資家の方にどんな質問をされても答えられるように、啓発活動には相当に力を入れました。ESG債を提案、組成する役割を担う私だけでなく、債券営業担当者のESG債の知識も圧倒的に高く、この点は競合他社に負けていないと思います。日本でもESGのプロジェクトチームを立ち上げ、全社員に対するESG教育を始めています。過去3年間の本邦におけるESG私募債市場で約35%のシェア獲得(シティグループ調べ、プレスリリース等で投資家名が開示されている案件を集計)に至った要因だと思います。

有馬シティグループには仕事を通じて社会に貢献したいという高い志を持った若い社員が非常に多いという印象があります。そんな若い人の倫理観を実現させたいというコーポレートポリシーを感じられますので、今後もESG市場を大いにけん引していっていただきたいと思いますね。

安達シティグループはESG私募債の市場拡大に貢献してきたと思っています。国内公募債市場でESG債は昨年2.9兆円程度でしたので、シティグループとしては、ESG私募債を年内に5,000億円に、将来的には1兆円、2兆円というところまで伸ばしていきたいと思っています。現状では生保が中心になっていますが、銀行セクターなどほかの機関投資家の間にも広げていくように目指してやっていきたいです。

(企業名・機関名敬称略)

シティグループ証券株式会社

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