日経ビジネス電子版 Special

持続可能な地球環境と
社会の構築をめざし
イノベーションを推進

「社会の移行」の促進に
向けて
さらなる提案、
情報発信を続けていく

CRDSでは持続可能な地球環境と社会の構築に向けて4つのキーワード「ネットゼロエミッション(緩和)、アダプテーション(適応)、レジリエント(強靭)、サーキュラー(循環)」を提示している。その内容について中村氏は「『ネットゼロエミッション』は温室効果ガス排出の実質ゼロ、すなわちカーボンニュートラルを意味しています。これに関しては、大気中に蓄積されたCO2を除去するネガティブエミッション技術に現在注目しています。『アダプテーション』と『レジリエント』に関連するものとしては気候予測が重要です。気候変動の影響が深刻化する中、従来の天気予報や気候変動予測ではカバーできない数週間から10年規模の時間スケールの近未来予測が重要になると考えています。『サーキュラー』に関してはCO2の資源化技術や、マイクロプラスチックや海洋プラスチックごみに関する問題に注目して調査分析を実施してきました」と解説する。

カーボンニュートラルの実現にはサーキュラー、つまり循環型社会の考え方が不可欠だ。一方で緩和策を講じる中でも温暖化は進行するため、気候変動への適応にも同時に取り組む必要がある。また気候変動適応と強靭な社会構築は近い考え方でもある。これらのキーワードは互いに関連性を持っているため、一体的に取り組む必要があると同センターは考える。

持続可能な地球環境と社会の構築に向けて必要なキーワード

持続可能な地球環境と社会の構築に向けて
必要なキーワード

また、同センターが掲げるもう一つのキーワードとして、「社会の移行(トランジション)」がある。「以前からネットゼロエミッションやアダプテーション、レジリエント、サーキュラーといったテーマはありましたが、最近、社会の変化を求める雰囲気がこれまで以上に強まっていることを実感しています。トランジションをどう進めるかについては、“これまで社会を構成してきた要素を新たなものに置き換える”、“社会の中のシステムそのものを刷新する”、“従来からあるものに新たな価値を付与する”といったアプローチが考えられます」(中村氏)。

中村亮二 氏 国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)研究開発戦略センター(CRDS)環境・エネルギーユニット ユニットリーダー

気候予測はトランジションを進めるうえで重要な研究開発テーマだ。温暖化に伴う極端気象災害の発生頻度や強度は今後強まっていくと見られており、社会のさまざまな部分に深刻な影響を及ぼす可能性が高い。企業は気候変動が与える影響を把握して経営戦略に反映させる必要があるため、中長期的な気候予測のニーズが高まっている。どのくらいの精度で、どのような予測があればいいのか、同センターでは、研究開発課題の提案と並行して、ステークホルダーが集まって議論する場をつくることも大切と考え、ワークショップ開催などの働きかけも行っている。

トランジションのための研究開発テーマ例:課題,研究開発トランジションのための研究開発テーマ例:課題,研究開発

トランジションのための研究開発テーマ例

一方、最近の傾向として中村氏は、日本企業が共同研究の相手先として海外の大学、研究機関を選ぶ機会が増えていることを指摘した。「エネルギー分野で日本の企業、とくに製造業が強みを維持していくためには、大学や研究機関における基礎、基盤的な研究を強化する必要があると思います。優れた研究機関をパートナーにすることは重要ですが、そこで日本の大学や研究機関が選ばれにくくなっているのは憂慮すべき状況です。こうした状況を短期間で変えることは簡単ではありませんが、産学双方がどのような問題意識を持って研究現場にいるかの理解を深め、どうやって国全体の研究力を底上げしていけるかを考えていくべきでしょう。また具体的なテーマの下に集える場や機会を作ることも大切です。たとえば、複雑な流れ、すなわち流体に関する科学が重要なテーマであるという戦略提案を作成し発信したところ、新たなJSTプログラムのテーマに採用され、2021年度からスタートするに至りました」(中村氏)。

CRDSでは、科学技術に関わるさまざまな分野で起きている新しい動きや課題を広く社会に伝えるために今後も調査・分析を進めるとともに、多様なステークホルダーと協働して実現に向けた取り組みを行う予定だ。“信頼されるナビゲーター”として持続可能な地球環境と社会の構築をめざす、同センターの活動に注目が集まっている。

研究開発戦略センター(CRDS)
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