日経ビジネス電子版 Special
vol.1
大企業から3000億円の事業を創出する

DI式、失敗しない
事業創造の極意とは

ドリームインキュベータ
代表取締役社長COO
三宅 孝之

コロナ禍に加え、不安定な世界情勢や円安による市況混迷が続く今、企業は抜本的な改革を迫られている。その打開策の一つとして、大企業においても機運が高まっているのが事業創造だ。その背景や、失敗しない事業創造の実践方法について、戦略コンサルティングや事業創造支援などで、業界を超えるコンサルティングを手掛けてきたドリームインキュベータ(以下、DI)の代表取締役社長COOである三宅孝之氏に詳細を聞いた。

失われた20年を経て
高まる事業創造への機運

 DIが大手企業の事業創造プロジェクトに本格的に着手を始めた2000年代の後半頃、大企業が事業創造に割くリソースはわずかなものだったという。「当時の日本企業にも、事業創造に関する部署はありましたが、その存在感は限りなく薄かったです。世界トップクラスの技術や人財、資金などあらゆる面で有利であるにも関わらず、新しいものを何も生み出せていない非常にまずい状況だと考えていました」と三宅氏は振り返る。

ドリームインキュベータ
代表取締役社長COO
三宅 孝之

 そもそもこの背景には、日本企業が長きにわたり築いてしまった、組織の“非イノベーション”構造が根底にあったと三宅氏は言う。「1950年代は、戦後復興を背景に全社員がイノベーター精神を持ち、創業からの成功体験を積んでいました。それが1970年代になると高度経済成長期によってルーティンでも事業拡大ができる時代になりますが、1990年代にはバブル崩壊と創業世代のリタイアが重なります。ここでイノベーションの成功体験がない世代が管理職となり、安定重視の着実な発想が進みました。2010年代になるとその傾向はさらに加速し、危機感はあっても成功体験のない『リスクの取り方がわからない』世代がトップマネジメントや管理職となります。この結果が、いわゆる“失われた20年”です」。

 しかし近年、日本の大企業においても、マインドセットに大きな変化が起きていると三宅氏は話す。「日本の経営者の皆様の関心事項は、過去10年で変わってきています。従来的な売上拡大やコスト効率・収益性向上など以上に、株主価値向上やガバナンス強化の方法を模索されています。さらにそれに勝る勢いで関心が高まっているのが、事業創造です。上場企業のうち8割以上が事業創造体制を整備しつつあります」。

「事業創造」の経営トップアジェンダ化が加速

1)一般社団法人日本能率協会が毎年発行する“当面する企業経営課題に関する調査”を基に集計。
  毎年、500社程の大企業及び中小企業の経営者が、最も大きいと感じる課題を3つ回答
2)新製品・新サービス・新事業の開発、デジタル技術の戦略的投資などを含む
3)東証プライム上場企業のうち、2021年3月期売上トップ100社
4)新規事業の企画・推進を専業とする独立部門の数。“事業を創造するもの” に限定し、事業化の手前の技術イノベーション/シーズ創出を企図する部門(研究開発等)は対象外
出所:日本能率協会「当面する企業経営課題に関する調査」、各社プレスリリース/組織図

 一方で、事業創造への関心があっても、少なくない企業が“成功への筋道”を描けていないようだ。「そもそも何を始めたら良いかわからず『アイデア勝負』になってしまったり、事業の創造や維持自体が目的化してしまい『新しい柱となる事業を育てる』という本質的目的を見失ってしまったりと、まだまだ事業創造の“あるべき姿”を構想できていないケースが見受けられます。しかしロジカルな戦略を立てることで確実に、大企業でも数百億円、数千億円規模に育つ、社会を変えることのできる事業を創出することが可能です」(三宅氏)。

 では具体的に、事業創造とはどのように取り組んでいけば良いのか。DIが培ってきた手法を基に見ていきたい。