日経ビジネス電子版 SPECIAL

部門トップと二人三脚で人事戦略策定 HRBPを導入した富士通が目指す未来

グロービズ×富士通 SPECIAL INTERVIEW

事業部門トップの重要な参謀役として、部門の人事戦略を二人三脚で策定するHRBP(ヒューマンリソースビジネスパートナー)。ビジネス環境の変化に柔軟に対応するため、人事の権限を各事業部門に委譲している海外企業では当たり前のポジションだが、日本では導入例が少ない。ジョブ型人事制度への転換とともに、それをいち早く導入したのが富士通だ。人事のあり方を抜本的に見直し、HRBPを輩出する仕組み作りに取り組む同社の狙いについて聞いた。

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事業環境の目まぐるしい変化とともに
高まるHRBPの重要性

HRBPというポジションは、日本ではあまりなじみのないものだ。「人事(HR)のビジネスパートナー(BP)」という言葉が表す通り、事業本部長などのパートナーとして、人事戦略を策定する重要な役割である。

組織作りや、配置すべき人材の採用・育成といった人事に関する高い専門性を備えていることはもちろん、配属された部門の事業戦略、さらには会社全体として経営戦略も総合的に理解した上で、事業部門トップによる人事戦略作りを補佐する。

「欧米では当たり前に配置されているポジションですが、最近は日本でもHRBPを育成・配置する企業が増えています。その理由として事業環境の変化が目まぐるしくなり、事業部門ごとの組織や人材配置も、スピード感を持って変え続けなければならなくなっていることが挙げられます」と語るのは、人材育成・組織開発のプロフェッショナルとして様々なソリューションを提供する、グロービスのマネジング・ディレクター 西恵一郎氏である。

西 恵一郎氏

変化のさまや、スピードは事業によって異なるので、従来のように「欲しい人材」を人事部門に求めるやり方では追いついていけない。事業部門のトップが自ら戦略に適応する組織を作っていくのが今の時代のニーズだ。

「とはいえ、事業部門のトップは人事のスペシャリストではないので、どうしても人事戦略を策定するための参謀役が必要となります。つまりHRBPは事業部門のトップに対して、CEOを補佐するCHRO(最高人事責任者)のような役割を担うわけです」と西氏は説明する。

日本企業の中でも、いち早くHRBPを導入した企業の一つが富士通である。同社は2020年4月、国内グループの管理職を対象にジョブ型人事制度を導入しているが、これに合わせてHRBPの育成と配置を開始した。

その経緯について、「ジョブ型人事制度の導入目的に沿って、社内の各ビジネスグループや事業本部が戦略を実現するための組織・体制の構築、また制度の浸透・運用などを支援するために、HRBPを新設しました」と語るのは、富士通のCHRO 平松浩樹氏である。

そもそも富士通がジョブ型人事制度を導入したのは、最適な人材が、最適なポジションにアサインされ、活躍できる会社にしたいという狙いがあるからだ。

「これを事業部門の側から見れば、激変する時代において、どのように自分たちのビジネスを変革していくのかを考え、それを担うのにふさわしい人・組織を作っていくのか、ということになります。そこで、ジョブ型人事制度の導入とともに、人事戦略についても、事業部門トップに権限を委譲し、自らの裁量で部門の変革やイノベーションに必要なケーパビリティを備えた人材を獲得、育成させる方針に移行しました」と平松氏は説明する。

もちろん、各事業部門のトップは人事に関しては専門外のため、ただ権限を委譲するだけでは、必要な人材を獲得することはできない。そこで富士通は、ビジネスグループ長や事業本部長に寄り添って人事戦略の策定や執行を補佐する役割として、HRBPを設けることにしたのである。