桔梗原 そうした問題を解決するには、どのようなアプローチが有効なのでしょうか。
中山 当社としては、内製化の延長としてインドのリソースを活用するオフショアリングを提案しています。いまやインドは世界のテクノロジーセンターとなっており、IT人材が多いのはもちろんのこと、世界的にメジャーなソフトウエアの多くが実はインド企業によって開発されており、オフショアセンターも大規模なものがそろっています。
桔梗原 確かにインドは親日家が多く、日本企業との相性もよさそうです。十数年前にインドへのオフショアブームがありましたが、そのころと比べて何か変化はありますか。
中山 そのころとは状況が大きく変わっています。インドは英語ができる人が多いということもあり、アメリカやイギリスを中心にオフショア活用が進んできました。その結果、この10~20年の間で大きな飛躍を遂げています。オフショアには最先端かつ膨大なITリソースが存在し、それを活用することは大きなアドバンテージにつながります。
桔梗原 そのインドのリソース活用において、御社はどのような貢献を果たせるのでしょうか。
中山 まず、HCLはインド国内に大規模なオフショアセンターを持っており、そのリソースを使うことができます。自らキャプティブセンターを立ち上げる場合には、まず場所を探して人を集め、様々なレギュレーションの問題を解決しなければなりません。当社のセンターを活用すれば、場所を探す必要はなく、そこで活動する人材もこちらで用意できます。自社の看板を掲げれば、すぐにキャプティブセンターが設置できるのです。もちろんセキュリティ面も万全で、日本本社とのコミュニケーションは当社の日本人スタッフが担当します。
桔梗原 グローバル展開に伴うIT基盤の統合という点ではいかがですか。
中山 グローバルでの標準化・共通化をしっかりと支援します。それに加えて、グローバルでSAPを展開している、もしくはこれから展開することを計画しているのであれば、そのお手伝いも可能です。日本企業の多くは、2025年の崖を越えるためにSAP ERPをどうするのかという問題を抱えています。HCLは世界に約20万人の従業員がおり、世界52カ国でビジネスを展開しています。日本企業が進出している国や地域は、ほぼすべて網羅しているのです。
SAPのグローバルロールアウトというと、日本側である程度の計画を立案した上で、各国個別に展開作業を行うケースが多いと思いますが、当社ではまずオフショアセンターにグローバルのコアチームを作り、そこから各国に展開するという方法を提案しています。この方法は、中核となるチームをオフショア化することでコストが下がるというだけではなく、プロジェクトのガバナンス面でも有利です。日本本社による全体のガバナンスに加え、オフショアセンターから各国へ、標準化・統合化・プロジェクト推進の観点からのガバナンスを利かせられるからです。
これならば、日本側のIT人材に制約があっても、効率的にロールアウトを行えます。同様の手法で、Microsoft 365を活用したコミュニケーション基盤のグローバルロールアウトも、効率的に進めることが可能です。