


デジタル化を進め「営業DX(デジタルトランスフォーメーション)」に取り組む企業が増えている。中堅・中小企業ならではの営業活動の最適化、営業DXの捉え方や社内での定着法について、カイロスマーケティングの佐宗大介氏による講演をレポートする。
リアル営業の良さを生かしたままデジタルに乗せるそんな中、中堅・中小企業の営業部門で課題となっているのが、営業リソースの不足、顧客との面会がオンラインに切り替わったことなどの変化だ。だからこそ営業DXが注目を集め、多くの企業が解決法を求めている。
創業から約10年、営業DXという領域で事業を営んできたカイロスマーケティングで代表取締役を務める佐宗大介氏はインパクトある発言を残した。
「営業DXといいながら、全てをDXしてデジタルにシフトすべきではないと考えています。直接顧客と話すといった今までの営業手法(リアル)の良いところはそのまま生かし、その手法をデジタルに乗せていくことが、中堅・中小企業にとっての営業DXの基本ではないでしょうか」
この“リアルをデジタルに乗せる”という営業DXの捉え方が意味するのは、「営業の行動数を増やすこと」「見込みの高い顧客にはリアルでアプローチすること」である。リアル商談の強みは、メルマガ配信やオンライン面会などよりもコミュニケーションの質が高いこと。顧客と対面かつ個別で商談が開けるケースでは勝率を高めたい。

営業リソースが足りないという課題に対しては、新規の見込み顧客を獲得する際には、メルマガ配信などに使われるMA(マーケティングオートメーション)ツールをはじめとしたデジタル技術を活用し、営業工程の一部を自動化することで、リソース不足を補うことの必要性を指摘する。
営業の基本は行動数。顧客との接触回数を増やす営業の行動数を増やす理由(図1)は、①技量による営業成績の差は案外小さい②失注は自社でコントロールできない③決裁者にはなかなか会えない、の三つ。①について、佐宗氏はこのように説明する。

「契約数を増やすには、属人的なテクニックやスキルといった営業担当者の質の向上が重要になるうえ、時間とコストがかかります。それよりもシンプルに、営業の行動数を増やす方が効率的に契約数を伸ばせます」
②③については、あくまでも顧客都合によるものなので、改善案を考えるよりもできることに注力する方が合理的だと考えましょうと述べる。
「SFA(セールスフォースオートメーション)のような、営業活動を可視化するツールを導入すると、トップセールスとそうでない人の違いが明確になります。成約率の違いはトップセールスで3割程度、売れない営業でも1割は売れます。より大きな違いは行動数に表れており、どなたも過去の経験からうなずけると思います」
営業活動の可視化という点では、日報や週報を挙げる経営者は多い。一方で「営業は自分のやったことしか書かない」という問題を佐宗氏は指摘する。
「営業日報では、やっていないことは書かれていないので、営業部門のマネジャーが日報を眺め何かを指摘しても、活動の質はなかなか変わりません。そこで、SFA+ToDoを活用して、やっていないことを可視化するわけです。営業日報・週報をToDoリストに変えれば『やるべきこと・やれていないこと』が一目で分かります。ToDoリストに挙げられた『やるべきこと』を一つずつ確実にクリアすることは、行動数を増やすことにつながります」
シンプルな手法だが、その効果は同社自らが実証している。
「当社は過去に何度か新規顧客の獲得数が伸び悩んだことがありました。そこで、営業プロセスから『やるべきこと』を洗い出してToDoリストをつくり着実に実行することで、右肩上がりの成長軌道に戻せました。この経験を踏まえて、ToDoリストは当社が開発した『Kairos3』のSFA機能の主軸に置いています」
見込みの高い顧客にはリアルでアプローチをかける同社が開発した『Kairos3』は、営業の商談の勝率を上げるためのクラウドサービス。「営業活動を見える化し営業担当者の行動管理を助ける」ツールと「顧客情報を基にした営業活動の効率化を支援する」ツールという、2つの機能で構成されている。両方の機能が連動することで、営業担当者の行動数の確保、商談の勝率が高まる。
目指すのは安定的な収益の確保、その手法として商談の勝率を上げること。具体的には、行動数を増やしながら見込み客の見極めをツールに任せ、重要な事案に営業担当者の行動数を集約するというもの(図2)。これが佐宗氏のいう“リアルをデジタルに乗せる”ことの本質である。

顧客の“今”を知ることで営業の行動数が増えるツールの使い方で分かりやすいのは、顧客情報を登録するという作業。部門ごとの情報だけでなく展示会やセミナーで得た見込み客のリスト(エクセルで管理されたもの)をクラウドにアップロードするだけで重複のない顧客リストが出来上がる。
「この顧客リストに対して、Kairos3からメール配信やメルマガ配信が可能です。受信者一人ひとりがいつメールを開封したか、その前後でWEBサイトのどこをチェックしたか(オンラインでの行動)が分かるようになります。そして、顧客ごとにアクションを自動で集計しランク分けします。送信した情報に対する反応頻度やアクション履歴などから関心の高さを判定しランク分けまでを自動で行いますので、良質な営業アタックリストが出来上がる仕組みになっています。シンプルにいうと、顧客の「今」を知り、適切なタイミングで、適切な営業アプローチを手助けするツールなのです」
仮にランクが低くとも配信した情報に反応すればランクは自動的に上がっていく仕組みとなっている。毎日ランクをチェックしながら、時期を見て高いコミュニケーション機会を設ければ取りこぼしが減るという営業手法にも使えそうだ。営業担当者は画面上のToDoリストをこなすだけで行動数が増え、安定した収益の確保につながる一歩を踏み出せる。
「アクションが多い=見込みの高い顧客とするなら、その顧客へのアプローチを、デジタルからリアルに切り替える方がより良い結果につながると考えています」