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加速するスタートアップの台頭 共創を成功に導くための条件とは

自動車新時代を迎えようとする昨今。
クルマの電動化はその象徴として、業界の産業構造自体に多大な影響を与えようとしている。
自動車関連コンテンツの制作を専門とするオートインサイトの鶴原吉郎氏に詳細を聞いた。

今、自動車産業は100年に一度の変革期にあると言われている。そのキーワードになっているのが「CASE」だ。CASEは「Connected(コネクテッド)」「Autonomous(自動運転)」「Share & Service(シェア&サービス)」「Electric(電動化)」の頭文字をまとめたもので、今や世界の完成車メーカーが変化の代名詞としてこの言葉を使うようになった。

今中でも現在、急速に進んでいるのがEの電動化である。世界のEV(電気自動車)とPHEV(プラグインハイブリッド車)の販売台数の合計はEV Volumes.comの調査によれば2020年の324万台から、2021年は2倍近い640万台に伸びたと見られている。欧州や中国の完成車メーカーを中心にEVの品揃えが充実する一方で、各国がEV販売を後押しする補助金の支給や税制優遇策を導入している影響が大きい。エネルギー関連の調査会社であるBloombergNEFの予測では、世界の自動車販売に占めるEVの比率が2030年に3割以上を占めるようになるという。

電動化は単なるエンジンの置き換えではない

クルマの電動化の進展は、単にパワートレーンをエンジンからモーターや電池に置き換えるのにとどまらず、産業構造に大きな地殻変動を起こす可能性がある。例えば、スマートフォンなどIT機器の製造を手掛けてきた大手EMS(Electronics Manufacturing Service)企業や、スタートアップ企業などが活発にEVプラットフォームの開発・製造に参入してきている。

これまで完成車メーカーはクルマの開発、製造から販売網の構築までを一貫して手掛けてきた。しかし、EVプラットフォームを供給する巨大企業が出現すれば、自動車産業で企画・開発と製造の分離という「解体」が進む可能性がある。今のところ、こうした「開発」と「製造」の分離に関して、既存の完成車メーカーは極めて懐疑的に見える。というのも、「人の命を乗せて走る工業製品」である自動車は極めて高い安全性が要求され、それを担保するために完成車メーカーと部品メーカーのすり合わせによって高い信頼性を確保してきたからだ。

しかし、今後クルマのEV化や、自動運転車を使った移動サービスの実用化に伴って、IT産業などの異業種から自動車産業に参入する動きは加速すると考えられる。異業種の企業は車両の製造ノウハウを持っていないし、そもそも車両を製造することにそれほど興味を持っていないだろう。車両製造というビジネスは、IT産業から見ると利益率の低いビジネスであり、魅力に乏しいからだ。車両製造は外部の企業に任せたいと考えるとするならば、今後も車両製造の製造請負に対するニーズは高まる一方だろう。

また完成車メーカーでは、自動運転のソフトウエアを外販したり、ユーザーにサービスを提供するためのクラウドプラットフォームを他社にも提供したりする動きが広がっている。つまり自動車産業の分野でもIT産業と同様に、「プラットフォーマー」になろうとする動きが広がってきているのだ。こうした「開発と製造の分離」や「プラットフォーマー化」は、自動車産業の「稼ぎ方」が今後は大きく変わる可能性があることを示している。

これまで自動車産業では「クルマを造って、売る」というシンプルなビジネスモデルが100年以上変わることなく続いてきた。100年に一度の変革の中で、そのビジネスモデルは大きく揺らいでいる。しかし、大きな変化は大きなビジネスチャンスでもある。積極的に自らのビジネスモデルを破壊し、新たな時代に合わせて再構築できた企業だけが、自動車新時代に生き残ることができるだろう。

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