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加速するスタートアップの台頭 共創を成功に導くための条件とは

大きく変化を続ける社会情勢の中で、企業が競争力を維持するには、外部のリソースをいかにうまく活用するかが重要になる。
コロナ禍で加速したDXの影響もあり、スタートアップ企業と事業連携する大企業がさらに増えている。
自前主義から脱却し、オープンイノベーションを成功させるポイントとは。
大企業から中小企業まで日々取材を重ねるライフメディアの尾越まり恵氏が解説する。

ビジネスモデルも人々の働き方も大きく変化した2020年からの2年間。改めて、自社の存在意義を見つめ直し、経営戦略を練り直した企業も多いだろう。

KPMGコンサルティングが2021年7~8月に主要企業のCEO1325人(うち日本企業100人)を対象に実施した「KPMGグローバルCEO調査2021」によると、62%のCEOは世界経済の成長見通しに自信を示しており、コロナ拡大前と同水準まで回復している。想定外のパンデミックに直面しても、多くのCEOが果敢にチャレンジを続けてきた姿がうかがえる。

M&AやESG関連投資など、描く成長戦略は企業によって異なるが、中でもやはり避けて通れないのがDXだ。在宅ワークやサテライトオフィスなどで従業員の柔軟な働き方を可能にし、かつパフォーマンスを最大化できるような環境づくりが求められているのはもちろん、BtoB、BtoCのビジネスに関わらず、従来の売り切りモデルではなく、商品やサービスを購入した後の顧客の成功に寄り添う考え方「カスタマーサクセス」が重要視されるようになった。顧客のニーズや行動モデルなどの必要な情報を入手し、顧客接点をつくるためにも、デジタル戦略は必要不可欠となっている。

互いの強みを掛け合わせて、競争力を加速

ただ、必要性は理解できても、スピードやセキュリティー面などの安全性を担保しながら、デジタル戦略を推進するのは容易ではない。経営者はヒト・モノ・カネの采配を求められるが、特にデジタル人材の確保には多くの企業が苦労している。そこでポイントとなるのが、他業種やスタートアップなどと協業する「オープンイノベーション」だ。

前述の調査でも、約7割のCEOが「DXのスピードの維持には新しいパートナーシップが必須」と回答している。また、「KPMGベンチャー投資パルスレポート」によると、2021年第3四半期におけるベンチャーキャピタルによる投資総額は、グローバルで過去最高の1717億ドル、日本でも約14億ドルを記録しており、さらなる成長が見込まれている。

その背景には、DXの発展によってスタートアップ企業でもスピーディーかつ低コストな応答が可能になったことが一因としてあげられる。さらにはクラウドファンディング型など資金調達方法の多様化や、コロナ禍で浮き彫りになった行政の課題を解決するための「GovTech(Government×Technology)」の台頭などもあるだろう。

ブロックチェーンから生まれた技術「NFT(非代替トークン)」や「メタバース」、「GNSS(全世界測位システム)」など、今注目のテクノロジーの多くはスタートアップ企業が発端となっている。また、今後、遠隔医療の現場実装に期待が寄せられている医療業界や、高齢化に立ち向かう介護業界など、スタートアップのビジネスはSDGs、ESGといった社会課題との親和性が非常に高い。課題解決型ビジネスに多くの資金が集まりやすいのが近年のスタートアップ企業の特徴だ。

これらのスタートアップと上手く事業を進めていくには、大企業がまずはオープンイノベーションのパーパスを明確化し、自社の強みを見極める必要がある。そこにどんな技術を掛け合わせれば、ディスラプティブ(破壊的)なイノベーションが起こせるのかを考えなければならない。

一方で、自社の希望だけを相手に押し付けるのではなく、スタートアップ企業が実現したい課題解決のために何ができるのかを前向きに考え、共に歩んでいこうとする姿勢が必要だ。

大企業が持つ資金力や販路、人的リソースといった強みと、スタートアップが持つ強い課題意識や事業への情熱、技術力とスピード感といった強みを掛け合わせれば、日本企業はさらに競争力を加速していくことができるだろう。

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