攻めと守り 変革オーケストレーター Powered by KPMGコンサルティング

TMT企業が成長する鍵は「知の探索」を実践すること

これまで、顧客のDXをけん引してきたTMT(テクノロジー・メディア・通信)企業。
しかし、最新のデジタル技術を駆使した新興企業が彼らのビジネスを侵食しつつある。
TMT企業が再び、先駆者としての存在感を取り戻す秘訣とは何か。
激しさを増すグローバル競争を勝ち残るためには何が必要なのか、IT業界やマネジメントに精通する吉川和宏氏が解説する。

現在、世界中の企業が加速させているDX。この大きな潮流の中で重要な役割を果たしているのがTMT企業だ。TMT企業とは、テクノロジー・メディア・通信(テレコム)という3つの産業セクターに属する企業のこと。テクノロジーセクターの企業はクラウドプラットフォームやAIをはじめとする最新技術を、メディアセクターの企業はインターネットで配信するための良質なコンテンツを、通信セクターの企業は5GやIoTなどの通信技術を提供することで顧客のDXを支援している。

これまで、これらの企業は顧客のDXをけん引する立場にあったが、様々な産業セクターでデジタル化が進んで業種・業態の垣根がなくなりつつある現在、これまでのビジネスを続けていたのでは成長はおぼつかなくなってきた。さらに、昨今頻繁に行われる法改正や規制緩和が新興企業の台頭やM&A(合併・買収)の活性化を後押ししているという事情もある。伝統的な金融機関が、最新のデジタル技術を駆使するフィンテック企業にビジネスを侵食されるとともに、業界再編の動きが加速しているのと同じ構図に陥ることが予想される。新しいビジネスモデルの創出までをも見据えた変革に着手しなければ、グローバルな競争を勝ち残ることは難しいといっても過言ではない。

新たな知見を取り入れる仕組みをつくる

業種・業態の垣根が混沌としている現在、新たな競争優位性の源泉を築くために重要なことは「両利きの経営」を標ぼうすることだ。両利きの経営とは「既存事業の継続的な改善(知の深化)」と「新規事業に向けた実験と行動(知の探索)」を両立させることである。

これまでは、新規事業の立ち上げを検討する際には、自社の強みを生かすために既存事業の近接領域に目を向けるのが一般的だっただろう。新規事業に向けた取り組みなので、一見すると「知の探索」のようにも思える。しかし、出てきた新規事業が既存事業の改善程度にとどまっていれば、これは「知の深化」に当てはまる。

現場改善を得意とする日本企業は「知の深化」には長じているが、失われた30年の間に「知の探索」に本格的に取り組んだ企業は極めて少ない。人材の流動性が低い日本では、社内にはない新たな知見を持った人材が外部からやって来る機会があまりなかったからだ。いくら「イノベーション」と名付けた部署やハコ物をつくっても、既存の知見と新たな知見の交流がなければ革新的なアイデアを創出することは難しい。

TMT企業の多くは、いずれも専門性が高いがゆえに人材のサイロ化が進んでいるのが現実だ。現状を打破するためには「知の探索」、すなわち既存の知見と新たな知見が交流するような場や仕組みをつくることが重要だ。

KPMG 攻めと守り 変革オーケストレーター