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写真:関 穣氏、平田 和義氏

vol7 多様な地方課題をサステナブルの視点で総括的に解決へ導く

少子高齢化や社会インフラの老朽化など、地方が抱える社会課題は山積している。景気の低迷や人口減少によって税収が落ち込む中、いかに予算を生み出す仕組みを創り上げ、サステナブルに施策を打ち続けられる体制を確立するかが問われている。公共セクターの課題解決を支援するKPMGコンサルティングの担当者が解説する。

事業の持続性を担保するための
財源確保が重要

写真:KPMGコンサルティング 執行役員 パートナー 関 穣氏

KPMGコンサルティング
執行役員 パートナー

関 穣

改めて言うまでもなく、地方が抱える社会課題は山積している。中でも深刻なのは、少子高齢化の加速と、それに伴う人口減少、産業の衰退、活力の減退などだ。これらは税収の減少を招く。少子高齢化はさらに社会保障費の増大など、支出の増加も発生させる。社会インフラの老朽化対策など、今後大きなコストが発生する社会課題も存在する。その他の社会課題も山積している中、行政の財政に与えるインパクトは非常に大きい状態だ。また、少子高齢化の進展は都市圏よりも地方においてより深刻な状況であり、地方の活性化が国の主要命題になっている。

「あまたある解決すべき社会課題に対応しようにも、予算がなく、厳しい状況に追い込まれているのが地方自治体の現状です。何らかの施策を打ち出すにも、その後の人口減少や産業の縮小によって税収が落ち込んだ場合、持続できなくなる恐れがあるため、二の足を踏む自治体も少なくありません」と語るのは、KPMGコンサルティング執行役員 パートナーの関穣氏である。

地方が抱える様々な社会課題の解決に向け、2014年頃より政府による地方創生事業がスタートし、2021年には「デジタル田園都市国家構想事業」として引き継がれた。この事業には総額5兆7000億円という多額の予算が計上されているが、「交付金の対象は事業の初期費用であり、当該事業を継続するためのコストについては対象外となっています。そのため、予算が続かず、事業が持続困難となる恐れもあります」と関氏は語る。

また、デジタル田園都市国家構想は、地方自治体の様々なDX事業を加速させることも期待できるが、一方で単に「デジタル化する、デジタル技術を導入する」といった、手段を目的化するような施策に陥りかねない懸念もある。

「事業の本来の目的は、人口減少を食い止める、社会インフラを持続的に保守できる体制を整えるといった社会課題の解決にあり、事業がどのように目的実現に寄与するのかどうかといった見極めが重要です。また、社会課題の解決は一朝一夕で実現できるものではないため、事業を継続的に実施するための財源創出(例えば税収増や業務コスト・業務支出削減など)に結び付かなければ、目的を果たすことはできません。事業の計画段階で、持続性を担保する財源をいかに確保するかを考慮する必要があるわけです」(関氏)

つまり、事業のROI(投資対効果)の検証が求められるわけだが、そうした取り組みは2016年に官民データ活用推進基本法が制定されて以来、日本でも少しずつ広がりつつある。期待される成果を検証した上で施策を策定するEBPM(エビデンス・ベースド・ポリシー・メーキング)の導入が、各地方自治体でも少しずつ進んでいるのだ。

ただし、「EBPMを実施するには、まず期待できる成果を評価するための社会実験を行う必要がありますが、その環境をどのように整えるのか、実験を行うエリアと行わないエリアで、いかに不公平感が出ないようにするかといった課題も多く、厳格に効果の測定を行うのは困難だと言えます。EBPMの実施は目的ではなく、事業がどの程度本来の目的に寄与するかを見極めるための手法なので、厳格なルールでのEBPMの推進ではなく、簡易的な手法などで効果の見極めを行っていくことも必要ではないでしょうか」と関氏は語る。

成果をもたらしやすい
施策を検討するためのモデル図を作成

KPMGコンサルティングは現在、財源を確保しながら地方の課題を解決する施策を検討するための“たたき台”として、「地方創生サステナブルモデル」というモデル図を作成している。地方社会を構成する企業や大学、住民、自治体といった各ステークホルダーに起こる事象(変化)にフォーカスし、事象間の因果関係や相関関係を整理したモデルだ。

相関図:地方大学、地場産業、地域住民、地域資源、地方自治体、公共インフラ、地域環境

「例えば、大学が研究教育機能の強化・充実を図ると、それによってステイタスが向上し、優秀な人材が入学するようになって、大学の財政が安定するといった因果関係が生まれるものと想定されます。これによって優秀な人材が地域に輩出されれば、地場企業は優秀な人材を獲得できるようになり、それによって企業収益の拡大や、他の地域からの企業移転が進めば、結果として自治体の税収が増える可能性もあります。都道府県などが公開するオープンデータを基に、事象間の因果関係や相関関係がどれだけ強いのかということを定量的に検証しながらモデル作りを進めています」と関氏は説明する。

モデル作りは、KPMGコンサルティングで公共セクターやスマートシティープロジェクトを担当する部署が中心となって進め、データ検証は企業のDXなどを支援するKPMG Ignition Tokyo(イグニション東京)のデータサイエンティストが行っている。

「因果関係の強い事象を逆に辿っていくと、どの事象を促せば、最終的な成果をもたらす事象につながるのかがわかります。“出発点”となる事象を探り当て、それを促す方法を考えることが、施策づくりのヒントとなるわけです」(関氏)

写真:KPMGコンサルティング アソシエイトパートナー 平田 和義氏

KPMGコンサルティング
アソシエイトパートナー

平田 和義

まだ作成途中の段階ではあるが、この「地方創生サステナブルモデル」はスマートシティー事業への活用が期待される。KPMGコンサルティングが支援している地方自治体の中でも検討している事例がある。

「ある地方自治体では、住民の健康状態に関するデータを蓄積し、マイナンバーカードを提示すれば、共通のデータを基に様々な医療機関等で健康や医療に関するサービスが受けられる仕組みの導入を検討しています。この取り組みを“出発点”として、『救急車の出動件数の減少』、『要介護者数の減少』、『子どもの健康状態の改善』といった事象(成果)につながることを想定しており、間もなく始まる実際の運用において『地方創生サステナブルモデル』を活用し、成果が可視化されることを期待しています」と語るのは、地方自治体のスーパーシティ事業に参加しているKPMGコンサルティングの平田和義氏である。

成果に結び付きやすい施策を検討する上で、KPMGコンサルティングの「地方創生サステナブルモデル」は有効な“道しるべ”と言えそうだ。

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