個別業務だけでなく
業務プロセス全体の自動化を

KPMGコンサルティング
パートナー
荒川 卓也氏
地政学リスクの高まりによる急激なインフレに対応し、米国をはじめとする海外では金利引き上げの動きが広がっている。しかし、日本は世界のトレンドに反して超低金利が続く見通しであり、金融機関が利ザヤの確保に苦しむ状況は、なかなか改善されそうにない。
一方で、AIやブロックチェーンなどのデジタル技術を駆使した金融サービスを提供する新興勢の参入は勢いを増しており、既存の金融機関も否応なしにサービスのデジタル化を迫られている。
「とくにコロナ禍以降、窓口でのサービス対応機会が減ったことから、AIチャットボットなどのテクノロジーを活用した非対面チャネルを拡充する金融機関が増えています。“新しい生活様式”の定着は、金融機関にさらなるサービスの変革を迫っているようです」と語るのは、KPMGコンサルティングで金融機関の業務やサービスのデジタル化などを支援する荒川卓也氏である。
AIの活用には、サービス向上とともに“人手”を減らし、ただでさえ薄い利益を削っているコストを抑制する効果も期待できる。同じ文脈で、金融機関はこれまで業務の現場にRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を積極的に導入。“人手”をロボットに置き換えることで、人件費の抑制や業務効率化を図ってきた。
しかし、「本来はBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)と同時のRPA導入がベストですが、それができている企業は少ないです。また個別業務のRPAの導入は既にやり尽くした感があります。さらなるコスト削減、効率化のためには、個別業務だけでなく、業務プロセス全体の流れを自動化するDXが欠かせません」と荒川氏は提言する。
DX推進のステップと効果の関係

現状の金融機関の業務は、部門ごとに利用するシステムやデータ、業務ルールなどが分断され、サイロ化(縦割り化)してしまっているケースが多い。部門と部門をまたぐ業務では、スプレッドシートの受け渡しや、そこに入力されているデータを別のシステムに再入力するといった多くの無駄が発生しているのだ。
荒川氏は、「すべての部門が1つのプラットフォーム上であらゆるデータを共有し、エンド・トゥ・エンドで業務プロセスを自動化できるような仕組みが求められています。KPMGコンサルティングは、そうした業務プロセスの自動化を実現するBPM(ビジネス・プロセス・マネジメント)ツールをはじめとしたアーキテクチャーやプロセス設計、導入なども支援しています」と語る。
デジタル戦略の方向性に沿って
必要なデジタル人材を決める

KPMGコンサルティング
アソシエイトパートナー
山口 亜紀氏
すべての部門が共通のプラットフォームで同じデータを共有できる環境が整えば、いわゆる“データドリブン経営”が実践可能となる。
「部門ごとやサービスごとの収益状況はもちろん、『どのサービスがユーザーに受け入れられているのか』といったトレンドも可視化されるので、エビデンスに基づいた戦略や施策の策定ができるようになります。コロナ禍をはじめとする様々な環境変化によって、ニーズの移り変わりもますます目まぐるしくなっていますが、その兆候をタイムリーに捉えながら、適切な施策が打てるようになるのです」(荒川氏)
このような業務やサービスのデジタル化を推進するためには、それに対応できる人材が不可欠である。
「従来、金融機関の社内IT人材は、勘定系などのレガシーシステムに精通する人たちが中心でしたが、現在はAIやデータ分析をはじめとするデジタル技術に関する知識やスキルを持った人材が求められています」と同セクターの山口亜紀氏は語る。
テクノロジーの進歩によって、今日ではレガシーな勘定系システムと、デジタル技術を駆使した最新の情報系システムをAPI連携させるといったことも容易になっている。問題は、それを外部に任せっきりにするのではなく、社内でもある程度対応できるようにしておけるかどうかということだ。
また、デジタル技術や、それを応用したサービスはつねに進化し続けている。その速さに追い付き、自社のサービスをタイムリーに改善し続けるためにも、業務に精通している社員など社内に一定のデジタル人材を確保しておくことは欠かせない。
「どのようなデジタル人材を確保すべきなのかは、企業として目指しているデジタル戦略の方向性によって決まります。当社は、クライアントの戦略に基づいて必要とされる人材モデルの定義付けを行い、採用や育成のためのプランづくりまで支援します」(山口氏)
あらゆるリスクを一元的に可視化
管理できるソリューション
KPMGコンサルティングは、以上のような金融機関のDX支援や、デジタル人材確保支援の他、リスクマネジメントについても様々なソリューションを提供している。
「“不確実性の時代”と言われる今日、金融機関が向き合うべきリスクは、オペレーショナルリスク、コンプライアンスリスク、情報セキュリティリスク、新テクノロジーに係るリスク、BCP対応など、非常に複雑化・高度化しています。しかし、それぞれのリスクに対する管理は必ずしも一元化されておらず、総合的なリスクの把握と対策を打てる環境が整っていないのが課題です」と荒川氏は指摘する。
これに対応して、それぞれのリスクに関連する社内のデータを一元化し、ダッシュボード上やレポートで全容を可視化できるGRC(ガバナンス・リスク・コンプライアンス)ツールが注目されている。
「あらゆるリスクへの対応状況がひと目でわかるだけでなく、ビジネスに致命的な影響を及ぼし得るものから優先順位付けして、リスク対応のための人の配置や予算配分に強弱を付けることもできます。ガバナンスやリスクの管理体制を高度化しつつ、効率化も図るわけです」(荒川氏)
DX推進と同じように、トータルリスクマネジメントにおいても、重要となるのは社内データの一元化やデータ活用だ。KPMGコンサルティングは、数多くの金融機関のリスクマネジメントやデータ利活用を支援してきた実績に基づいて、この2つの課題に対する“最適解”を提供する。
お問い合わせ
KPMGコンサルティング株式会社