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グリーンアーキテクチュア会議~都市、インフラ、住宅・建築の新たな経営指標を探る~

エネルギー損失大きい開口部
新築・リフォームで高性能化を推進

住宅向け建材・設備機器の総合メーカーとして世界展開を進めるLIXIL。高断熱で熱・エネルギー損失の少ない建材などの商品開発も進めるが、日本国内で6200万戸ある既存住宅は今も窓など開口部の断熱性に乏しい。新築に加えリフォームの促進で、気候変動対策トップランナーの地位確立を急ぐ。

瀬戸 欣哉 氏

LIXIL
取締役 代表執行役社長 兼 CEO
瀬戸 欣哉

 LIXILは住宅のサッシ、ドア、トイレ、風呂、エクステリアをすべてカバーする建材・住宅設備メーカーです。世界150カ国・地域で約10億人が当社製品を日々使っています。コーポレート・レスポンシビリティ戦略としてグローバルな衛生問題の解決、多様性の尊重、水の保全と環境保護――の3つを掲げ、CO2排出ゼロを目指す「環境ビジョン2050」を制定しました。

 住宅業界はCO2削減に向け大きな課題が課されています。環境省が策定した「地球温暖化対策計画」で、住宅業界を含む家庭部門はCO2削減目標が39%減から66%減に強化され、全部門の中で最も高い目標となりました。これは日本が2030年までに温室効果ガスを46%削減し、さらに2050年には実質ゼロを目指す際の重要なファクターとなります。

 LIXILの環境ビジョン2050では ①気候変動対策を通じた緩和と適応 ②水の持続可能性を追求 ③資源の循環利用を促進――の3つに取り組みます。①では、住宅の高断熱化に向けて、開口部の高性能化などによりネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)や性能改善リフォームの普及に貢献すること。②では、浄水機能付き水栓の普及による水資源の保全やペットボトル削減への貢献に取り組んでいます。③は、今まで再利用が難しかった廃棄プラスチック類と、廃木材を原料とした再生木材の開発を進めています。

 国内では、回収された廃棄プラスチックの多くが焼却や埋め立てによって処理されています。海洋プラスチックをはじめ、あらゆる種類のプラスチックを再利用し、道路の舗装材などに活用することを目指します。

日本は既存住宅の9割が基準を満たさない

 建築物は先進国でCO2の排出量の約40%を占めます。脱炭素化に向けて、私たちはゼロエネ住宅や電気自動車(EV)の活用、テレワーク、衣類の長期使用などを選ぶライフスタイルの転換を求められています。ガソリン車をEVに替えることも一つの選択肢ですが、毎日を過ごす住宅の省エネ化はより効果的なCO2排出削減につながります。

 そうなると新築に加えて、既存住宅のリフォーム推進が重要な課題となります。住宅業界のCO2排出量は、商品の生産時よりも製品を利用する時点の方が大きいからです。現在の住宅で、最も熱の出入りが多いのが窓や玄関などの開口部で、58%の熱が開口部から失われます。住宅の高性能化には、開口部の断熱性能向上が不可欠です。

 日本には現在約6200万戸の既存住宅がある一方で、新規の住宅着工件数は年間80万戸にとどまっています。高性能な新築住宅を建て続けても70年を経ないと日本全体に行き渡らず、しかも既存住宅の9割が現行の省エネルギー基準を満たしていません。これを複層ガラスやトリプルガラスに取り替えるなどのリフォームが進まないと、カーボンニュートラルの実現は難しいでしょう。

 LIXILは窓のリーディングカンパニーとして2026年3月期までに高性能窓比率100%を目指しています。私たちは窓の素材にかかわらず、ガラスと組み合わせて熱貫流率が2.33W/m2・K以下となる窓を「高性能窓」と定義しています。この高性能窓が利用される比率を確実に上げていこうと考えています。

内窓「インプラス for Renovation」

 リフォーム向けとしては、内窓「インプラス」、取替窓「リプラス」など、1日で交換できる「1dayリフォーム」の商品を取りそろえています。中でも、2020年に発売した「インプラス for Renovation 」は、性能だけでなく、優れたデザイン性を備えます。フレームの質感にこだわり、家具や床の色とも合わせやすくしました。現代のリノベーションニーズに合わせたリアルな質感や風合いを重視したカラーを設定しています。

 キッチンやトイレのような水回りと違い、開口部だけをリフォームしようとするお客様はまだ少ないのが実情です。そこで大きな工事を伴うことなく断熱化するために開発したリフォーム工法が「1dayリフォーム」なのです。

 もちろん、新築住宅向けの環境対応・省エネ製品の開発も急いでいます。今年度はすべての基幹サッシを刷新しました。2021年8月に発売した「EW」は、世界トップクラスの断熱性能(熱貫流率 0.79W/m²・K)を実現。日本の住宅に合わせて様々な窓性能を国内最高水準まで高めた“機能的価値”とともに、美しいフレームデザインでインテリア空間を演出する“情緒的価値”をもつ樹脂窓です。

 「EW」は、ドイツの樹脂材メーカーであるプロファイン(Profine)社と共同開発したもので、従来よりも格段にリサイクル材の使用率を高めました。従来品と比較してリサイクル材使用率を約3倍に高めています。また「押縁方式」により樹脂フレームとガラスを簡単に分離・回収できる構造を採用しました。

樹脂窓「EW」

 2017年に東京に、20年には大阪に「住まいスタジオ」というショールームも開設しました。ここでは昭和の家と現在の家、また将来の高性能ハウスの住宅内部を、実際に体感できるようにしています。ここで高性能な住宅を体感した人のほとんどが、そちらを選ぶのですが、それは身をもってそのメリットを理解できたからでしょう。エネルギーを高効率で使える住宅のメリットをもっとアピールし、コストをかけた以上の効果があることを幅広い層にプロモーションしていきたいと考えています。

2021年9月13日
日経 大丸有SDGsフェス グリーンアーキテクチュア会議
主催:日本経済新聞社 日経BP 
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