多様な働き方で人材を生かす
中堅・中小企業こそ、今が飛躍のチャンス

場所に縛られない柔軟な働き方を既に多くの人が経験した。ところがコロナとの共存が進むにつれ、以前の形に戻る企業が出てきている。特に中堅・中小企業では、その傾向が顕著だ。働き方の多様化には、非常事態下に限らず様々なメリットがあることは自明のはず。では、なぜ元に戻す力が働くのか? 時代を捉え、いかに利益を享受すべきか。経営学の研究者として、また多くの企業の社外取締役として活躍する、早稲田大学ビジネススクールの入山章栄教授がマイクロソフトの山崎善寛氏と探るのは、多様な働き方の実践が中堅・中小企業の経営に及ぼす真の効果だ。

―日本企業の課題について改めて見解をお話しください。

山崎 多くの企業が業務のデジタル化によるメリットを経験しました。今後経営的にもオフィスに出社する意義、メリットを明確にしなければならないという議論も始まっています。新しい働き方を定着させ、いかにそのメリットを経営に生かすかが課題になりそうです。

入山 今まで当然のように出社していたのが、ばかばかしいと思われるようになってきました。リモートの方がより仕事がはかどると感じた人は多いはずです。

山崎 一人ひとりの業務適性や価値観は様々です。オフィス出勤とリモートワークのいずれかに限定するのではなく、多様な働き方を受容する「ハイブリッドワーク」に注目が集まっています。多彩な人材を企業にとどめ、能力を発揮しやすい環境を整えるうえでも重要です。

入山 イノベーションを生み出すには「経路依存性」からの脱却が鍵となります。経路依存性とは自由な発想や行動を縛る、過去の経緯や歴史を背景にしたしがらみや成功体験のことです。

日本企業の97%が中小、かつほとんどが同族企業です。社外で様々な経験を積んだ後継者が代替わりして経営者となり、途端に急成長する例がよく見られます。ここでは長年続けてきたビジネスに外部の発想や手法が組み合わさって、新たな展開が開かれています。イノベーションは幅広い経験や知見、価値観を持つ多様な人材が集まり、異質な知が融合してこそ生まれます。そして多様な人材を採用し、活躍してもらうならば、働き方もやはり多様でなくてはなりません。

山崎 ハイブリッドワークの環境が整えば、企業の拠点が都心でも地方でも、全国から優秀な人材を確保できます。これからは日本中で人材を奪い合う時代になりそうです。

入山 特に中堅・中小企業にはチャンスが大きいと思います。小回りが利き、トップダウンで労働環境の改革を進めて経路依存性を外しやすいからです。日本の産業を活性化させるうえで中堅・中小企業の覚醒は不可欠です。

安価で高度なIT環境を利用可能
「知の探索」の余裕を生み出せ

 

――ところが、大企業では業務のデジタル化や多様な働き方が定着しつつある一方、多くの中堅・中小企業がコロナ禍以前の体制に回帰しているように見えます。

入山 危機感とチャレンジ精神を持っている企業は、働き方が既に変わってきています。しかし一般に日本の中堅・中小企業はサプライチェーンの中の下請けに位置するところが多く、受注した仕事を続ける過程で、納期順守と安定的かつ安価な製品供給だけにまい進するようになります。余分なチャレンジなどしない方が効率的で、商習慣や業務の進め方、ひいては働き方を変えようとしません。

山崎 コロナ禍はそんな膠着した働き方のデメリットに気付き、変えるチャンスだと感じます。千載一遇の機を見逃し、働き方を以前の状態に戻して大丈夫なのでしょうか。

入山 それは深刻な結果を招く可能性があります。ビジネス環境が大きく変わる中でイノベーションを創出して持続的に成長するには、新たな「知の探索」と既存の「知の深化」を同時進行させる「両利きの経営」が不可欠です。多くの中堅・中小企業は、知の深化だけに偏った状態になりがちなのです。知の探索は人間でないとできない、センスと探究心が求められる業務です。一方で知の深化は、業務のデジタル化により省人化と効率化が可能です。デジタル技術を導入し、知の探索に向ける時間やリソースを確保することが重要です。

これまで何十億円もの投資が必要だったITが、今やクラウドサービスを通して安価に利用できます。中堅・中小企業がマインドセットを変えれば、両利きの経営を実践して飛躍するチャンスが到来しています。

山崎 私たちも中堅・中小企業にこそ、クラウドのメリットを享受していただきたいと願っています。例えば直近では、大企業レベルのセキュリティー対策を実現し、マルウエアやランサムウエアなどの脅威からの防御に役立つ機能を搭載した Microsoft Defender for Business を月額330円で、従業員300人以下の企業に向けて提供開始しています。また優れた処理性能と、Web会議に適した高性能なスピーカーやマイクなどを搭載したモダンPCへの投資も、従業員の生産性を向上させ、経営を飛躍させる一助となるでしょう。Windows 11 ではユーザー中心設計に立ち戻り、利用者が快適に、かつ、ストレスなくPCを活用できるユーザーエクスペリエンスを追求しました。時代の要請に応えて進化したデバイスをクラウドと併せて活用すれば、大企業と同等の高度なIT環境を安価・安全に活用できます。

日本企業に有利な変革が起きる
勇気を出して投資の一歩目を

 

―日本企業の今後の見通しについてお話しください。

入山 業務のデジタル化には大きな意義があります。今後はあらゆるモノがネットにつながるIoTの時代がやってきます。IoTではモノ自体の価値も求められるので、モノづくりに強い日本企業に追い風が吹くわけです。コミュニケーションの分野でもまた大きな変化が確実に起きます。Web会議などに自動翻訳機能が間違いなく入るからです。この点でも日本企業、特に中堅・中小企業には、市場急拡大のチャンスが生まれるといえます。

山崎 日本の中堅・中小企業は伸びしろが大きく残されているのですね。デジタル投資はコスト要因とみなされがちですが、勇気を出して投資を行い、近い将来急成長する素地を整えておく必要がありそうです。

日本マイクロソフト

https://www.microsoft.com/ja-jp/biz/windows