すべては、
未来につながっている

⽇経SDGs/ESG会議
「世界の社会課題解決へ」

DXの社会実装を通じて
社会課題解決企業を目指す

三菱総合研究所 代表取締役社長
籔田 健二

経済効率や成長を重視したGDPなどの指標に代わる、新たな価値指標として「ウェルビーイング」に着目する。ブロックチェーン技術を活用した地域課題解決型デジタル地域通貨サービス「Region Ring」の導入など、産官学の幅広いパートナーとDX事業やサービス提供事業で共創を進め、社会課題の解決に貢献するビジネスを自ら手がける「社会課題解決企業」として持続的成長を目指す。

 三菱総合研究所は「100億人・100歳時代」の豊かで持続可能な社会の実現を目指し、事業を通じた社会価値の創出、社会課題解決を目指している。

 2020年の創業50周年を機に経営理念を刷新し、従来型の総合シンクタンクの枠を超え、デジタルトランスフォーメーション(DX)の社会実装などを通じて、社会課題の解決に貢献するビジネスを自ら手がけ、新たな事業に育てようとしているところだ。

 21年には大手町・丸の内・有楽町(大丸有)エリアで、企業連携によりサステナブルなアクションを展開する「大丸有 SDGs ACT5」の実行委員会に参加した。

 大丸有 SDGs ACT5の活動を具体化して広げていくため、地域課題解決型デジタル地域通貨サービス「Region Ring」を活用して、大丸有エリア内で行われる個人のSDGsアクションに「ACT5メンバーポイント」を付与する「ACT5メンバーポイントアプリ」を構築して、サービスを開始した。

 このアプリでは、例えばマイボトルの持参、古くなった衣類の回収、地産地消マルシェでの購買などACT5イベントへの参加やアプリ上でのアンケート協力などでポイントを獲得でき、貯まったポイントはサステナビリティに配慮した商品と交換したり、SDGs貢献団体や「エコ結び基金」などに寄付したりできる。

 対象としている活動分野は「環境」「サステナブルフード」「ウェルビーイング」「コミュニケーション」「ダイバーシティ&インクルージョン」の5つだ。

Region Ringを活用した「ACTメンバーポイントアプリ」の概要と導入効果
ポイント対象のアクション(例)

(出所:三菱総合研究所)

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 アプリを通じて、例えば「フードロス削減に取り組む店舗が新たに追加されました」というように活動の活性化につながるメッセージを配信したり、「みんなの日々の運動が医療介護のコスト削減に大きく貢献します」など、利用者にSDGsへの理解を深めてもらうようなコミュニケーションの活発化につなげたりすることができる。

 ACT5メンバーポイントアプリを導入したことで、SDGsの認知度が10%向上し、3万件の新たなSDGs活動を誘発、総付与ポイントの8割が大丸有エリア内に還元されるなど、大きな効果を上げたと自負している。

 Region Ringの技術は、ほかにも「東京ユアコイン」「名古屋市 金シャチマネー」「近鉄ハルカスコイン」「近鉄しまかぜコイン」でも導入していて、地域の活性化や課題の解決に貢献している。

ブロックチェーン
で課題を解決

 Region Ringは、ブロックチェーンによる経済的・社会的価値の創出によって、さまざまな地域課題を統合的に解決していくデジタルプラットフォームだ。

 「誰が、いつ、どんな情報を台帳に書き込んだのか」を分散型データベース(台帳)に記録するブロックチェーン技術を活用して、地域通貨やコインなどすべての取引履歴(トランザクション)が事業主体に共有される。サーバーにすべての取引情報を集約して管理するクライアント-サーバーシステムに比べて導入コストが削減できることに加えて、取引履歴が共有されることで、記録の改ざんが困難となり、情報の信頼性も向上する。

 健康増進、地域・観光活性化、デジタル行政の推進、働き方支援、SDGs活動支援など、地域に新しいアクションを創発し、これからの地域が向き合っていくさまざまな課題・テーマに応用することも可能になるだろう。

 これからの地域に必要なことは、地域のコミュニティ、つまり人と人のつながりをより強く、広く、大きな輪にしていくことだ。これまで手がけてきた地域活性化へのさまざまな取り組みをベースにして、より良い地域づくりのための次のソーシャルイノベーションを実現していく。

人や社会の
ウェルビーイングを高める

 三菱総合研究所がRegion Ringに取り組むのは、人や社会の「ウェルビーイング」を高める有効なツールになると考えているためだ。

 ウェルビーイングは、1946年に署名された世界保健機関(WHO)憲章にある概念で、その前文では「健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます」(日本WHO協会仮訳)とうたい、心や身体の豊かさ、持続的な幸福を表す。近年ではSDGsや世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)でも採り上げられ、経済効率や成長を重視したGDPなどの指標に代わる、これからの時代に求められる新たな価値指標として注目されている。

 三菱総合研究所はウェルビーイングの最大化をポストコロナ社会が目指す究極の目標に位置づけ、研究提言と社会実装に取り組んでいる。

 人間のウェルビーイングは生活の基礎となる地球環境と社会の持続可能性の上に成り立っている。つまり「人間が社会と地球に働きかけ、社会と地球に人間が支えられる」ことでウェルビーイングは実現しているのだ。

 ウェルビーイングを最大化するうえで、目指すべき社会の姿を「レジリエントで持続可能な社会」と定義した。気候変動や経済格差など社会課題にしなやかに対応し、地球環境との調和を保ち、社会全体の豊かさを持続的に高めることが重要だと考える。

 三菱総合研究所では、そうした社会の実現に向けて研究・提言から社会実装まで取り組んでおり、地域をつなぎ、新しいアクションを創り出すRegion Ringはそのための有効なツールになり得るものだ。

社会課題解決企業
を目指す

 2022年4月の東証再編によるプライム市場への移行を機に、私自身が最高サステナビリティ責任者(CSO)を兼務するよう組織変更を行い、経営方針や推進体制を明確化した。豊かで持続可能な社会の実現に貢献し、「社会課題解決企業」として持続的成長を目指していくのが三菱総合研究所のサステナビリティ経営だ。

 サステナビリティ重視の考え方が一般的になり、ESG投資を通じた社会課題の解決や企業の社会への価値貢献が強く求められている。

 事業活動により創出する「社会価値」、グループ競争力を支える知・人財・共創基盤といった社会課題解決力やESG(環境・社会・ガバナンス)などの「非財務価値」、持続的成長の源泉となる「財務価値」。これら3つの価値の好循環を形成することがサステナビリティ経営の実現につながると考えている。

「100億人・100歳時代」の豊かで持続可能な社会の実現
サステナビリティ経営

(出所:三菱総合研究所)

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 そして、豊かで持続可能な社会の構築に向けて「個人のウェルビーイング」「社会の持続可能性」「技術による社会変革」、グループの持続的成長に向けて「人的基盤」「知的・共創基盤」「社会信頼基盤」の6つを重要課題(マテリアリティ)として取り組んでいる。

 コロナ危機をきっかけの一つに、国同士のパワーバランスが不安定化して自由主義や平和が当たり前のものではなく、国家や社会の安全・安心・安定が重要なものとなった。また、経済格差の拡大や富の偏在による社会の分断が進み、資本主義の再構築が必要となっている。サステナビリティ重視の考え方が一般的になり、ESG投資や企業の社会への価値貢献が強く求められるようになった。

 三菱総合研究所は、ミッションに「社会課題を解決し、豊かで持続可能な未来を共創する」ことを掲げ、「未来を問い続け、変革を先駆ける」というビジョンの下、「社会課題解決企業」として成長していくことを目指す。

 課題解決の具体策として、DX事業やサービス提供事業を推進し、産官学の幅広いパートナーとの共創を通じて、コレクティブインパクトを最大化していく。


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