最近では、パーパス(企業の存在意義)を起点とした経営へ注目が集まっている。「日本企業はパーパスの対外発信は熱心ですが、社員へのパーパス浸透を軽視していることが多いようです」とB&DXの安部慶喜氏は指摘する。
ある調査によれば、日本企業における社員エンゲージメントは世界最低ランク。現在の勤務先での勤続意向、転職・独立意向、自己啓発状況も世界最低の水準だ。
「漫然と過ごしている人が多く、新しいことへの挑戦意欲・変革意欲が大きく減退しています」と安部氏は話す。
近年働きやすさは高まったものの、一方で働きがいは急速に低下している。従業員満足度向上に取り組む企業は多いが、社員エンゲージメントには直結していない。
企業力向上のカギを握る
パーパスの活用
日本企業が取り組むべきことは、パーパスが社員エンゲージメントに及ぼす効果を再認識し、企業のパーパスと個人の業務を結びつけ、社員エンゲージメントを高めるための対話を行うことだ。
社員エンゲージメントを高めるためのポイントとして、安部氏は次の5つを挙げる。
まず、「経営者は経営理念をパーパスに解釈し直せ」。創業当時の経営理念を“額縁から出し”、現代において顧客・社会に提供する独自の価値に解釈し直す。
2つ目は「経営者は発信機会を飛躍的に増やせ」。発信内容にかかわらず、量を飛躍的に増やしていく。
3つ目が「パーパスの策定・浸透は経営層全員がコミットせよ」で、経営層全員で自社の存在価値や社会的意義を深掘りし、策定する。
4つ目の「企業のパーパスと個人のミッション・役割を結びつけよ」は、対話の繰り返しで、すべての企業活動や事業活動にリンクさせていく。
最後が「恒常化し、進化させよ」で、自社の存在意義を常に問いただし、パーパスに反映させる。
「社員エンゲージメントが世界最低ランクということは、逆に言えば人材力向上への大きなポテンシャルがあることになります。パーパスをすべての企業活動・事業活動とリンクさせることが、企業力向上のカギになります」と安部氏は訴えた。