ANAは現在、デジタルデータを活かした「121(One to One)」戦略を推進している。これは、顧客が同社の航空機を利用して出張や旅行に出かけることを計画してから、旅程の完了に至るまでのジャーニーを28のシーンに分け、それぞれのシーンで顧客の体験価値を高めていくことを念頭に置いたものだ。「航空機の予約から空港のカウンター業務や機内サービスなども含め、リアル接点、デジタル接点が一体となったかたちで、お客様一人ひとりに即した最適な対応を目指している」とANAの荒牧秀知氏は説明する。
そこで重要となってくるのが、個々の顧客のプロファイルや嗜好、位置情報といったデータだ。同社では、CX(顧客体験)基盤として各シーンの業務を横断する仮想データベースやデータマネジメント環境を構築し、データを活用しながらCX価値の継続的な向上を図っている。
顧客や業務を深く理解した社員を
データ活用人材として育成
データ活用には業務や顧客理解に基づく適切な課題設定が不可欠だ。ANAは、空港スタッフや乗務員など、社内から幅広くデータ活用人材を公募。100人規模の人員を同社のシステム会社であるANAシステムズに受け入れ、年間2000人以上の社会人にデータサイエンス教育を行うデータミックスのトレーニングなども活用しながら、スキル強化を図ってきた。
データミックスの堅田洋資氏は「データ活用は、適切な課題設定から始まる。当社のスクールでは、ケーススタディを通じて、技術だけでなく、課題設定の重要性を学ぶ。受講を終えたANAの皆様には、現場業務にかかわる豊富な経験や専門的スキルとデータサイエンスをかけ合わせて、新たな価値創出を実現していただきたい」と話す。
データで価値を生み出すためには、データを活用する文化づくりや経営陣の覚悟も重要だ。ANAには、顧客の生の声が経営陣にレポートされる仕組みや、新しい挑戦を前向きに取り組めるカルチャーがあるという。ビジネスとデジタル、双方のプロフェッショナルの協創に基づくDXの推進で、“With コロナ”の時代における躍進を目指す。