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日経ビジネスLIVE 2022 Summer レビュー日経ビジネスLIVE 2022 Summer レビュー

人的資本投資の今をLIVE発信
人材育成や能力開発に発想の転換を

デロイト トーマツ コンサルティング

人材エコシステムの可能性と
ウェルビーイング向上への道

動的な人材ポートフォリオの構築は、多くの企業にとって課題だろう。解決アプローチとして考えられるのが、オープンなタレントマネジメントの仕組みとしての人材エコシステムである。人材エコシステムづくりには課題もあるが、それらを乗り越えることで未来への可能性が広がる。それがウェルビーイング向上だ。こうした取り組みは、人的資本経営の推進にもつながる。
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
ヒューマンキャピタル ディビジョン
執行役員 パートナー
古澤 哲也

 2020年9月に経済産業省が発表した「人材版伊藤レポート」にて提起された、「人的資本経営」という概念が注目されている。人的資本経営とは、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のありかただ。

 「同レポートの中で私たちが特に重要と考えているのが、動的な人材ポートフォリオです」と語るのはデロイト トーマツ コンサルティングの古澤哲也氏である。

人材エコシステムをつくるため
求められる価値観のシフト

 事業環境の変化に応じて、企業はビジネスモデルや戦略を柔軟に変える必要がある。「同様に人材戦略、人材ポートフォリオも変えなければなりません。ただ、人の問題ですから、企業の思い通りに物事を進められるわけではありません。日本企業にとって大きな課題です」と古澤氏は話す。

 この課題解消は、一企業だけの取り組みでは限界がある。そこで、古澤氏が提唱するのが「人材エコシステム」だ。企業にはDX人材や女性幹部など、様々な人材ニーズがあるが、社内育成や採用だけでは時間がかかり、難度も高い。「社外にも目を向けて、オープンなタレントマネジメントの仕組みづくりを目指してはどうでしょうか。それが人材エコシステムです。社内外の幅広い人材に活躍の場をつくることは、社会にとっても有意義です」と古澤氏は指摘する。

 人材エコシステムを成立させるためには、いくつかの課題をクリアしなければならない。

 「従来の『組織のために価値を創造する』という発想からの脱却が求められます。働き手と組織は対等であり、両者は互いの顧客に対して共に価値提供し、共に成功と失敗を分かち合う存在。そのような考え方にシフトする必要があります」(古澤氏)

 企業と個人の双方に、価値観の転換が求められる。企業にとっては外部人材を柔軟に受け入れるオープンマインドセット、パートナー企業や社員と共に価値を創造する協創意識が重要だ。一方、個人は自律的なキャリア開発意識を持つ必要がある。そして、両者共にパーパス(存在意義)の意識は必須だろう。

人材エコシステムに必要な6要素
部分的な取り組みは始まっている

 デロイト トーマツ コンサルティングは、人材エコシステムを成立させるためには6つの要素が必要と考えている。「マインドセット変革」「育成・リスキル」「スキルに対する共通のモノサシのお墨付き」「共通フォーマットのジョブディスクリプション・ポジション情報の公開」「マッチング」「背中を押す(お試し体験、キャリア支援)」である。

 すべてがそろった人材エコシステムはまだ見当たらないものの、部分的な取り組みは国内外で始まっているという。「日本の例としては、経団連主導で設立された循環経済パートナーシップがマインドセット変革への取り組みを始めています。また、当社が地域の教育機関や金融機関、自治体などと一緒に推進しているADXO(Area DigitalTransformation Organization)は、マッチングと背中を押すことを視野に入れた活動です」と古澤氏は話す。

 ADXOは地域包括DX推進拠点で、人材育成支援と産業創造・DX推進を連携させ、地域で人材のパワーアップを図るとともに新しいビジネスづくりを目指している。地域で人材を掘り起こして育て、新たな活躍の場へ送り出すこともADXOの重要な役割だ。

人材育成支援、産業創造・DXをともに推進するADXO

地域のデジタルプラットフォームを構築する試みを推進中

人材エコシステムの可能性
人的資本経営への寄与にも期待

 共通フォーマットに取り組んでいる事例として英国で普及している「アプレンティスシップ(見習い制度)」がある。求職中の若者の背中を押すプログラムだ。「プログラムに賛同する企業には、政府からの補助があります。その企業はOJTのようなスキル習得の仕組みを用意し、若者をトレーニングする。そして、期間が終了すると認定証を発行します。若者は認定証を活用した求職活動ができます」(古澤氏)

 こうした試みの中から、やがて6要素を備えた人材エコシステムが育っていくかもしれない。人材エコシステムにはさらに大きな可能性があると古澤氏は見る。

 人材エコシステムとウェルビーイングは、どのような関係にあるのだろうか。ウェルビーイングの土台や増進する要素の中には、人材エコシステムと密接に関係するものが多い。

 「人材エコシステムは企業の人材マネジメントに役立つだけでなく、ウェルビーイング向上にも寄与するでしょう。社会課題に対して、人事の立場からアプローチするきっかけにもなり得ます」と古澤氏は説明する。

 人材エコシステムの実現は、人的資本経営の要素の1つであるウェルビーイング向上にもつながる可能性がある。未来を切り拓く可能性を秘めた人材エコシステムへの関心は、今確実に高まりつつある。

人材エコシステムとウェルビーイング向上

人材エコシステムの取り組みはウェルビーイング推進の可能性がある

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