「DX(デジタル・トランスフォーメーション)へのアプローチの中で、『リスキリング』が注目されています。リスキリングとは、従業員のスキル獲得方法の1つで、1年ほど前からは国内でも話題になっています」。こう語るのは、ギブリーでIT技術者やエンジニアの採用、育成支援の事業を手掛ける新田章太氏だ。
新田氏は「社会人になってからキャリア形成のために従業員が自ら学ぶリカレント教育とは異なり、企業が主体になって社内の職能として必要なスキルを獲得するための人材戦略がリスキリング」だと説明する。従業員が新しい能力やスキルを獲得するリスキリングが、デジタル技術の活用によって新しい価値を創造するDXの推進に貢献するとの見立てだ。
企業がリスキリングを実践し効果を発揮するためには、学習機会の提供にとどまらず、評価制度や報酬体系との連携が必要になる。要求するスキルを評価や報酬で明示し、スキル獲得によるキャリアパスを可視化することで従業員にリスキリングの重要性を説くわけだ。「大規模な取り組みが必要だが、世界ではリスキリングの重要性を理解して投資する企業が増えている」(新田氏)
スキル獲得の動機形成に
デザイン思考の手法を採用
一方で「日本ではリスキリングはまだ浸透していない。社内での学び直しの機会の提供は未実施の企業が多い」と新田氏は指摘する。
これには企業側の施策だけでなく、従業員側の意識にも課題がある。学習機会の提供や評価制度などの刷新を企業側が実現したとしても、従業員側が「本業が忙しい」「キャリアとの連携が分からない」とそっぽを向いてしまうケースがあるのだ。
新田氏は「そこでは、『なぜ(Why)』新しいスキルを学ばなければいけないのかという動機形成が必要になる」と指摘する。
ギブリーでは、リスキリングの学習の動機形成のためにデザイン思考を用いた取り組みを実施している。新田氏は「デザイン思考により、自社の顧客や価値を可視化し、価値を提供するために必要なスキルを再認識できるようになる。ワークショップを通じて多くの従業員が自社のビジネスや業務プロセスの改善に興味を持ち、リスキリングの動機形成につながった」と効果を語った。