パナソニック セミコンダクターソリューションズが同グループを離れ、台湾のヌヴォトン・テクノロジー・コーポレーション傘下となって約1年半。グローバルな半導体企業グループの経営スタイルを取り入れ、組織とビジネスを大きく変えることで、四半期ベースでの黒字化を達成した。世界の半導体市場をリードする台湾企業の特長とは? 同社に生じた変化とは。ヌヴォトン テクノロジージャパン 代表取締役社長の小山一弘氏に聞いた。

60年以上磨いてきた技術が
グローバル半導体企業と融合

同社は1952年、松下電器産業(現パナソニック)の創業者である松下幸之助氏が「日本を電子立国にする」という大義の下に設立した。それから、60年以上にわたってパナソニック・グループの半導体事業の中核を担ってきた。最大の特長は、プラズマテレビや光ディスク、デジタルカメラ、携帯電話、車載用LSIなどの半導体技術を磨いてきたことだ。

2020年9月にパナソニック・グループを離れ、台湾のヌヴォトン・テクノロジー・コーポレーション(NTC)の傘下に入る。社名はヌヴォトン テクノロジージャパンへと変えた。この背景には、グローバルな半導体業界の潮流がある。

ヌヴォトン テクノロジージャパン株式会社
代表取締役社長
小山 一弘 氏

世界の半導体業界では、専業化と大規模化が加速している。設備投資も年々巨大化し、「もはや1つの事業部でできるような規模ではなくなりつつあります」と代表取締役社長の小山一弘氏はいう。世界のすう勢から見て、専業化へ舵を切る判断が求められつつあった一方、世界の半導体をリードしている台湾のNTCからすれば、同社のような「製品の性能に直結した半導体技術」は極めて貴重であり、ぜひグループに加えたい。

半導体ビジネスを続けていくなら、電機メーカーの傘下にいるよりグローバルな半導体企業グループの一員になる方が有利。将来の伸びしろも大きいと関係各社が判断し、譲渡が成立した。

海外事業が大幅に増強
組織体制も再編した

「NTC傘下になり、複数の大きな変革をスピーディーに実行して四半期ベースでの黒字を達成しました」(小山氏)。直接的な要因は、製品群を絞り込んだことが大きい。しかし「NTCグループの力で業績が大きく向上したことは間違いありません」と小山氏はいう。世界中に広がるNTCの営業部隊が同社の製品を売り始め、製品分野によっては海外からの引き合いが約10倍にまで増えたからだ。

組織も変えた。グローバルな半導体市場と顧客ニーズを基盤に4つのビジネスグループ(BG)に再編。「コンポーネントBG」「バッテリー・アナログソリューションBG」「ビジュアルセンシングBG」「IoT with セキュリティBG」とそれぞれ名前が付く。

ヌヴォトン テクノロジージャパンの「4BG」体制。グローバルな顧客ニーズから、市場と技術を絞り込んだ

気候変動や人口動態など、いわゆる「2030年問題」からメガトレンドを見極め、成長市場を絞り込んだ。そこから導き出された顧客ニーズを基に、組織を4つのBGに大きく変革。幅広い製品を広範囲の顧客に提案するビジネスを改め、顧客を絞り込み、より顧客に近い目線でマーケティングと技術開発の連動性を高める。

加えて新規技術の探索を組織的に進めるため、最高技術責任者(CTO)を任命して「技術イノベーション室」を設置。「NTCグループのアドバンテージを最大限に生かします」(小山氏)。グローバルな半導体市場をけん引する台湾。その中核を担うNTCの傘下になったことで、世界の半導体市場の情報がリアルに伝わるようになった。トレンドをいち早くつかみ、台湾との技術連携を進める。また、学会や大学、研究機関、官公庁などとの連携を強化し、社会課題の解決を目指す。ゼロからイチを生み出す開発だけでなく、既存の技術を組み合わせて新たな価値を創出する取り組みも積極的に進める。

NTCの多彩な半導体製品と同社の技術を組み合わせた提案が可能になり、事業を拡大しやすくなった。例えば、同社の電池計測ICとNTCのマイコンを組み合わせることで、リチウムイオン電池を精度良く安全に使用できるソリューションを実現。「必要な素材を同じグループ内で調達できることは、設計上の大きな利点。複数デバイスを組み合わせ、リファレンスまで含めて提供できることが強みです」(小山氏)。

NTCの理念と松下イズムで
誰にもまねできない価値を創造

NTCグループは「Hidden Champion(隠れたチャンピオン)」という理念を重視している。小規模であっても、特定の分野で世界市場を支配するほど強い影響力を持つ企業のことだ。ドイツの経営思想家、ハーマン・サイモン氏が提唱した。

「主戦場を絞り込み、誰よりも強くなるということです。大企業でなくてもグローバルで戦う方法があることを再認識しました」(小山氏)。市場と技術を絞り込む4BG体制も、この理念に基づく。

NTCの傘下になってから、80人ほどの新たな従業員を採用した。「台湾資本になったことで、日本の半導体業界から優秀な方が集まるようになりました」(小山氏)。世界の半導体市場をリードする台湾のビジネスを知りたい。そう語る応募者も多く、日本の半導体産業復活のカギを握る企業として注目を集める。

「NTCの経営はスピード重視です。まず行動し、違っていたら修正する。時間感覚が日本企業の3倍くらい違います」(小山氏)

NTCの優れた面を積極的に取り入れていく小山氏だが、同社の根底には「松下幸之助イズム」が流れていると語る。人が職域を超えて協力し合う企業風土は、創業以来の伝統だ。日本と台湾のDNAを備え、同社が世界の「Hidden Champion」になる日は近い。

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ヌヴォトン テクノロジージャパン株式会社

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E-mail : NTCJ_PR@nuvoton.com