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設備刷新とリサイクル原料の活用でサステナブルな社会に貢献する|日本冶金工業株式会社

高効率・省エネ・環境配慮を併存させる新しい電気炉が2022年1月に稼働。他にもサステナブルな社会の実現のため、様々な取り組みを進めている。

新しいステンレス特殊鋼メーカーへ
高機能材の開発・製造体制強化
中国で合弁会社を設立

インフラや建造物の構造材から、家電や食器に至るまで、ステンレス鋼はあらゆる場面で社会生活を支えている。日本冶金工業は、1935年に18-8ステンレス鋼(SUS 304)を世に送り出した後、原料となるフェロニッケルの製錬から製品に至るまでの生産に取り組んできた。

現在、同社は汎用的なステンレス鋼だけでなく、ニッケル含有量が20%以上の高ニッケル合金(同社では「高機能材」と称している)の開発・製造にも力を入れ、事業の柱の一つとして推進。「歴史あるステンレス専業メーカー」から、時代のニーズに即した「新しいステンレス特殊鋼メーカー」へと進化を続けている。

同社は、高機能材のメイン市場である中国の大手鉄鋼メーカーである南京鋼鉄と2018年に合弁会社を設立。環境やエネルギー分野のプラント向けには大きなサイズの板が求められるが、合弁先である南京鋼鉄の最新鋭の熱間圧延機を使用することで、超広幅鋼板の製品化に成功。こうした取り組みにより、海外でも存在感を高めている。

カーボンニュートラルの実現へ
22年1月稼働の新電気炉は高効率・省エネ・環境配慮

一方、同社はカーボンニュートラル実現に向けた取り組みにも注力している。

「2020年から『業界トップレベルの品質・納期・対応力で信頼され続けるグローバルサプライヤー』を目指すべく、『中期経営計画2020』を推進していますが、その前後で社会環境が大きく変わりました。新型コロナウイルスの感染拡大はもちろんですが、もう一つの大きな変化はサステナビリティへの意識の高まりです」と同社代表取締役社長の久保田尚志氏は語る。

写真:久保田 尚志氏

日本冶金工業株式会社
代表取締役社長

久保田 尚志氏

このような社会情勢の中、日本冶金工業は川崎製造所(神奈川県)に約130億円を投じ、約2年の工期をかけた高効率電気炉、通称「E炉」の本格稼働を22年1月に始めた。その特徴を示す「Electric arc furnace with high efficiency, energy saving and environmental improvement(高効率、省エネ、環境改善)」という3つの英単語の頭文字Eから命名されたこの新しい電気炉は、同社が得意とする多品種少ロット生産を支える高効率性、そして省エネ性を両立させるため、炉体旋回方式・電磁攪拌装置といった最先端の技術や装置を採用。また、炉本体を覆うことによる防音・防塵対策の強化や、炉体交換方式の導入による炉修作業のオフライン化により作業環境の改善も実現した。

「新電気炉の建造は老朽化した電気炉を更新するタイミングを想定しての決断でしたが、結果的に近年加速するカーボンニュートラルの流れに沿う形になりました。この最新鋭の新電気炉で当社はエネルギーコストの削減と環境負荷の低減を達成し、サステナブルな社会の実現に貢献します」(久保田氏)

製品用途
~顧客ニーズへの対応と社会への貢献~

写真:有機EL製造装置用フレーム
有機EL製造装置用フレーム

低熱膨張の特性を持つNAS 36は、かつてはブラウン管テレビのシャドーマスク材として使用されたが、今では有機ELの製造装置用フレーム向け素材として使われている

写真:水素ステーション用熱交換器
水素ステーション用熱交換器

燃料電池自動車へ水素を充填する水素ステーションの熱交換器に同社製品が使用されている。同社はSUS 316L改良材を開発し、水素社会のインフラ整備に貢献している

都市鉱山由来のリサイクル原料比率の100%化を目指す

日本冶金工業はステンレス鋼や高機能材の原料となるフェロニッケルの製錬についても、リサイクル性を高める取り組みを進めている。大江山製造所(京都府)では、ニッケル鉱石に加え、廃触媒などのいわゆる“都市鉱山”由来のリサイクル原料の活用を推進してきた。

「現在、大江山製造所で製錬するニッケルの4割はリサイクル原料由来のものですが、この比率を将来的には100%とする『鉱石レス』を目指しています。リサイクル原料はニッケル鉱石よりもニッケル品位が高いことから、物量も少なくなり、また、還元時における燃料の原単位が下がるため、省エネ・二酸化炭素排出量削減にもつながります」(久保田氏)

同社は21年12月に「サステナビリティレポート」を発刊するなど、対外的な発信も強化している。

久保田氏は「ステンレス鋼も高機能材も、製品寿命が非常に長く、リサイクル性にも富む素材です。今の時代に求められ、また、社会に貢献できる素材だと認識しています。そのことを、社員を含め多くのステークホルダーの方に伝える努力を今後も続けていきます」と語った。

25年に創業から100年という節目の年を迎える同社は、既に次の100年を見据えている。

写真:新電気炉の建屋と本体
新電気炉の建屋(左)と本体(右)

The voice of the person in charge

長寿命でリサイクルしやすいサステナブルな高機能材

低熱膨張の特性を持つNAS 36は当社の高機能材の出発点でもあり、ブラウン管テレビの部品であるシャドーマスク向けに使用され、世界でも高いシェアを占めました。ブラウン管テレビの製造量激減後、同製品はLNG船の内張りや航空機用の金型、有機EL製造装置などに使われてきました。形を変えながら、時代とともに使われ続けるのが当社の素材の特徴です。

写真:久保田 尚志氏

日本冶金工業株式会社
代表取締役社長

久保田 尚志 氏

日本冶金工業株式会社
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