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「セゾンカード」をはじめとするペイメント事業と、住宅ローン、家賃保証などのファイナンス事業を2本柱として躍進を続けるクレディセゾン。さらなる成長のため、グローバル事業や新規事業にも積極投資している。同社の水野克己社長は、新たな“事業のタネ”を探るため、自らスタートアップ企業との“出会い”を重ねている。その思いに迫った。

01 スタートアップやベンチャー企業と、
直接触れ合える接点を持ちたい

クレディセゾンと言えば、「セゾンカード」などのペイメント事業を真っ先に思い浮かべるだろう。西武百貨店や西友、パルコなどの店頭で簡単に申し込みができて年会費は無料。しかも、買い物で貯まるポイントに有効期限を設けない「永久不滅ポイント」を提供していることでよく知られている。2020年には完全ナンバーレスのカード、「セゾンカードデジタル」の発行を開始するなど、サービスのデジタル化にも積極的だ。

しかし、ペイメント事業はあくまでも“1つの顔”にすぎない。

「住宅ローンの『フラット35』や家賃保証、個人向け投資用不動産購入ローンなどのファイナンス事業にも注力しており、現在、ペイメント、ファイナンスが事業の2本柱となっています。また、東南アジアやインドでも割賦販売、後払い決済(BNPL)などのサービスを展開しており、グローバル事業の規模も拡大しています」と説明するのは、同社の水野克己代表取締役 兼 社長執行役員COOである。

変化の激しい時代の中で持続的な成長を目指す同社は、ペイメント、ファイナンス、グローバルに続く、新たな事業の開拓も積極的だ。国内ではCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)を通じて有望なスタートアップやベンチャー企業に投資し、海外でもシンガポールに設立した投資会社などを通じて、イノベーティブな技術やサービスを持つ企業への出資を行っている。

「目標とする事業ポートフォリオは、ペイメントが3、ファイナンスが3、グローバルが3に対して、新規事業が1。この『3:3:3:1』の配分を保ちながら、新規事業にも一定割合の積極投資を続けていきたい。時代の変化に対応した新たなビジネスこそが、クレディセゾンの次の成長を支える力になるからです」と水野社長は語る。

新規事業に投資するには、ひとまず“可能性のタネ”を発見し、掘り起こすことが不可欠だ。数多くのスタートアップやベンチャー企業と出会い、自社のサービスとの親和性や相乗効果を確かめなければならない。かつて同社で新規事業開発に携わった経験がある水野社長は、社長になってからも、有望なスタートアップやベンチャー企業との“出会い”を重ねたいと考えていた。

「事業開発部門の目線と、経営者である我々の目線とでは、同じ投資先や提携先の候補でも見え方が違ってくるものです。多様な視点で新規事業の可能性を確かめるためにも、社長である自分自身が、直接スタートアップやベンチャー企業と触れ合える接点を持っておきたいと思ったのです」

  • 水野 克己氏
  • 株式会社クレディセゾン
    代表取締役 兼 社長執行役員COO
  • 水野 克己

02 水野社長が活用する、
新たな企業との出会いを生む審査制のプラットフォーム

そんなある日、水野社長は新聞で1つの特集を目にした。社長就任から3カ月ほどたったころである。オンリーストーリーという会社が提供する決裁者同士をオンライン上でつなげるビジネスマッチングプラットフォーム「ONLYSTORY」の特集であった。

2014年に創業したオンリーストーリーは、企業の決裁者同士をマッチングする経営・営業支援プラットフォーム「ONLYSTORY(有料版:チラCEO)」を運営する会社だ。プラットフォームは法人格のみが利用可能で、審査を通過した役員や事業部長など、サービス導入、提携、出資などの意思決定者同士をオンラインでマッチングしている。累計調達額は26億円を超え、登録会員数はこの1年半で2倍以上に増加し、現在6500人に上る。

水野社長は、新聞を見て「面白い事業だ」と思い自ら問い合わせをした。後日、オンリーストーリーの担当とオンライン面談を行い、その際にプラットフォームと合わせて「Giverピッチ」というイベントを案内されたという。

「Giverピッチ」は、そのオンリーストーリーが開催するオンライン形式のピッチイベントである。

ピッチとは、「数分程度の短いプレゼンテーション」のこと。「Giverピッチ」では、企業との出会いを求める大企業や成長企業、投資家などの決裁者(Giver)向けに、完全オーダーメイドで、事業ピッチを行う企業を集め、オンラインで開催している。

事前に「直近でこんな経営課題を解決したい」「会社をこうしていきたい」という要望をGiverからヒアリングし、それに合ったソリューションや製品・サービスを提供できる企業をオンリーストーリーが選定。1時間の間に5社前後の企業がプレゼンを行うという流れだ。

Giverピッチとは?
Giverピッチとは?

水野社長は、「ピッチイベントには何度か参加したことがありますが、オンライン開催で、いくつもの会社の話を効率よく聞けるというのは非常にユニークだと思いました。“出会い”の機会が広がるのは願ってもないことなので、すぐに開催に踏み切りました」と明かす。

イベント名にもある「Giver」。ビジネスの話題において聞く機会が増えたワードだが、同社では「双方のメリットをバランスよく考えたコミュニケーションができ、前向きに挑戦できる意欲とアセットを併せ持つ人物」を指し、イベント開催に関わる主催者・参加者の審査条件の1つとして設けているのだという。

03 これまでに5回開催、30社と出会う。
思いも寄らない企業との出会いも

その後、数回の打ち合わせを経て、クレディセゾンの「Giverピッチ」が開催された。テーマは「クレディセゾンと共に創る新たなビジネスを水野社長に提案しよう!」である。

クレディセゾンが開催する「Giverピッチ」イベントの告知画面。イベントの参加を希望するスタートアップやベンチャー企業などが応募しその中からオンリーストーリーが厳選した企業がプレゼンを行う。また、オンリーストーリーからイベント参加への提案を受けることもできる。クレディセゾンはこれまでに5回イベントを開催しているが、募集テーマは毎回同じ。新たなビジネスを共に創るパートナー企業を求め続けている。

「我々が今狙っている顧客層は、Z世代、女性、富裕層、中小企業です。これらのターゲット層に対し、クレディセゾンが保有する約3600万人の会員情報などのリソースを活用してもらいながら、新しいサービスを一緒に創り上げていけるようなパートナーを探したいと思いました。資金調達を求めているスタートアップやベンチャー企業についても、当社との親和性や相乗効果が期待できるのなら、出資先候補としてピックアップしてほしいとリクエストしました」

実際にプレゼンを受けた感想について、水野社長は「思いも寄らない企業との出会いがあったことは大きな収穫の1つでした。スタートアップやベンチャーだけでなく、いわゆる大企業もプレゼンに参加しており、業種や事業規模にかかわらず、こちらの要望に最もふさわしいと思われる企業を厳選しているのだなと実感しました」と振り返る。

有望な企業を自ら探すのには時間がかかり、「出会えるかどうか」には運も左右する。その点、わずか1時間で5社前後の企業との「思わぬ出会い」がもたらされる「Giverピッチ」は非常に有効なイベントだと水野社長は評価した。以後、数カ月おきにイベントを開催し、これまでに5回、約30社との出会いを重ねている。

「興味深いプレゼンを行った企業には担当部署につなぎ、実務面での話し合いをしてもらいます。うまくいけば、そのまま事業化に向かうかもしれません。実際に具体的に動きかけているのは、全国の自動車修理工場をネットワーク化して、自宅やオフィスへの出張修理サービスを提供している会社。当社の決済機能と組み合わせれば、この会社と当社、お客様に“三方良し”の価値が生み出せるのではないかということで、話し合いが進んでいます」

イベントを主催するオンリーストーリーは「クレディセゾンのような、いわゆる大企業の社長に直接事業を知ってもらえる機会は、スタートアップやベンチャー企業にとっては貴重な機会です。一方で、まだ世に知られていないだけで、とても良いサービスを提供している熱量ある経営者の方が会員の中に多くいらっしゃるので、実際の取り組みになるような出会いを今後も提供していけたら」と語る。

水野社長は、今後も継続的に「Giverピッチ」を開催していく意向だ。「もともとクレディセゾンは、1951年に割賦販売の会社として創業しましたが、80年代にペイメントの会社として“第2の創業”を果たし、今後は新規事業の創出によって“第3の創業”を目指しています。『Giverピッチ』による“出会い”が、そのきっかけの1つになってくれればありがたい」と期待を寄せた。

企業同士の新たな出会いを創出する「Giverピッチ」。これからの時代のニーズに応える企業同士のマッチングサービスは、今後さらなる注目を集めそうだ。

株式会社オンリーストーリー
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