日経ビジネス電子版 Special

米国のPalantir Technologies

(以下、パランティア)は2003年に

創業したソフトウェア企業である。

様々な情報ソースのデータを統合し

て分析できるようにし、人間が気づ

かない新たな視点を発見して意思

決定に役立てるデータプラットフォ

ーム「Palantir Foundry」を世界各国で提供している。2019年にSOMPOホールディングスと合弁でパランティア テクノロジーズ ジャパン株式会社(以下、パランティア ジャパン)を設立し、日本での導入も急拡大中だ。同社が提供する最先端のテクノロジーを追った。

日本はリアルデータの「宝庫」 世界的データ企業が期待する潜在力

米国のPalantir Technologies(以下、パランティア)は2003年に創業したソフトウェア企業である。様々な情報ソースのデータを統合して分析できるようにし、人間が気づかない新たな視点を発見して意思決定に役立てるデータプラットフォーム「Palantir Foundry」を世界各国で提供している。2019年にSOMPOホールディングスと合弁でパランティア テクノロジーズ ジャパン株式会社(以下、パランティア ジャパン)を設立し、日本での導入も急拡大中だ。同社が提供する最先端のテクノロジーを追った。

参入から日が浅いこともあり日本市場での認知度は高いとは言えないパランティア。だが世界全体では着実に導入実績を増やしており、今最も注目度の高いビッグデータ解析ソリューション企業の1社である。

パランティアを創業したのは、米ペイパルの共同創業者で米フェイスブックの初期大口投資家としても知られるピーター・ティール氏とアレクサンダー・カープ氏、スティーブン・コーエン氏の3名だ。パランティアという名前はJ・R・R・トールキンの小説「指輪物語」に登場する「遠くから世界を見ることができる魔法の石」にちなんだもの。その名前に込めたように、様々なデータを統合・分析することで人間が気づきにくい新たな俯瞰的視点を提示するソリューションの提供を目指して創業された。

米国の安全保障を支えた高いセキュリティ

パランティアがほかのビッグデータ解析企業と一線を画すのは、そのソリューションに強固なプライバシー管理とガバナンス機能を組み込んでいること。同社のソリューションはそもそも9.11の同時多発テロ発生後に国家安全保障に特化した形で誕生し、米国の国防機関で利用されてきた。大量のデータの中からパターンを見つけ出し、テロに関連する情報を判別したり、爆破装置から兵士を守ったりすることで活躍してきた。

パランティア ジャパン Head of Technologyのジェームズ・ニール氏は「創立当初から、プライバシー管理やデータ保護といった機能に最大限注力しています」と語る。防衛・情報機関からのセキュリティ、安定性、透明性に対するニーズに創業当初から応え続けてきたことで、民間企業に対しても政府機関並みのセキュリティを提供できるとする。

米パランティアのCEO兼共同創業者のアレクサンダー・カープ氏は、混乱する世界情勢を踏まえた上で同社のホームページ上で「我々が長年に渡り成長できたのは、市場が求めるものへの追従や国家が全能であるとの誤った幻想に抗い続けてきたからに他なりません。データ所有者による権利と自由を確実に守るアクセス制御、セキュリティ、プライバシー保護などの機能を提供することで、世界中で戦いに挑んでいます」とコメントしている(※1)。

パランティア テクノロジーズ ジャパン株式会社 Head of Technology ジェームズ・ニール氏

パランティア テクノロジーズ ジャパン
株式会社

Head of Technology

ジェームズ・ニール

(※1)出典:
アレックス・カープCEOの "In Defense of Europe "レター https://www.palantir.com/in-defense-of-europe/en/

10の国家政府と100の商業組織のコロナ対策に採用

政府機関で活用されてきたデータ関連の技術を、一般企業向けに幅広い分野で利用できるようにしたのが、2016年にリリースしたデータプラットフォーム「Palantir Foundry」(以下Foundry)だ。現在では、航空、エネルギー、ヘルスケア、製造、金融、メディアなど、50以上の分野・業種で利用されている。例えば航空分野は、仏エアバスとの提携からスタートし、現在では140社以上の航空会社で利用され、9500機のデータ収集に活用されている。

Foundryを使うと、あらゆる種類のデータを1カ所に統合し、経営陣から一般社員まで企業内のあらゆるユーザーが自由にアクセスして利用する環境を提供できる。これによって、企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を実現して次のステージに進化することが可能になる。

例えば、会社の組織を仮想空間に再現して業務の意思決定を可視化することで、各部門がどのように連携し関係しているのかを定量化できる。また、ある部門の判断が他の部門にどのような影響を及ぼすかをシミュレーションし部門間の連携関係とバランスを数値化することで、グローバルな最適解を導き出すことが可能になる。さらに、目標を継続的に設定しつつ、現場における意思決定への影響を確認しながら、状況の変化に応じて優先事項を調整して戦略目標の達成に向けた進捗を継続的に測定できる。

現在、多くの医療システムに関連する組織でパランティアのソリューションが導入され、ウイルス拡散の追跡から重要な医療物資の生産加速まで、新型コロナウイルスへ対抗する能力を強化し対応を加速している。

特にFoundryは新型コロナウイルス発生時に、アメリカ合衆国保健福祉省(HHS)、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)、アメリカ合衆国連邦緊急事態管理庁(FEMA)、アメリカ合衆国国防総省(DoD)、アメリカ国立衛生研究所(NIH)、アメリカ食品医薬品局(FDA)などの機関に採用され、パンデミック管理に役立てられた。今やFoundryは、30以上の連邦機関、50以上の州や地方の保健局、5000以上の病院や介護施設におけるデータの統合とコラボレーションをサポートしているという(※2)。

もちろんこうした活用は米国国内だけの話ではない。イギリス政府はコロナワクチン管理のためにFoundryを採用し、ワクチンの消費期限や納品先、運送先の病院といった様々なデータを一元管理している。イギリスでは新型コロナのための対策費だけで1億5500万ポンド(約250億円)がかかったのに対し、英国の公的医療サービス全体を扱っているFoundryのライセンスは2年間でわずか2500万ポンド弱(約40億円)に過ぎない(※3)。

パランティア テクノロジーズ ジャパン株式会社 Head of Growth 大原克之氏

パランティア テクノロジーズ ジャパン
株式会社

Head of Growth

大原克之

(※2)出典:
パランティア公式サイト https://www.palantir.com/offerings/federal-health/
(※3)出典:
レポート「The Covid-19 vaccination programme Trials, tribulations and successes」より
ダウンロード可能

世界をリードでき得る日本のデータ

世界で高い実績を上げているパランティアが、2019年にSOMPOホールディングスと提携し日本で設立したのがパランティア ジャパンだ。合弁会社を作った理由は、日本には豊富なリアルデータがあること。それを生かしたビジネスモデルがまだ作れていない中でSOMPOとパランティアが共同で取り組むことで、これまでの日本では考えられなかったようなソリューションを創造し、世界に発信できる可能性があるとしている。

パランティア ジャパン Head of Growthの大原克之氏は「遅れているとされがちの日本のDXだが、日本の産業界には高度な設計やエンジニアリングなどで獲得した膨大かつ複雑なデータが存在します。まさに日本はリアルデータの宝庫。Foundryを使えば、これらのデータを1カ所に統合し企業の意思決定にフルに生かすことができる」と語る。

既にその兆しは確実に表れている。神奈川県は2021年11月、コロナ対応のために人流やワクチン接種率、療養者数、感染者数、入院者数などのデータを統合・分析するシステムをFoundryで構築した。従来は、コロナ対応のために導入した数十種類のデータベースがあり、それぞれが別々に分かれて日々大量のデータを生成していたが、Foundryを使って1つに集約したのだ(※4)。

Foundryは取り込んだデータを分析するためのビジネスインテリジェンス(BI)機能を備えている。これにより、市町村別の陽性者数や療養者数などをワンクリックで調べ、地図上にプロットして表示する、といったことが可能になった。

(※4)出典:
神奈川県のファウンドリー活用に関するプレスリリース https://www.palantir.com/japan/files/Press%20Release%20-%20Kanagawa%20Prefecture%20JP.pdf

導入しやすい新ソリューションを日本で先行提供

パランティア ジャパンでは、今年2022年から「Palantir Data Mesh」を提供する。Data MeshはFoundryをベースに開発されており、データウェアハウス(DWH)や非構造化データが入ったデータレイク、その他の様々なレガシーシステムのデータを統合できる。

最大の特徴は従量課金型の価格を新たに設定したこと。Data Meshへのデータ移行を無料でサポートし、保存先のストレージ利用料もかからない。最低利用期間や追加料金も発生しないため、大企業のみならず、中堅中小企業でもリスクを抑えてスモールスタートで利用を開始することが可能となる。

同社のジェームズ・ニール氏は「Data Meshを日本で先行提供するのは、より多くの日本企業と取り引きしたいという当社の願いを込めたものです。日本市場で活動してみて、ステップバイステップで進めていくことが必要と多くの組織で考えていることがわかりました。今回のData Meshがより多くの日本企業のデータインフラの近代化を支援し、変化をもたらすと信じています」とアピールする。


palantir

パランティア テクノロジーズ ジャパン