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少子高齢化で労働力人口が減少するなか、複雑化・多様化する行政サービスに対応するため、自治体におけるDXは喫緊の課題となっている。全国でもいち早く実績を挙げているのが神戸市と福岡市だ。公共事業の業務委託を受けたパーソルテンプスタッフは、自治体行政とともにどのような壁を乗り越えプロジェクトを成功させてきたのか。各自治体と同社担当者に業務改革を実現したプロセスについて聞いた。

行政DX、まずは足元の業務を見つめ直すこと
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森氏の写真

神戸市企画調整局
デジタル戦略部 部長

森 浩三

− どのような課題があったのか。

自治体が抱える課題は3つあります。1つ目は労働力不足が進む一方で高齢化による社会保障業務が年々増大していること。2つ目は自然災害やコロナなどの社会問題、マイナンバー・介護保険といった新制度への対応など行政の業務が複雑化・多様化していること。3つ目はデジタルネイティブ世代の住民が増えてきており、行政サービスのDXも迫られていることです。民間に比べ、行政のDXは遅れを取っています。地方の小さな自治体や過疎地域では、経常的な行動事務を回すためのマンパワーの確保に苦労しているところもあると聞いています。ペーパーレス化について神戸市は比較的進んでいる方で、職場の複合機プリンタの数を半分に減らしています。とはいえ、申請や届出の大半はまだ紙で行っていますので、それらをいかに早くオンライン化するかが目下の課題です。

− 行政のDXを達成させるためには。

危機感を持ってDXに取り組むこと、そして実際にやってみて成功体験を積み重ねていくことです。行政は安定した住民サービスを提供しなくてはならないため、もともと新しい取り組みには慎重です。また、大きな失敗は変革への意欲を萎縮させてしまいます。今できることから取り組み、小さな失敗と成功を繰り返しながら最適なサービスの形を構築していく、例えて言うとオセロのコマを1つずつひっくり返していくような地道な積み重ねを経て初めて、DXは達成されると考えています。

藤原何千もある事務を一気にデジタルに変えようとする自治体も見受けられますが、いきなり大規模な変革を進めようとしても上手くいかないように思います。まずは、今当たり前に行っている業務を見直し、無駄なものがないか探すことから始めたほうが良いのではないでしょうか。
 自治体の業務は増加傾向にあり、労働力不足も相まって職員一人あたりの業務負担は年々大きくなっています。財源や人的リソースは限られているため、どう生産性をあげていくかが大きな課題です。行政事務のDXは、ノウハウや技術をもつ民間企業と協力して、いかにスピーディーに仕組みを整えていくかがカギになるでしょう。

新たな価値を生み出したBPO (Business Process Outsourcing)
神戸市
新たな価値を生み出したBPO
(Business Process Outsourcing)

神戸市では働き方改革を進め、職員数が減る中でも業務の質を維持向上させるためにDXに踏み切った。今までの仕組みなどを抜本的に見直し、業務を改善していった経緯とはどのようなものだったのだろうか。

年間1万件の申請業務を7割減に導いた担当者の”気づき”
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山川氏の写真

神戸市企画調整局
デジタル戦略部 イノベーション担当 課長

山川 歩

− 神戸市のDXが進んだ要因とは。

山川市長のトップダウンによる行財政改革、働き方改革からDXの取り組みはスタートしました。マイナンバー制度など国ではデジタルサービスが推進されていく中、自治体の行政サービスは依然として紙申請と窓口手続きという状態でしたので、まずはこれをオンライン化したいと考えました。住民には高齢者も多いため、全面的にオンライン化はできず、オンラインまたは郵送という形で運用していましたがコロナ禍により状況は一変。在宅での手続きを希望する人が増え、そのニーズに押される形で一気に進んでいます。

− どのような経緯でDXを実現できたのか。

山川まず初めに現在行っている業務の根本的な見直しです。毎週ミーティングを行い、パーソルテンプスタッフ社と約70の業務すべての見直しを検討しています。その中の一つに、インフルエンザの無料接種手続きがあります。ミーティングの際、パーソルテンプスタッフ社から「そもそもこの業務を無くすことはできませんか?」と提案されたことがとても強く印象に残っています。

犀川氏の写真

パーソルテンプスタッフ
第二BPO事業本部
プロジェクトマネジメント課 マネージャー

犀川 幸秀

犀川神戸市では6月に「介護保険料の決定通知」を住民に送付しており、それを持っていれば秋からインフルエンザの無料接種を受けられます。しかしこの通知を紛失してしまう住民が多く、毎年秋になると「無料対象確認証」の申請のため窓口には多くのかたが来庁され、年間で無料券の発行業務は1万件以上にものぼっていました。この業務を受託しているのですが、「そもそも紛失しないで済む仕組みがあれば来庁しなくても済むのでは」と考えました。DXに際しては、「この業務は必要なのか?」と問うところからスタートしていたため、こうした提案が出来たのだと思います。

山川行政はタテ社会で、ヨコの繋がりが希薄です。これまで介護保険の決定通知は介護保険課、インフルエンザの予防接種は保健課の所管といったふうにバラバラで運用されていたため、職員間の連携がとれていませんでした。「今までこんなことをずっとやっていたのか」とまさに目から鱗でした。現在は、窓口での無料券発行業務を原則廃止し、発行が必要な場合はオンラインと電話で24時間申請ができるようにしています。また、介護保険料の通知を持っていれば無料接種を受けられることを広報誌でお知らせもしています。その結果、紛失による無料券発行申請件数は7割も減りました。2022年はさらに今の3割程度まで減らしたいと考えています。

犀川氏の写真

パーソルテンプスタッフ
第二BPO事業本部
プロジェクトマネジメント課 マネージャー

犀川 幸秀

犀川神戸市では6月に「介護保険料の決定通知」を住民に送付しており、それを持っていれば秋からインフルエンザの無料接種を受けられます。しかしこの通知を紛失してしまう住民が多く、毎年秋になると「無料対象確認証」の申請のため窓口には多くのかたが来庁され、年間で無料券の発行業務は1万件以上にものぼっていました。この業務を受託しているのですが、「そもそも紛失しないで済む仕組みがあれば来庁しなくても済むのでは」と考えました。DXに際しては、「この業務は必要なのか?」と問うところからスタートしていたため、こうした提案が出来たのだと思います。

山川行政はタテ社会で、ヨコの繋がりが希薄です。これまで介護保険の決定通知は介護保険課、インフルエンザの予防接種は保健課の所管といったふうにバラバラで運用されていたため、職員間の連携がとれていませんでした。「今までこんなことをずっとやっていたのか」とまさに目から鱗でした。現在は、窓口での無料券発行業務を原則廃止し、発行が必要な場合はオンラインと電話で24時間申請ができるようにしています。また、介護保険料の通知を持っていれば無料接種を受けられることを広報誌でお知らせもしています。その結果、紛失による無料券発行申請件数は7割も減りました。2022年はさらに今の3割程度まで減らしたいと考えています。

新たに目指すべきBPR (Business Process Re-engineering)
業務に注力できるようになった 申請率97%のオンライン化
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ひとり親家庭高校生等 通学定期券補助事業_説明

− 新たな取り組みの手応えについて。

犀川ひとり親世帯の高校生の定期代全額負担手続き(※)のオンライン化があります。新制度のため、神戸市には企画時から「スマホのみで申請が完結するようにしたい」と依頼されていました。当社は業務構築から参画させていただき、現在では申請の97%をオンライン化できています。

山川申請段階からデータ化されているため、審査等の事後フローもすべて電子化でき、事務工数の削減や業務負担の軽減に繋がっています。効率化することで、相談窓口など丁寧に対応しなければならない業務により注力できるようになります。新しい取り組みではありましたが、効率化の面も含め大変満足しています。

− 新たな取り組みの手応えについて。

犀川ひとり親世帯の高校生の定期代全額負担手続き(※)のオンライン化があります。新制度のため、神戸市には企画時から「スマホのみで申請が完結するようにしたい」と依頼されていました。当社は業務構築から参画させていただき、現在では申請の97%をオンライン化できています。

ひとり親家庭高校生等 通学定期券補助事業_説明

山川申請段階からデータ化されているため、審査等の事後フローもすべて電子化でき、事務工数の削減や業務負担の軽減に繋がっています。効率化することで、相談窓口など丁寧に対応しなければならない業務により注力できるようになります。新しい取り組みではありましたが、効率化の面も含め大変満足しています。

市民の立場に立つことで 見えてきた行政事務のDX
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− 行政のBPOにおいて重要なことは。

山川電話サービスを受ける市民にとって、コールセンターのスタッフはイコール神戸市の職員です。BPOであっても神戸市役所のイメージを担っているということを理解して仕事をして頂かなくてはなりません。パーソルテンプスタッフ社はこの点をよく知ってくださっていて、まるで神戸市の職員であるかのような対応をしてくれます。
 パーソルテンプスタッフ社との関係は阪神淡路大震災の頃から始まっています。当時は仮設住宅のコールセンター業務をお願いしておりました。その後、給付金業務やマイナンバー業務、行政事務センターの運用など様々な業務を引き受けていただいています。そうした実績から、神戸市の行政事務について十分なノウハウをお持ちでしたので、今回のDXの際も真っ先にご相談しました。
 BPO受託事業者と自治体はともにより良い住民サービスを実現するパートナー。自治体側も情報共有を積極的に行って、いかに風通しの良い関係性を築けるかが重要です。実のところ、BPO事業者にとって行政事務のDXは売上縮小に繋がる取り組みではあります。それでも、住民にとってより価値のあるサービスを追究する、という自治体の思いを汲み地域の幸せを真剣に考えて共に取り組んでくれる、そんな事業者をパートナーに選ぶべきだと私は思います。

犀川BPOやBPRには業務効率化・職員の負担軽減といった行政側のメリットももちろんありますが、住民サービスの質の向上や利便性など、住民の立場に立つことを第一と考え、日々精進していきたいと考えています。

男性4人_写真
「新しいDXの取り組みも実現していきましょう」と語る
左から「神戸市」山川氏、森氏、「パーソルテンプスタッフ」犀川氏、中野氏
窓口での申請業務を大幅に改善できた理由
福岡市
窓口での申請業務を
大幅に改善できた理由

福岡市では人口の増加が続いており、市民が平日の昼間に区役所窓口を訪れ、転出入の各種手続きを長時間かけて行うことが常となっていた。市民のための待ち時間短縮、窓口業務の改善はどのように行われたのだろうか。

全国初のスマート申請を構築 実現までの道のり
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彌政氏の写真

パーソルテンプスタッフ
第二BPO事業本部 西日本第二BPOサービス部
BPO九州オフィス マネージャー

彌政 かおり

「この課題を解決するため、福岡市様と一緒に考え、長い期間をかけて様々な提案をしています」と同社の彌政氏は語る。これまで福岡市では、引越し時の申請手続きは、国民健康保険や小中学校の転入学、児童手当などの手続きごとに個別で書類を作成・提出しており窓口業務は膨大な量になっていました。

そこで『引越し手続きのオンライン予約サービス』を企画し、転入に伴う6つの手続きを事前にオンラインで予約できるシステムの構築を目指したが、サービス実現までの道程には様々な困難があった。「課をまたいで情報連携するオンラインサービスなので、ワークフローを含め、関連する各課と調整し、事前に詳細なヒアリングを行ってからマニュアルを作成しました。何度も説明会を行うことで担当者の理解を得ながら進め、少しずつ良い方向へと改善していっているという手ごたえがありました」と彌政氏は語る。

2020年1月に『引越し手続きのオンライン予約サービス』は開始した。LINEや市のホームページ経由で事前に情報を入力しておくと、窓口では本人確認と署名等の簡単な確認だけで済むため、申請手続きの大幅な時間短縮に成功した。日本初の画期的な取り組みとして新聞にも掲載され、SNSでも話題となった。

「電子申請システムだけを導入しても、実際の事務処理を知らなければ効率的な運用はできません。手続きの全工程をマネジメントできるかどうかがスマート行政の成功につながります。業務を知ること、継続して改善していくことなど、今後も様々な課題解決に貢献していきたい」と彌政氏は力強く語った。

パーソルテンプスタッフが実現するBPO×DXの世界
DXは目標達成のための手段 万能のソリューションではない
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藤原氏の写真

パーソルテンプスタッフ
執行役員 第二BPO事業本部 本部長

藤原 理絵

− 行政のBPOを成功するためには。

地域住民の存在を忘れないことです。さまざまな市民の声を聞き、どのように変えて、どう良くしていくか、本当に解決したいのは何かなど、自治体や地域のかたと共に考えていく姿勢がBPRには必要です。

単に工数を減らすという表面的な効率化では上手くいきません。ICT 導入でBPO×DXすべきところとそうでないところの見極めが重要です。きめ細かい対応を求められる案件は多く、どんなにDXが進んでも人と人との対面業務は決してなくならないでしょう。

自治体と連携したBPOプロジェクト数はすでに数百を超えます。業務委託を通じて積み上げてきたノウハウを活かして、自治体特有のルールやニーズにコミットし、新たなソリューションを展開できるのが、当社の強みと思っておりますので、今後もお客様とともに伴走していくパートナーとしてご期待ください。

撮影協力:ANCHOR KOBE(アンカー神戸)
https://anchorkobe.com/

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