日経ビジネス電子版 SPECIAL

sustained outcomes(ゆるぎない成果)の実現に向けて

長引く新型コロナウイルス感染症の影響を受け社会は急激に変化。人々の生活様式が一変し、企業のあり方も大きな変革が求められる時代となった。これまで当たり前としていた常識が覆され、多くの企業が経験したことのない新たな課題に直面している。一方、未曾有の事態が招いたニューノーマルの時代の中で、自らの存在意義を見つめ直し、変化を恐れずに大胆な変革を推進する企業がある。本企画では、そういった企業との対談を通して、将来にわたる「Sustained Outcomes(ゆるぎない成果)」※1 の実現に向け、アフターコロナにおける各企業の戦略策定から全社的な変革までのアプローチを紹介していく。※1: 2021年にPwCが新たに打ち出した経営ビジョン「The New Equation」において、「ゆるぎない成果(Sustained Outcomes)」「信頼の構築(Trust)」の2つをPwCが支援していく企業・組織の重要なニーズとして定義https://pwc.to/3yzw5Ua

special talk vol.01

デジタル化が実現するものづくりの新しい価値製造業のビジネス変革に挑む
独自DXを始動

PwCコンサルティング Strategy&
× 三菱マテリアル 加工事業カンパニー
田中氏 北川氏

いいものを作れば売れる時代が終わって久しい。プロダクトアウトの発想から脱却し、新しい価値を提供するためには、ビジネスにも変革が必要だ。三菱マテリアルでは提供価値と競争力の向上を目指し、2020年より独自のDX「三菱マテリアル デジタル・ビジネストランスフォーメーション(MMDX)」を始動。その先に目指すあるべき姿とは──? 同社加工事業カンパニー プレジデントの田中徹也氏と、 PwCコンサルティング Strategy&で製造業を中心に様々な企業の変革に数多く携わる北川友彦氏が語り合った。

急激な市場変化や競争の激化
製造業を取り巻く今を読む

新型コロナウイルス感染症拡大によって、製造業を取り巻く環境は大きく変化しました。三菱マテリアル、とくに田中さんがプレジデントを務められている加工事業カンパニーもその影響を受けられたのではないかと思います。

おっしゃる通りですね。まずは当カンパニーの事業内容について簡単に紹介します。我々は超硬合金製の切削工具を取り扱う事業を行っています。主なお客様は、自動車、航空機、医療、金型の4産業。昨今の環境変化については、自動車産業を例に見ると、コロナ禍で各地の工場が稼働停止となる局面もありましたが、現在は急速に回復しています。ただその一方で半導体の供給不足により、しばらく不安定な状況が続きそうです。加えてEVへのシフトが加速していることから、我々の提供する切削工具も今後は大きく変わっていくと思われます。

コロナ禍により、サプライチェーンに深刻な影響が出るなど、製造業をはじめ多くの企業が苦戦されています。また航空機産業などダイレクトに打撃を受けたところもあれば、逆に生活様式の変化に伴い需要増に転じた産業があるのも事実です。産業や地域によってインパクトやその度合いも異なることから、なかなか見通しの立てづらい状況になっていますね。

田中 徹也氏
三菱マテリアル株式会社
加工事業カンパニー
プレジデント
田中 徹也

マーケットの大きな波というのは、10年に一度やってきています。リーマンショックや東日本大震災、そして今回のコロナ禍といったように。そういった際の市場のアップダウンは急激で、それに左右される製造業は非常に厳しい。能力を落とすのは簡単でも、いざ景気が回復したときに即垂直に立ち上げるのは本当に大変です。

さらに半導体などのモノ不足も世界的な問題になっています。こうした中で、グローバルにおける競争もさらに厳しさを増しています。切削工具の世界はもともと欧米の競合が強く、最近では中国や韓国などの新興プレーヤーも台頭し、上と下からのプレッシャーがますます激化しているのではないでしょうか。

そうですね。我々は世界第4位グループの位置付けですが、トップ3はいずれも欧米のグループが占めています。また、デジタル化についても欧米競合が進んでおり、我々は一刻も早く追いつかなければと考えています。また、中国をはじめ新興国も低価格を武器に攻め上がってきている中、当社としては適正価格で高品質の製品を供給すべく性能と品質の向上に努めています。

北川 友彦氏
PwCコンサルティング合同会社
ストラテジーコンサルティング Strategy&
パートナー
北川 友彦

“ワクワク”をキーワードに
モノ売りからコト売りへ

コロナ禍による環境の変化やグローバル競争のプレッシャーといった課題に直面すると同時に、組織として変わっていかなければならないという使命感もおありでしょう。

はい。我々は長い間、いいものを大量に作って売るという高度成長時代のビジネスモデルでやってきました。もちろんそれも大事ですが、これからは市場ニーズの変化にタイムリーに対応していくと同時に、お客様のお悩みに対するソリューションも積極的に提案していく必要があります。いわゆるモノ売りからコト売りに変えていかないと生き残っていけないという危機感を持っています。

日本の製造業が長年培ってきた成功モデルからの脱却を目指していらっしゃるのですね。ビジネスモデルの刷新に当たっては、社内のマインドや企業文化をも変えていかなければなりません。とくに歴史ある大企業ではなかなか一筋縄ではいかず、多くの企業様から企業変革に対するお困りの声を聞きます。

企業文化の課題には我々も注力しています。プロダクトアウトではなく、お客様起点での製品やソリューションを提供するマーケットインのビジネスを実現するためには、我々自身がワクワクして仕事をし、お客様にもワクワクをお届けすることが大切です。それを踏まえ、当カンパニーでは「ワクワクプロジェクト」という活動を数年前からスタートさせています。

まさにモノ売りからコト売りへの変革ですね。提供価値を転換し、組織全体で実現していくためには、社員が目標を共有する必要があるかと思います。どのように進めていらっしゃるのでしょうか。

例えば、若手技術者がお客様の現場を訪れて課題や理想をヒアリングしたり、お互いに解決策やヒントを提供し合ったりといった、営業だけでなく技術部門をも巻き込んだお客様との対話を徹底的に行っています。こうしたコミュニケーションの積み重ねにより、当カンパニーのビジョンである「顧客視点に立ったスピードと変革を常に求め、実現し続けることで、顧客より真のパートナーとして信頼を得る、活力溢れたワクワクする事業体となる」ことを目標としています。

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