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メタバースは、ビジネスに活用できるのか――。昨今よく聞かれるこの質問だが、実はある問題を内包している。それは、多くの企業がメタバースをテクノロジーの観点のみから見ているという点だ。「メタバースは、社会や事業を変革するパラダイムシフトとして捉えるべきである。メタバースに対する考え方をアップデートし、自社事業に取り入れていくことで、千載一遇のチャンスを実り多いものにできるはずだ」。そう語るのは、メタバース研究や法人向け導入支援に力を注ぐPwCコンサルティング合同会社(以下、PwCコンサルティング)の三治信一朗氏と奥野和弘氏。両氏に最新事例を交えながらメタバースの事業モデル設計のステップとポイントを解説してもらった。

メタバースのビジネス活用を誤解していないか

日本において、メタバースはビジネス活用フェーズに入った。それを裏付けるデータが、2022年5月にPwCコンサルティングより公開された。日本企業1000社以上を対象に実施した「メタバースのビジネス利用の実態と課題」に関するインターネット調査だ。この大規模な企業向け調査結果についてPwCコンサルティングの三治信一朗氏は説明する。

PwCコンサルティング合同会社
パートナー
Technology Laboratory所長
三治 信一朗 氏

「メタバースのビジネス活用を推進もしくは検討している企業が4割近くに上り、その約半数が実現時期として1年以内を目標としています。また、ビジネスへの影響を87%の企業がチャンスと捉えており、そのうち約半数が『新規ビジネスの創出』を理由に挙げました。多くの企業で、メタバースのビジネス活用への期待が高まっているのです。一方で、導入課題として『目的の明確化』『費用対効果の説明』が上位回答に入るなど、活用イメージが明確化できていない状況も窺えます」

三治氏の解説に対しPwCコンサルティングの奥野和弘氏も同調する。

「メタバースはチャンスですが、同時に単なる流行りもののテクノロジーとして捉え、ビジネス活用方法の具体化まで至らない企業は少なくない、という実感を私も抱いています。メタバースはもはや、社会や事業に変革をもたらすパラダイムシフトだと考えます。メタバースは、もう1つのビジネスワールドを創造しています。そこでは、これまでの競合や協業関係、顧客ニーズなどが現実世界とは異なってくる可能性があります。例えば、現実の世界で建物の売買を行っていた不動産会社であれば、バーチャルな街そのものをつくることでプラットフォーマーとして新たなマーケティングビジネスの担い手となることも可能です。モノからコトへ、経験や体験に価値を見出す消費傾向も、メタバースの世界と非常に相性が良いです。メタバースは、皮膚の色や性別、身体性などを超えて活動できるアバターが象徴するように、多様性の世界とも言えます。自己をより自由に表現できる空間に、今後さらに多くのユーザーが入っていくことが予想されます」

参入の仕方も多様、まずはステップとポイントを知る

PwCコンサルティング合同会社
ディレクター
奥野 和弘 氏

では企業がメタバースのビジネス活用に本格的に取り組む際に、何から検討するべきか。

「基本となるのが戦略思考型アプローチです。メタバースの自社への影響について『機会(チャンス)と脅威』を正しく把握することがスタート地点となります。次に、自社の経営戦略やDX(デジタルトランスフォーメーション)戦略と照らし合わせ、メタバースに取り組む目的を明確化します」(奥野氏)

目的の明確化は、PwCコンサルティングの実態調査で課題として挙げる企業が多かった。

「検討が比較的容易で事例も多いのが、コア事業の強化です。重要なポイントは、顧客接点に限らず利用シーンを多角的に検討することです。上流工程においてシミュレーションや市場調査をメタバース空間で行い、その結果を製品の企画段階に活かす。バリューチェーン変革の観点に立ち、モノを作ってから販売するのではなく、作っている最中にメタバース空間で公開し、顧客からフィードバックを受けながら完成度を高めていく。これまでのやり方にとらわれない発想の転換が大切です。留意点は、メタバースに関する技術は急速に進化しており、今実現できないユースケースでも近い将来の実現可能性は十分あるということ。今後の技術的進化に関して展望を持つことも大切です」(奥野氏)

目的明確化の次に、参入アプローチの検討に入る。この段階ではまず、メタバースにおける自社のポジションを決める。一般的に主要なポジションは以下の5つ。

① メタバースプラットフォーマー
② メタバース上のサービス提供者
③ メタバースプラットフォーマーに対するサービスを提供する事業者
④ メタバース上でサービスを提供する企業もしくは個人にサービスを提供する事業者
⑤ メタバース外でメタバースユーザーに対してサービスを提供する事業者

「ポジション決めでは、自社の強み・弱み、費用対効果などに加え、顧客ニーズや競合環境が現実世界と異なる可能性にも注意が必要です。業界の中だけで競合を設定すると、足元をすくわれるリスクがあります。同様に、競争上必要なケイパビリティを獲得する際も、これまでの協業の枠を超えた戦略が求められます」(奥野氏)

ポジション決定後、「誰に対しどのような価値を提供するのか」を定める。奥野氏は、代表的な価値提供の例を2つ挙げた。

① メタバースの出現が生み出した新たなニーズや課題を解く
② 既存のニーズや課題に対してより良い解決策を提示する

「価値提供を考える上で“提供価値(機能的価値、情緒的価値、自己表現価値、社会的価値)=変革対象(商品・サービス、コスト、提供方法、コミュニケーション)×変革方法(新たに作成、削除・廃止、置き換え、融合)”といった構造化を行い、整理することで分かりやすくなります」(奥野氏)

接客、保険、入社式――実践事例に学ぶ

三治氏と奥野氏は、メタバースのビジネス活用アプローチを具体的に説明するため、PwCコンサルティングが携わる3つの事例を紹介した。

●パーソルマーケティング「メタバース上で新しい働き方を創出」
【ポジション】 メタバース上でサービスを提供する企業もしくは個人にサービスを提供する事業者
【価値提供】メタバースの出現が生み出した新たなニーズや課題を解く
パーソルマーケティングは、クライアント企業の営業販売業務を支えるプロフェッショナル集団と、自社を定義している。メタバースの活用を自社のアイデンティティと照らし合わせ、メタバース空間において接客経験を持つ人材が少ないことに着目。メタバース上でEC事業などを行う企業に対し、メタバース空間内に特化した接客サービスを身に付けた人材の育成・派遣ビジネスに取り組んでいる。

●三井住友海上保険「メタバースで発生する新たなリスクを低減する保険商品の提供」
【ポジション】メタバース上でサービスを提供する企業もしくは個人にサービスを提供する事業者
【価値提供】メタバースの出現が生み出した新たなニーズや課題を解く
三井住友海上保険は「CSV(社会との共通価値創造)×DX」というデジタル戦略を掲げる。今後メタバース上での経済活動の活性化が見込まれる中、メタバースで発生しうる新たなリスクを低減する保険商品を提供していく。

●PwC Japanグループ事例「メタバース入社式」
【ポジション】メタバース上のサービス提供者
【価値提供】既存のニーズや課題に対してより良い解決策を提示する
PwCコンサルティングもメンバーファームであるPwC Japanグループは、約500人の新入社員が参加するバーチャル入社式を開催した。コロナ禍に伴い、大人数で物理的に集まるのが困難な状況の中でも、メタバース空間での没入感により連帯感を高める入社式となった。

メタバース入社式はリモート参加でも没入感を高められ、連帯感の醸成に寄与する

言葉だけでは伝わらない、体験会でメタバースの可能性を実感

メタバースのビジネス活用へ、最初の一歩をなかなか踏み出せない企業も少なくないだろう。「仮に一部の社員がメタバースの重要性を理解しても、それを言葉で伝えるのは難しい」と三治氏は話す。

「私たちがお薦めするのは、勉強会と称する体験会への参加です。PwCコンサルティングのTechnology Laboratory(大手町)には、メタバースを体験するためのツールや設備が整っています。最近ある金融サービス事業者が、メタバース活用に向けたチームの結成式をTechnology Laboratoryで開催しました。体験会の延長線上で、経営幹部にもメタバースの可能性を体感していただくパターンも多いです。話を聞くのと自ら体験するのとでは、理解度が大きく異なることから、お客様先での体験会も開催しています」

メタバース空間の体験を通して、幹部と現場にあるテクノロジーの理解度の隔たりを埋めることにも貢献するという

メタバースのビジネス活用の参考事例はまだ多くない。また正解は1つではなく、企業の数だけある。伴走者(ビジネスパートナー)の重要性について三治氏は説明する。

「上流工程では、ワークショップ(デザインシンキングなどの手法を利用したアイディエーション)の実施や、成長期待領域の特定が必要です。当社の独自ツール『Intelligent Business Analytics』を活用することで、市場や競合の分析にかかる時間の大幅な短縮が見込めます。さらにAIにより、製造業のみならずサービス業やプラットフォーマーなど幅広い潜在アライアンス企業の事業性と技術評価を行います」

ビジネス化に向けてはセキュリティ、法規制、会計上の取り扱いなど多方面の知識や解釈も求められる。しかも、国内だけでなくグローバル対応が必要なケースもある。

「PwCコンサルティングには、様々な領域に専門性を持つ3000人以上のコンサルタントがいます。さらにはPwC Japanグループが有する監査、アドバイザリー、税務、法務といった各分野のスペシャリストと連携しながら、ワンストップで日本企業のメタバース事業を支援していきます」(三治氏)

今までとは異なるエコシステムが組みあがっていく、そのダイナミズムもメタバースのビジネス活用における高いポテンシャルになると奥野氏はいう。

「PwCコンサルティングは、様々な会社を引き合わせるハブの役割を果たしていきたいと思っています。モノやサービスだけでなく、感性面で優れたコンテンツや技術を有する企業にもぜひお声がけいただきたい。メタバース上で様々な社会課題を解決するエコシステムを構築していくことが、今後の重要なテーマです」

ビジネス化の成否は、スピード勝負になると三治氏は話す。

「技術の進歩と競争の激化により、アイデアはすぐに陳腐化します。小さく始めて高速で仮説検証をまわすリーンスタートアップ型で他社よりも早く市場にリリースし、競争優位性を確保することが重要です。通常のコンサルティングは半年から1年をかけることが多いでしょう。メタバースに関しては、体験会から目的の整理、事業構想の策定、ムービーを使ったPoC、市場参入まで、一貫した支援に要する期間は長くて3カ月、少なくとも1カ月でアウトプットを出すよう努めます。

足元でメタバースによる変革の予兆がすでに出始めています。しかし、私たちは目の前のビジネスだけを追いかけているわけではありません。中長期的にメタバースという『もう1つのビジネスワールド』を支える礎を築き、お客様と信頼関係を結びながら大きく育てていきたいと思います」

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