ロームは2021年5月に中期経営計画「MOVING FORWARD to 2025」を発表した。5年間で「車載、海外での成長実現とさらなる成長に向けた基盤作り」を実行し、2030年度に向けて飛躍的な事業成長を目指す。「ロームにとって売上とは社会への貢献総量。引き続き、事業を通じて社会課題を解決する」という代表取締役社長の松本功氏は、従業員一人ひとりが企業目的を実践し、全社一丸となって課題に取り組むと語る。3つの成長戦略と「生き生きと働ける会社」を実現する取り組みについて聞いた。

パワーとアナログで、省エネ・小型化に寄与
新たな経営ビジョンを具現化する

ローム株式会社
代表取締役社長
松本 功氏

創業製品の抵抗器のほか、カスタムLSIや小信号ディスクリートなど、エレクトロニクスの分野で独自の地位を築いてきたローム。「創業当初より『企業目的』に基づき、高品質な商品を通じて文化の進歩向上に貢献してきました」と代表取締役社長の松本功氏は語る。

2021年5月に中期経営計画「MOVING FORWARD to 2025」を発表。5年間で4000億円の成長投資を行い、売上高を21年実績の3598億円から26年3月期までに4700億円以上へ引き上げる。「車載向け事業の充実」と「海外売上の拡大」の2つの取り組みを軸に、5年間で再び成長軌道に乗せていく。2030年度に向けて、飛躍的な事業成長を果たす計画だ。

昨今の半導体需要の大幅な拡大により、売上計画はかなり前倒しで進んでいるというが、同社では、単に売上を伸ばすことを目標としているわけではない。あらゆる事業活動を通じて、ロームというブランドが世界的に認知され、顧客の安心感を醸成し、社会を支える様々なインフラに必要とされる企業になることを目指している。

これは、松本氏が冒頭で述べた企業目的「文化の進歩向上への貢献」とも合致する。企業目的は創業からずっと変わらないものであり、将来も揺らぐことはない。この不変の企業目的を再認識し、ロームの使命を明確にするため、2020年に策定したのが新経営ビジョン「パワーとアナログにフォーカスし、お客様の“省エネ”・“小型化”に寄与することで、社会課題を解決する」だ。より大きな成長を遂げることで、より多くの社会貢献につなげていくという同社の決意が込められている。

創業から培ってきた強みを生かしながら、今後は社会課題を解決する会社として、ロームはさらなる進化を目指す

「ロームにとって、売上とは社会への貢献総量です」(松本氏)。世界中の人たちが文化的な生活を送るためには、様々な社会課題の解決や環境づくりが不可欠。経営ビジョンによって、社会が抱える様々な課題を解決し、新たな価値の創造へつなげていくと松本氏はいう。

この経営ビジョンを具体化するものとして中期経営計画「MOVING FORWARD to 2025」は生まれた。企業目的、経営ビジョン、中期経営計画。一貫性のある経営施策により、グループ全体が同じ方向を向いて活動できる体制を固めている。また2021年は新しくステートメント“Electronics for the future”の策定も行った。ロームの企業目的、経営ビジョンなどをより分かりやすく具体的に明示するためだ。

ロームのステートメント“Electronics for the future”の概要。経営理念体系においては、企業目的を実現していく上での「目指す姿の旗印」「社員の誓い」として位置づけられている

昨今のコロナ禍はエレクトロニクス業界にも大きな打撃を与えた。しかし、脱炭素化やデジタルトランスフォーメーションなどのトレンドを背景に、2020年秋ごろから電子部品や半導体への需要が回復。現在では供給が追いつかないほどの状況だ。ビジネス環境が乱高下する中、「短期的な市場の動きに一喜一憂することなく、長期的な視点で経営施策を進めていくことが重要」と松本氏は語る。

成長戦略は
「伸ばす」「進化する」「創る」

中期経営計画「MOVING FORWARD to 2025」では、3つの成長戦略を掲げている。「伸ばす」「進化する」「創る」だ。

中期経営計画で掲げた3つの成長戦略「伸ばす」「進化する」「創る」

「伸ばす」とは、中核となる事業の業績を大きく伸ばし、成長の原動力にしていくことをいう。主役は「パワーデバイス」と「車載用LSI」だ。ロームは創業以来、民生機器の分野で強みを発揮してきたが、この10 ~15年間で事業領域を車載分野と産業機器分野へ大きく転換してきた。

近年は脱炭素化政策によって電気自動車の需要が急伸し、車載向けのエレクトロニクス市場が大きく伸びている。「自動車業界でプレイヤーが変わるかもしれないほど大きな変革が起きています。電動化に対応した当社のLSIやモジュールへの需要も伸びており、柔軟な生産体制を構築して市場への対応力を強化していく計画です」(松本氏)。

2つ目の「進化する」とは、製品の付加価値向上や海外シフトなどにより、事業の質的転換を進めていく戦略だ。省エネ家電向けのパワーデバイスの分野で海外展開を進めるほか、同社の主力製品である汎用デバイスをさらに小型・高性能化して付加価値を向上させる。

同社の汎用デバイス製品はすでに業界トップシェアを獲得し、事業としては成熟期に来ているという。しかし、その競争力をより確かなものにするため、安定供給を維持しながら高効率な生産ラインを増やすとともに「協働ロボット」の導入などによって生産性をさらに高める計画だ。

3つ目の「創る」では、2025年以降の成長を支える新たなビジネスの種を仕込む。パワーデバイスの分野では、急速に需要が高まっている電動車の主機インバータ向けSiC(シリコンカーバイド)パワーモジュールやIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)デバイスの開発を加速。成長期に入ったSiCの市場は、2025年ごろから急速に立ち上がると言われている。積極的な先行投資によって生産能力を充実させ、将来の需要拡大に備える。一方、「将来に向けた新たな成長事業の構築」を補完するものとしてコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)活動も開始した。

ロームの特長は、パワーとアナログデバイスの要素技術を高い水準で併せ持つことだ。自前の生産技術も持っている。こうした企業はエレクトロニクス業界でも珍しい。そのユニークな強みを生かしつつ、外部の知見も入れながら、企業価値を高めていきたいと松本氏は語る。

失敗を恐れず挑戦できる企業風土を醸成
社員が生き生きと働ける会社へ

そうした成長戦略と並行して、ロームは「環境ビジョン2050」を策定し、環境課題への取り組みを強化している。温暖化ガスの削減、再エネの推進など、複数の非財務目標について独自のKPI(重要業績評価指標)を設定し、自然災害リスクや地政学的リスクを含めた様々な変化に対応できる企業を目指す。

「そのためには、従業員一人ひとりに経営方針を理解し、共感してもらうことが必要です」(松本氏)。松本氏は社長に就任して以来、社の内外に積極的に情報を発信してきた。同社の方向性を経営ビジョンによって明確にし、社員と直接対話する機会を積極的に設けている。「社員の皆さんに共感していただくことで、グループ全体の気持ちが1つになります。一体感があってこそ、変化に対応できる組織になれると考えます」(松本氏)。

また、持続的な成長を実現するため、人財育成やコーポ―レートガバナンスにも力を入れる。監督と執行の分離、社外取締役の機能強化、従業員の多様性などについても、それぞれKPIを設定して確実に取り組んでいる。

社会課題の解決に貢献できる企業になるには、まず従業員が生き生きと働ける会社になる必要がある。失敗を恐れず挑戦できる企業風土を醸成しながら、多様な働き方を推進していく。そのためには、透明性のある人事制度と人財育成の仕組みが不可欠だ。「経営ビジョンの実現には、従業員一人ひとりが企業目的を実践し、全社一丸となって経営課題に取り組むことが必要です」(松本氏)。

企業活動を通じて社会に貢献し、ステークホルダーの期待に応えられる企業を目指す。グローバルメジャーを目指すロームの挑戦は、これからが本番だ。

ローム 取締役 上級執行役員CTO 立石哲夫氏のインタビューはこちら

お問い合わせ

ローム

https://www.rohm.co.jp/